かみつけ岩坊の数寄、隙き、大好き

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 「Hoshino Parsons Project」のブログ

そばにいる隣人、タヌキ。いつもこちらの暮らしは見られている。

2015年01月05日 | 言問う草木、花や何 〜自然・生命の再生産〜

先日、雪の積もった朝、家の前に犬の足跡がありました。

ただ雪の上に犬の足跡だけがあったので、前の叔父の家の犬が逃げ出したのではないかと心配になりました。

リードのついていない野良犬など、この辺では見たことがありません。てっきり叔父の犬が逃げ出してしまったのではないかと思いました。

その犬は、前にも大雪のときに柵を飛び越えて脱走した前科があるので、叔父夫婦が高齢になって機敏な対応が難しいだけに、私はとても心配になり、すぐに叔父の家に確認にいきました。

すると、その犬は彼専用の広い運動場の端のほうにちゃんといました。ほっとしました。

 

では、あの足跡はなんだったのだろうか。

よくネコが家の前を通り過ぎるのは目撃していますが、 この雪の深く積もったときに、悠々と横切って行くネコがいるだろうか。

足跡の大きさも、ちょっとネコとは思えない。

 

そんな経験をした矢先、あとで知ったのですが、

叔父の家の物置に、背中にケガだか病気だかのあとのある弱りきったタヌキがいるのを叔母がみつけました。

そのタヌキは可愛い顔をしていたようですが、物置の隅にうずくまり、 エサをあげてもまったく食いつかないほど弱っていたようです。

叔母が困っているところにちょうど知り合いの人が来たので、その人がタヌキを毛布にくるんで山へ放してきてくれたそうです。

 

この話しを叔母から聞いたとき、とりあえずは良かったと思いました。

 

しかし、しばらくすると、なにかとても可哀想なことをしてしまったのではないかと思えてならなくなってきました。あのタヌキは、どう考えても人間に助けを求めてあの物置にうずくまっていたのではないだろうか。

日ごろから人間の近くで生活しているタヌキです。

自らの安全だけを考えるのなら、相当弱りはててでもいない限り、わざわざ人間にみつかる所にうずくまるようなことはちょっと考えにくい。

もっと安全な茂みは、周囲にたくさんあるはずです。

 

多くのタヌキは家族単位で暮らしているものです。

もう働く力がなくなったと判断して自ら群れから離れる動物は少なくありません。

行動範囲の広いシカなどなら、遠くへひとり離れていくことも考えられますが、行動範囲の限られたタヌキのことです。

人間界のそれぞれの家がどのような家なのかは、日ごろからよく目にしているのではないでしょうか。

 

叔母の家は、この辺でも犬、ネコだけでなく、鶏やウサギなど動物を多く飼っている家です。

このあたりの人家のなかでは、動物にやさしい家といった印象は、毎晩のように近くを徘徊している動物であれば当然感じているのではないでしょうか。

 

やはりあのタヌキは、最後の助けを人間にもとめて、動物に優しい叔母の家の物置にうずくまっていたのに違いありません。

 

とすれば、毛布にくるんで山に放してやったことは、とても可哀想なことをしたことになります。

確かにあのタヌキのケガだか病気は、もうどうすることもできないほど末期のものであったかもしれません。

仮に動物病院に連れて行く事ができたところで、助けることは無理であったかもしれません。

 

それだけに、人家の物置にうずくまっていたタヌキの思いを想像すると、

毛布にくるむ優しさはあったとはいえ、山に放してきたことがひと際可哀想なことをしてしまったように思えてならないのです。

 

ただ、ただ死を待つしかないタヌキだったのかもしれません。

でも、そのタヌキが動物が大好きな叔母に見守られて、

いつも畑の作物を荒らして嫌われていたことを知っていても、

生き物が大好きな叔母に最後を看取ってもらえたならば、

どんなに幸せだっただろうか。

 

ただの害獣であるのか、

それとも、畑を荒らして憎まれつつも、いつも隣りで暮らしている隣人であるのか、

そんな交歓が、ちょっとした互いの生活感覚のこころの距離で、大きく変わる。

 

私達は気づかなくても、

毎夜、家の明かりをみながら、

家の庭をとおりすぎながら、

それぞれの家にいる人間の生活の違いを感じている動物がいるのです。

 

それは、あのタヌキに限らず、

今も様ざまな生き物たちが、人間たちの暮らしをそっと見ているに違いない。

 

言葉を交わすことなく、顔をあわせることも滅多にない隣人ですが、

間違いなく同じ土地に暮らすもの同士として、

相手の気持ちをあと半歩、歩み寄って理解してやりたいものだと思いました。

 

 

 

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