ロッキングチェアに揺られて

再発乳がんとともに、心穏やかに潔く、精一杯生きる

2010.8.19 エッセイの醍醐味

2010-08-19 06:06:49 | 読書
 息子が不在で、世話を焼く人がいないので、たっぷり読書の時間がある。つい新刊文庫・新書を買っては読み、新しめのものをブックオフで買いこみ買い込みしていたら、本棚が本当に大変なことになってきた。
 夫が久しぶりに図書館に行って、ついでに私の分も見つくろって借りてきてくれた。自分では借りないな、と思うものもあってなかなか面白い。

 今回は4人の女性によるエッセイ等。
 岸本葉子さんの「三十過ぎたら楽しくなった!」(講談社文庫)。彼女の作品は同世代だし以前から良く読んでいる。まだガン体験をされていない頃のもの。
 内館牧子さんの「きょうもいい塩梅」(文春文庫)。これまではエッセイというよりドラマになった小説は読んでいた。
 上坂冬子さんの「あえて押します横車」(集英社文庫)エッセイ集を読んだのは初めて。
 田辺聖子さんの「嫌妻権」(ちくま文庫)。彼女の小説はとても平易で読みやすく、何十年も経っているのに全然色褪せていないところが凄い、と思う。けれど敢えてこんな題名の本を選んでくるとは、夫は何か他意があるのだろうか、と勘ぐってしまう。

 それにしても、やはり物書きの方々は凄い、と実感する。
 最近こうしてブログを書くようになって、エッセイと呼ぶにはおこがましいレベルの身辺雑記を書いてみると、どれだけプロの方たちがうまいのかが実によくわかる。以前は「ただ読むだけで面白い」止まりだったけれど、この頃はずうずうしくも書き手からの眼も加えて読んでしまう。リズム感、テンポ、毎回字数が決まっている中で起承転結を入れ、盛り上がらせ、必ずほろりとさせるエピソード等を入れるなど。我が身のボキャブラリーの貧困が情けないが、本当にすごい、と思う。

 特に今回は内館牧子さんの「きょうもいい塩梅」を読み、改めて思った。
 先日読んだ藤原正彦先生の初期の頃のエッセイ集「古風堂々数学者」(新潮文庫)に内館牧子さんが解説しておられたのだが、それはもうそこまで言ってしまっていいんですか、・・・といった具合の毒舌だったけれど、たまたま今回の書では、逆に藤原先生が解説をしていた。“只者ではない、内館牧子”とそのものだ。
 ちょうど今から10年前くらいに書かれたもの。内館牧子さんが当時書いていらしたNHKの大河ドラマや連続ドラマ等は、子育て中で全く余裕がなく、残念ながら殆ど見ていない。36編すべてが食べ物にまつわるお話なのだが、どれもこれも魅力的で心にじんわり染み渡った。あとがきによると、このエッセイ集は銀座の老舗タウン誌「銀座百点」という小冊子に連載したものだという。そしてこの小冊子はかつて向田邦子さんが連載していた小冊子で、内館さんはそれを楽しみに読んでいたのだという。
 向田邦子さんは言わずと知れた今は亡き脚本家。私は彼女の作品が大好きだし、ドラマや映画化されたものは殆ど見ていると思う。毎回涙腺を攻撃されるのがわかっているのだが・・・。これでまた向田さんのエッセイが連載されていたという「銀座百点」も探して読みたくなってしまった。

 小説もノンフィクションもルポも、どれもこれも捨てがたいけれど、やはりエッセイは楽しい。肩ひじ張らずリラックスして読みながら、心がなんだか温かく、元気になる。
 次から次へと、新しい発見がある暑い夏である。

 今日は降水確率が高く、午後から雨の予報。厳しい暑さもいったん和らぐようだ。


コメント
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