ロッキングチェアに揺られて

再発乳がんとともに、心穏やかに潔く、精一杯生きる

2016.1.19 果たして私のコストパフォーマンスは

2016-01-19 21:19:11 | 日記
 高額な治療薬を使い続けている一患者としてずっと気になっていること、それは多額な医療費負担を強いている私が、国や健康な方たちに対して社会的に何か還元出来ているのだろうかということだ。
 そんな折に、読売新聞の記事を読み、唸らせられた。
 以下、転載させて頂く。

※   ※   ※(転載開始)

[展望 2016] 薬、機器にも費用対効果 (医療部長 吉田清)(2016.1.18)

 年度ごとの国民医療費がついに40兆円を突破した。
 医療費を押し上げている主な要因は「高齢化の進展」と「医療技術の高度化」である。もっとも、これまで高齢化の進展を中心に取りあげられたきらいがあった。
 ところが最近、医療技術の高度化、とりわけ高額な治療薬のニュースに接することが増えた気がする。
 昨年、C型肝炎の治療薬「ソバルディ」と「ハーボニー」が国内発売され、保険適用もされた。いずれも副作用が少なく、しかも100%近い患者からウイルスが消える。40年近く肝炎の治療に携わってきたベテランの肝臓専門医は「待ちに待った薬で、積極的に処方している。C型肝炎はそのうち国内から撲滅できるのでは」と喜ぶ。
 難点はソバルディが1錠約6万円、ハーボニーが同約8万円と高額なことだ。
 ハーボニーによる治療は1日1錠、12週間服用し、薬代は670万円を超える。幸い、患者負担額は公的助成で月額最大2万円で済む。だが「国民医療費をさらに押し上げるのではないか」との懸念が出ている。
 そこで厚生労働省が「窮余の一策」として導入する方針なのが「ヒット新薬の価格引き下げ」という新ルールだ。年間販売額が1500億円を超え、製薬会社の想定の3割増以上となった薬は最大半額に引き下げる、1000億円超で、予想の5割増以上となった薬も最大25%引き下げる――というものだ。昨年5月に発売されたソバルディは年間1000億円以上の売り上げが確実で、新ルールが適用される可能性がある。
 がん治療薬の分野でも新タイプの免疫チェックポイント阻害薬「オプジーボ」が、皮膚がん(悪性黒色腫)についで昨年12月、患者数が多い肺がん(非小細胞肺がん)でも保険適用で使えるようになった。こちらも驚くほど高い。体重にもよるが1か月約300万円もの薬代がかかる。医療技術のさらなる進歩でこうした高額な治療薬の発売が今後、増えるのは間違いない。
 画期的な新薬が開発されることは大歓迎だ。反面、著名な研究者からさえも「超高額な治療薬が相次いで発売されることで医療保険財政が破綻するのではないか」とのため息が漏れてくる。
 こうした中、厚労省は薬や医療機器の価格について2016年度から、「費用対効果」のシステムを試行的に導入する。価格がその効果に見合ったものかどうかを分析し、診療報酬改定の際に新しい価格に反映させるものだ。前述のC型肝炎治療薬のように高額でも大きな効果の薬がある一方で、費用対効果が芳しくない薬があぶり出されるかもしれない。
 国の厳しい財政事情を考えると医療費の抑制は避けて通れない。「費用対効果」は、2016年のキーワードの一つだ。ただ患者にとって必要な薬、適切な治療が提供されるかどうかの視点も忘れてはならない。ここは、しっかりと見定めていきたい。

(転載終了)※   ※   ※

 溜息をつきつつ、下を向く。
 もちろん2016年に限らず、何をするにも「費用対効果」はキーワードだと思う。けれど、患者の視点で言わせて頂けるならば、高額だからという理由で待ち望んだ新薬の恩恵に与れないということは、やはり切ない。それが効くと明白なものであれば、なおさらである。

 けれど、果たしてどのくらい奏功すれば費用に見合う効果があるとみなされるのか、数ヶ月の延命がそれに値するのか。逆に、投与すれば寛解するほど長期に奏功し、天寿を全う出来るところまで生きられるとしたら、それは生きている限り多額の医療費を必要とする身になる、ということである。それはどうなのか。

 考えてみても、今の私にはすぐに説得力のある答えが見つからない。
 いや、誰にとっても明確に答えることが出来ないのではないだろうか。
 私が数ヶ月元気でいることが、医療費の数百万負担に値するのだろうか、と考え出すとちょっと落ち込む。その数百万をもっと有意義に使えるのではないかと言われてしまえば、返す言葉がない。

 一方、「ヒット新薬の価格引き下げ」という新ルールは名案だと思う。新薬の開発費には1000億かかるものがザラだと患者会の講演会で聞いたことがある。その販売額が製薬会社の想定以上となった場合、最大半額に引き下げるというものだ。
 例えばハーセプチンはHER2強陽性の患者が一度使って奏功すれば、かなり長期間お世話になる薬だ。乳がんの患者数が多いことを考えれば、これまでに相当の販売額になっているだろう。これなどは、想定を超えた売り上げとなっていることは容易に想像できる。
 売り上げが確実で、新ルールが適用される可能性があるなら、患者にとっても医療財政にとっても有難いことだろう。

 誰の命もかけがえのないたったひとつの命だ。
 その命を、可能であれば少しでも永らえることを、お互い様だから、と言ってもらえるような存在になれたら、と思う。
 今の私は、決してコストパフォーマンスが良い存在ではない。それは重々承知である。だからこそ、何らかの形で社会と繋がり、何らかの形でお役に立っていたいと思うのであるけれど・・・。

 事故や震災等により命を絶たれた方たちは、突然生を断ち切られたわけだから、そんなことを考える暇(いとま)すらなかったに違いない。
 そのことの無念さは計り知れないものであると思うと同時に、自分の命の値を考える時間があるというのも、これまた時に切ないものであるなぁ・・・、と呟く私である。


コメント
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