よしなごと徒然草: まつしたヒロのブログ 

自転車XアウトドアX健康法Xなど綴る雑談メモ by 松下博宣

虚妄の日本型年功制復活のススメ

2005年05月08日 | ニューパラダイム人間学
昨今の成果主義人事に対する批判には浅薄なものが多い。その典型は、「虚妄の成果主義―日本型年功制復活のススメ」高橋 伸夫著、である。この本の論理展開には大きな欠落がある。それは成果主義人事のシステム、類型、モデルをいっさい提示せずに、従業員サイドから見た成果主義への不満足、自虐的な人事部員の個人的所感をベースにして論を展開していることである。

成果主義のサブシステムである等級システム、評価システム、賃金システムの個別分野に対する専門的クリティークにはほとんど実証的な論をさかず、いきなり、日本型年功制復活を声高らかに煽動しているのがいかにもエキセントリックだ。

この本の著者は、人事マネジメントの実務経験のない大学の教員であるという。この著作物の構図はいたってシンプルだ。例えるならば、サッカーの選手経験のない人間がサッカーチームの監督をやり、その監督が外野から自チームの劣勢に対して批判しているようなもの。巧みなレトリックを駆使した結果、無知なサポーターの情緒的共感は得ることはできたが、経営実務家の理性的な支持は得られなかった。

従来、年功賃金、終身雇用、企業内組合活動の恩恵を得てきた予定調和の世界の住人たるサラリーマン、そして巧みにそれらを演出してきた経営サイドから観れば、役割責任、成果責任、説明責任を問う成果主義は明らかに異質で新しい経営スタイル、ワークスタイルを迫るものだ。よって、異質で新しい経営スタイルやワークスタイルの探索、実践にこそ、産業社会に参画するひとりひとりが自問自答すべきなのだ。

過去と決別し異質で新しい経営スタイル、ワークスタイルに果敢に挑戦して進化の道を選ぶのか。一時的に頓挫したから古きよき「日本型年功制」に復古するのか。無論、前者を支持し、実践すべきだ。