alternativeway

パリ、カフェ、子育て、サードプレイス、
新たな時代を感じるものなどに関して
徒然なるままに自分の想いを綴っています。

イギリスのEU離脱

2016年07月02日 |  カフェ的な場で考えたこと
最近はショックなニュースばっかりで
昨日の朝いつものようにBBCを聴いていたら
大事なニュースが流れてきた。イギリスのボリス・ジョンソンの
記者会見で、彼は最後にこう言った。
「その人物は私ではありえないだろう。」
日経によると会場には凍りついた雰囲気が流れたらしい。
イギリスを離脱に導いてきた彼はどんな発言をするのだろうか、
ずっと期待がかかっていただけに、さすがにこの言葉に
「ありえない!」と思った人も多いだろう。
なんたる無責任・・・私はイギリス人でもないのに
朝から腹が立ってしまった。

イギリスの国民投票から1週間。
それまでもBBCをほぼ毎日聴いていた私は
「あー6月23日は国民投票ね」くらいにしか
思っていなかった。友人が「イギリスは離脱するんじゃないか」と
話してたときも、そうかなあ、そんなことないんじゃないのと
楽観的に考えていた。実際BBCもフランスのメディアもわりと楽観的だったと思う。
もちろん大事なときではあるから特集はしないといけない。
でもパリのテロのときのような激しい危機意識は伝わってこず、
国民投票前日のBBCだってロシアのジャーナリストの
インタビューとか、わりとのんびりした話を流していた。

ところがどっこい。

そんなことがあるもんだ・・・
動揺したのは世界のインテリやエリート層だろう。
まさか?EUに留まっているほうがよっぽど利益があるではないか?
私たちには想像もできないほどの自由の恩恵をEU参加国は
受けていた。まさにその恩恵のためになんとかしてEUに
入ろうとしてきた国が後をたたなかったわけだけど。

抜けて一体どうするんだ??
そう思ったのは私だけではないだろう。

ありえない、マジで、この国の経済は一体これから・・・
しかもリーダーだと思っていた人は実際には
かなり無責任だということが発覚し、要するに
離脱後の青写真はほとんど描いていないままに、
離脱だけが先行してしまった状態だというのが浮き彫りになっていると思う。

そんな状態でいいのだろうか?どうなっちゃうのかと思っていたら
日経にフィナンシャルタイムスの興味深い論説があり、
おそらく「イギリスは本当には離脱しない」という道を
とるだろう、と書いてある。過去にも国民投票で
もめたものの、EUを離れるまでには至らなかったという
例が何通りかあるらしい。しかもボリス・ジョンソンは
そうした経緯に精通している人物だから、実際にはこれらは
杞憂でイギリスはEUに留まるだろう、というものだった。

それを読んで一安心はしたものの、本当にそんなことがあるのだろうか?
私が衝撃を受けたのはイギリスに対するヨーロッパ側の反応で
いってみれば「あっそ!勝手にしたら」という、
もはや愛想が尽きた、とっとと離婚手続きを開始してくれ、
という印象だった。私が離脱のニュースを知ったのは
わりと早く、職場でもフランス人たちが早速離脱について
話していたけど、心配する日本人をよそに「イギリスが
抜けたって大丈夫でしょ。だいたいイギリスは勝手なのよ」という
話をしていたのに驚いた。フランスのメディアも当日は
特集を組んでつきっきりだったとはいえ、数日後には
ほんの少し語る程度で、あまり追う気がないようだ。
印象としては「ショック だけど他人事」
大陸の人たちからすると、EUのくせに通貨も変えず、
シェンゲン協定にも参加しないという「俺だけ特別」
を通してきたイギリスにいい加減腹が立ってもいるのだろう。
だからきっと、美しいけどわがままを通しすぎた女性に
もう愛想が尽きてしまったように、もはや「どうぞご勝手に
でもこれ以上の譲歩は何が何でもするものか」という感じなのだろう。
(実際離婚という比喩はかなり多く使われていた)

