よしなごと徒然草: まつしたヒロのブログ 

自転車XアウトドアX健康法Xなど綴る雑談メモ by 松下博宣

北九州市病院局にて「格差」再考

2006年02月11日 | 講演放浪記
北九州市病院局主催の講演会にて、ヒューマンリソースマネジメントとクリニカルラダーの講演をする。北九州市病院局は、北九市立医療センター、門司病院、若松病院、八幡病院、戸畑病院などの市立病院を取りまとめている行政組織。

人間コマーシャル・オープンソースを自称している以上、なるべく講演依頼にはこたえるようにしている。この日はコマーシャル・オープンソースCRMについてのクライアント先の仕事を終えてから、夜の便で羽田から福岡へ飛ぶ。

さて最近の講演の中では、よく「格差」について言及する。1億総中流といわれた高度成長期中期から後期までの時代は終焉を迎え、長いバブル経済後の調整期を経て、景気が上昇基調に転じている昨今、所得水準の上下格差が以前に比べると分かれてくる時代になって来ている。

「下流社会」は、所得が低いだけではなく、生活能力や働く意欲、学ぶ意欲に欠け、「だらだら歩き、だらだら生きている」ような階層集団が「下流社会」を形成しつつあると論じる。その一方で、富裕層は、子の教育に大金を注ぎ込む傾向があるという。その結果、富は親から子へと受け継がれ、貧しさもまた相続される。所得格差が教育や学歴の格差を生み、それがさらなる格差拡大と階層化を助長するというのだ。

ではいったい格差社会化現象は医療サービスにどのような影響を与えつつあるのか?一言で言えば、国民が受ける医療サービスの質に今後大きな差が生じてくる。ここに公的病院の苦悩がある。圧倒的多数の公的病院は、医療サービスを提供する相手のパブリック=公衆を均質的な中流と想定してきた。ところが、今後は自己負担分の負担に耐えない層や、潤沢な自己負担をしてまでも良質なアメニティで高度な医療サービスを求める層などが混在することになる。

公的病院は赤字ならば構造上、税金から補填されて資金繰りがつき倒産しない。よって長期慢性疾患のような赤字病院が全国に散らばっている。ところが、その税収が不振なゆえに、独立採算のもとで黒字経営へ転換することへのプレッシャーは近年とみに高まっている。したがって、採算にシビアな経営をすればするほど採算がとりづらい医療サービスは継続しにくくなり、医療費の支払い能力のない患者は受け入れがたくなってくる。

国民皆保険制度は、長きにわたって中流社会のゲートキーパーの役割を果たし、公的病院は、医療サービスのゲートとしてパブリックヘルスの大きな担い手だった。公的医療が「格差」を是認するとき、この国の階層分化はぬきさしならない状況になるだろう。







最新の画像もっと見る

コメントを投稿