いか@ 筑豊境 寓 『看猫録』

Across a Death Valley with my own Distilled Resentment

ジープに女を乗せて;昭和37年4月30日、現上皇后陛下夫妻(当時皇太子夫妻)

2021年08月01日 11時10分23秒 | 日本事情


昭和37年(1962年)4月30日、こどもの国の竣工式から25日後に視察する現上皇后陛下夫妻(当時皇太子夫妻)
出典:こどもの国web site :上皇陛下とこどもの国

この写真を数年前に初めて見た(愚記事)。興味深かったのは、のちに運転免許をもつこととなる上皇陛下(あきひとさん)がこの頃はまだ車を運転していなかったのだなぁということ。さらには、この地は元来旧軍の弾薬庫・弾丸製造所であり敗戦後は占領軍に接収された。その地を「こどもの国」をつくる[1]というので、米軍から返還してもらった。建設が始まって視察する皇太子ご夫妻がジープに乗っている。画像をよく読むと、三菱製だ。つまり、敗戦前にはジープなぞつくっていなかった日本が、戦後、朝鮮戦争の軍用車の供給不足で、米軍向けの生産を米軍の指導ではじめた。そもそも敗戦後、日本は自動車生産を占領軍から禁止されていた。ましてや軍需生産をやである。その日本「復活」の兆候である三菱製ジープに乗って「こどもの国」をつくろうってんだから(レコンキスタ!でも、こども!!!)、おもしろい。

[1]「こどもの国」の設計は、浅田孝(wiki)。建設コンセプトについては、「浅田孝の子供に対する環境開発の手法に関する研究 」という論文がある。

なお、この地で戦時中、動員されていた人の手記の宣伝文にある;沖縄の少女が自決に使った手榴弾。それはもしかしたら、私が造ったものかもしれない。学徒勤労動員として、田奈の森にある秘密の弾丸工場で来る日も来る日も弾丸をつくっていた当時のことを、鮮明につづる。Amazon)。そして、皇太子夫妻が沖縄で火炎瓶攻撃を受けるのは、上写真の日から13年後である。

米軍サポートから80年!? 三菱「ジープ」と「Jeep」の関係性とは

さて、ジープを含む上の写真をみて興味深かったのが以上であるが、最近知った。あの時代の人たちにとって、ジープという印象は強烈であり、ジープと女というのも「喩」を与えたのだと。敗戦時、1945年8月30日の「厚木」から、最も遅かった11月28日の松山まで全国津々浦々進駐軍が進軍した。その進軍はジープを先頭にしていたと歴史は語る。実体験が伝承されている。

最近、あの当時のことを思い出して、私に次のように言った人がいる。占領軍をむかえたとき何より強烈な印象をうけたのは、武器ではなく、ジープだったと、彼はいった。(C・ダグラス・ラミス、『内なる外国』、1981年)

さて、進軍していないこのジープ、しかもタイヤのみ(いや、凶器であったタイヤ!)の画像が、人の抗議を惹起する印象を与えたのだという。『「親米」日本の誕生』(森正人、角川選書、2018年)という本にあった;


『「親米」日本の誕生』(森正人、角川選書、2018年)p75より転載

雑誌、『旅』の表紙だ。時代は1951年6月号。つまり占領下だ。サンフランシスコ講和会議は、1951年9月8日。

この写真を見て、あなたはどう思うだろう?

この写真への苦情について、『「親米」日本の誕生』に書いてある;

(前略)月刊旅行雑誌『旅』では、一九五三年五月号で読者からの次のような投稿があった。

表紙についてですが、占領下であったにしても、独占資本を表現したような建物、それからジープとそこにいる変な形の女性、あんな表紙は二度と出さぬように(一一五頁)

 批判されているのは一九五一年の表紙だと思われる。表紙は西洋風の建築物とジープ、その間を洋装の女性二人が歩いているものだ。投稿者はそこに米軍による日本の暴力的な支配を読み取る。パルテノン神殿のような西洋建築物とジープは確かに新たに日本を統治する西洋に対する反感として理解できるが、女性二人は日本人のようである。何がどう「変な形」なのか。おそらく彼女たちがまだ珍しい洋装であること。しかも進駐軍のジープの近くを歩いていることから、米兵と関係を持っていると読み解いたのではないだろうか。

つまり、ジープと洋装の若い女性が「記号」となって、米軍支配を想起させるという事例だ。

● こういう感覚、ジープと洋装の若い女性が「記号」となって、米軍支配を想起感覚で、上の現上皇后陛下夫妻(当時皇太子夫婦)を見ると、どうなのだろう?

自前のジープも手に入れたし、女も手に入れた。これで立派な戦勝国風ってことかな。


関口宏 75歳で免許返納「進駐軍のジープに憧れた」60年のドライバー人生を“卒業 (google)



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