残されたEU側がそんな状態の中、本当にこのあとEUに
留まるだなんてあるのだろうか?大陸側と島国との亀裂が
決定的になってしまった中で、もう一度仲良く・・・なんて
そりゃできるにこしたことはないけれど。

イギリスのエリートたちや富裕層は主に残留に投票し、
ロンドンを中心に再投票を求める動きも広がっている。
彼らはまさにEUがあっての自由を堪能してきた人たちで、
その良さを身体感覚で知っている。そう、だけど。

ふと 疑問に思ってしまった。

私、昔WTOの問題とか、アンチグローバリゼーションとか
関わっていなかったっけ?あの問題に関わっていた人は
どういう反応をするのだろう?グローバリゼーションは
誰かに恩恵をもたらした。それはそうした運動に関わった人が
目の敵にしていたような多国籍企業だけでなく、
私の友人たちでかつて「アンチグローバリゼーション」か
言っていたけど、今やエリートになってしまった人たちにも
確実に恩恵をもたらしている。都会に住み、国際感覚を持ち、
外国で仕事をしたことがあるような人。子供ができたらもちろん
英語はしっかり教え、できれば3ヶ国語が話せるように教育をする、
そんな人たちにグローバリゼーションは欠かせない。
BBCはなんとも言えないニュースを流す。
「私たちは今オランダに住んでるけど、イギリスのパスポートを
捨ててオランダのパスポートを取得しようと考えているの。
この子達が大きくなった時に、私たちが受けてきたような恩恵を
ちゃんと受けて欲しいから。」子供は6歳ですでに3ヶ国語を
話すという。聴いているだけで羨ましくて、少し
腹ただしさすら覚えてしまうけど、彼らのように自由の恩恵を受け、
自国をさらっと飛び出し、「世界市民」になれる人たちもいる。
一方でグローバリゼーションによって
不利益を被るのは?それが離脱を支持した人たちだ。

実際にはあまりに早いグローバリゼーションによって
不利益を被る人たちがいる。でも都会の一部のエリートたちは
それとは程遠い世界で生きているから、そんなことには
ほとんど気づく余裕もない。BBCは世界のニュースを流してくれる。
田舎の人たちのパブでの会話も流れているし、ミャンマーの
農村部の人たちの話も流れている。シリアでイスラム国の脅威に
怯えて暮らす人の生々しい話、ミャンマーにある屋根のない牢獄で
裸同然で暮らす人たち・・・

けれどそのBBCを聞く人たちの大多数は
どちらかというと都市部の富裕層で、彼らの一番の
関心ごとは、もちろん自分の仕事と自分の子供がいかに
社会的に成功するか。恐ろしいニュースを聞けば聞くほど、
哀しいかな、何としてでも我が子だけは守りたい、と
思ってしまうのが親の性なのだろう。世界の問題に耳は傾けつつも
我が子は手厚い教育を保証してくれる学校に、そのための資金と
情報収集はおこたらない。もちろん厳しい世界で生きて行くための
語学教育は小さいうちから。それに情操教育も。
良質なニュースを常に提供してくれている一方で、私はふと疑問に思ってしまう。
世界の南北問題をしっかりと伝えてくれるBBCやルモンドのような
ジャーナリズムは本当に素晴らしい。でもそれを常に聴いている人たちの
多くは格差の相当上の方にいる人たちだ。それが今の世界であって、
ますます格差は広がっていく・・・

イギリスは大切な未来を国民投票にかけたこと自体が
間違っていたのだろう。とはいえキャメロン首相がいうように
これが多くの国民の望む道であれば、それを歩んでいくしかない。
グローバリゼーションに反対だとか、よくないというのは簡単だ。
(私も昔言っていた)でも一度本当にストップしたら?
どんな道があるのだろう。日本はイギリスに比べるともともと
自由度は低く、経済的には豊かな島国だから、もしかすると
この先のイギリスの参考例にはなるかもしれない。
自分の国がしっかりと独立して誇りを持ちながら
国民も幸せにして他国と対等に渡り合う。ただ悲嘆にくれる
だけではなく、そんな例が今後つくられていくのなら・・・
イギリスから当分は目が離せない。

フランスに行くなら

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