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林海峰「三字頭」(香港)

2005年10月16日 05時32分32秒 | CD紹介

 カタログの写真ではわからなかったのだが、ジャケットの透明カバーをはずすと、緑色の地はなんと人工芝。実はこの人、サッカー好きで、ミニサッカーの大会を開いてしまうくらい。歌詞カードの真ん中にもサッカーフィールドって一体、、、
 林海峰、英語名はJan Lamb。bがついてるのは間違いでもなんでもなくて、商売をやっていたお父さんが、ユニークで覚えてもらいやすいということでわざとbをつけたとか。姉の林珊珊は元アイドル歌手、今はプロダクション社長。ラジオDJも続けていて、蘇永康も出演した映画「星願」でもDJ役だった。弟の林曉峰もタレントで、司会が多いが役者としても鄭伊健主演の「古惑仔」シリーズに出ている。芸能一家ついでに、奥さんも歌手の彭羚
 本人は元々DJで、葛民輝と組んだ香港初のラップユニット・軟硬天師でブレイク。ソロでもユニークな企画のアルバムを出してきた。ラジオ局の幹部でもある。
 私はラップやヒップホップが好きなわけではないので、彼のCDはほとんど買ってないのだが、今回買ったのは「男子組」という曲に蘇永康が参加していたから(この曲には他に鄭中基古巨基梁漢文が参加)。MVも見たけど、5人が肩組んで歌ってるだけなのに、なかなか楽しかった。
 曲は陳奐仁(ハンジン・タン)が多いが、元・SwingのEric KwokやJeraldも書いている。恭碩良農夫(たしかインディーズ系のバンドやってる人)などの名前もある。アグレッシブすぎる曲もあるが、ちょっぴりジャズ調、ディスコ調、フォーク調や時代劇主題歌風の曲は面白い。最後の「流行曲」なんて、大真面目にバラードしてる。もっともその詞の内容がカラオケ。「歌っちゃうぞ~、ファルセットもビブラートもきかせて、感動もんだぞ~、コーラスは覚えやすいよね、いつでも歌える流行曲、着メロで歌うぞ~、ハモりをはずすなよ、もっともっと歌うんだ、金がなかったら入れるなよ、三連譜三連譜、リピートしてこのメロディ、絶対この曲賞を取るよ」・・・
 詞は全部林海峰自身で、その口調は思いっきり香港の兄ちゃんそのもの。地下鉄で電話してたり、飲茶で隣のテーブルだったり、聞こえる会話がそのまま歌詞になってるみたいだ。私にはひたすら懐かしく、俗語すぎてよくわからず このとてつもないローカル色丸出し加減は、香港人以外の人にはうけないだろうな、と思う。けれど、皮肉がきいてる歌詞の内容といい、たぶん香港芸能の伝統―香港人には懐かしい要素をうまく取り入れているような感じの曲調といい、質の高いバックの音といい、林海峰の才気が溢れている。
 さらに凄いのは、おまけのDVD。MVは3曲なのだが、ミニサッカー大会の模様だの(梁漢文も出場、本物のサッカー解説者も登場)、林海峰こだわりグッズとそれを作る職人との会話だの(この道何十年の靴屋の爺さんとか出てくる)、合計3時間半近い内容。モダンな、オールディーズな、街中の、田舎の、香港がつまっている(たぶん。まだ全部見てない!)。
 人をおちょくりながら、実は人々にエールを送ってるのかも。「流行曲」だって、“本地歌壇(香港の音楽シーン)、加油(がんばれ)!”と言いたいのかも?
 「香港芸能は最近元気がない」と評論家や業界の方々に散々言われているが、こんなのが出せる力はあるのだ。単に「日本人好みの大スターやコンテンツが出てこない」だけなんじゃないだろうか? 香港芸能界は別に日本や台湾や他の地域のために制作してるわけじゃない。香港人がいい!と思うものを作って、それがたまたま香港人にはツボだがよそではイマイチ、というだけなのでは?
 ちなみにタイトルの「三字頭」は、30代、30ウン歳、という意味だとか。本業である“しゃべくり”のトークショーを開き、大好評につき追加公演が決まった。娘に性教育する話なんか、カミさんが見に来ている前でするか? 字幕つきVCDが発売されることを切に希望するものである。
三字頭 @YesAsia.com

コメント (2)
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