よしなごと徒然草: まつしたヒロのブログ 

自転車XアウトドアX健康法Xなど綴る雑談メモ by 松下博宣

「知識創造企業」

2005年05月10日 | No Book, No Life
経営学の分野は昔から貿易収支が赤字だ。つまり古くはドイツ、近年では圧倒的にアメリカからの輸入が中心だった。経営理論、経営モデル、さらには経営改革手法。少なくても30年間はアルファベット3文字の手法が輸入され続けてきた。MBO(目標管理)、ABC(活動基準費用)、CQI(継続的品質管理)、PFP(成果対応型賃金)、BSC(バランス・スコア・カード)など枚挙にいとまがない。

そんななかで、わずかに輸出された日本発の経営理論もなくはない。「知識創造企業」野中郁次郎、竹内弘高、1996年 東洋経済である。この本、全米出版社協会のビジネス経営書部門でベストブック・オブ・ザ・イヤーにまで選出された。

さて、野中によると、日本企業の成功(と失敗)は組織的知識創造の技能・技術によってもたらされてきた。さらに組織的知識創造とは、新しい知識を作り出し、組織全体に広め、製品やサービスあるいは業務システムに具体化する組織全体の能力をさす。

知識創造が連続的なイノベーションを可能にし、たゆまぬイノベーションが競争優位を実現する。それゆえに組織の成長、組織の発展のためには知識創造こそが原動力であると論じられる。そして知識創造のためのさまざまな論考が重厚なカーペットにように紡ぎ出され、テキストのなかに織り込まれている。経営書の体裁をとりながらも、知識そして組織を論じる教養主義的な良質な啓蒙書であると思う。

個人的には、得るものがとほうもなく大きな一冊となったし、ことあるごとに手にし、読むたびに発見がある本だ。知識創造企業を目指す会社にとってまさに知識経営のガイドのような著作だと思う。