かみつけ岩坊の数寄、隙き、大好き

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 「Hoshino Parsons Project」のブログ

狭い車内で聞く狭い音楽 ジャズ編

2020年10月04日 | 映画・音楽・舞台・美術などの評

私は日常生活で車が不可欠な群馬県に住んでいる都合、年間3万キロ以上は走行しています。

したがって、車のなかで音楽を聴いている時間も多く、それは1日平均2時間といったところでしょうか。その時間の9割以上は、CDを聴いており、残りはFMを聞いています。

それが先月、急に車を買い替えることになり、おかげで待望の最新ナビを取り付けることができました。

今までのナビ画面では、田んぼの中や海の上を走行することが度々ありましたが、ようやくまともな走行が出来るようになりました。加えて嬉しいのは、はじめてSDカードにCDを録音して楽しめるようになったことです。

36ギガのSDカードにこれまで120~130枚くらいCDアルバムを入れましたが、まだ100枚以上は入るはずです。

 

 数週間、この作業をずっとしていると、持っているCDを随分と見直すことが出来ました。
 車の中で自分の聞く音楽と、SDカードに入れるもの入れる必要のないものの選別を考え、あらためて自分の音楽の好みを確認することもできました。

 ひと口に自分の好みといっても、この場合、車内という小さな空間で運転中に聞くにふさわしい音楽という意味です。家で聴くものや他所の店内やライブで聴くものの好みとは自ずと異なります。

 またSDカードに入れることで、普段のCDで個別に聞くのとは違って、アーティスト名や作曲家名、アルバムボックスタイトルなどで、通して流し聞きできる利点もあります。

 

 そこで、一番最初に始めたのは、大好きなエリック・ドルフィーとオーネット・コールマンのアルバムを片端から入れることでした。

 

 エリック・ドルフィーは、短い生涯で若いうちからのぶっ飛んだ演奏スタイルに極端な変化はないので、ただ自分の持っているアルバムの再確認で終わった感じでした。
 対するオーネット・コールマンは、長い生涯で幅の広い表現スタイルにチャレンジしているので、通して作品が聴けるというのは(まだ入れるのが精いっぱいで通して聴けてるわけではありませんが)、とても新鮮な発見もあり楽しいものです。

 

 あらためてプレイヤーとしてのドルフィーのスゴさ、コンポーザーとしてのコールマンのスゴさを認識しました。

 

 私のジャンルを越えた音楽の好みとしても、この二人は中軸をなすプレイヤーです。

 それに加えて黒人音楽として大事なのが、ちょっと飛びますがニーナ・シモンです。

 ジャズが黒人の音楽と言われながらも、どちらかというと黒人が白人社会へ入っての音楽という性格が強いので、意外とアフリカ系黒人のスピリッツを黒人霊歌のように前面に打ち出したジャズは少ないものです。その点、ニーナ・シモンは、ステージでの語りや動きなどを見ると、もっとも黒人によるジャズ・ボーカルの魅力を打ち出してくれているので好きです。

YOUTUBEの以下の映像に、そうした姿がよくあらわれています。

https://www.youtube.com/watch?v=8mL3L9hN2l4&t=853s

 ただ、車で聴く音楽という条件となると、私のニーナ・シモンコレクションの中からは2枚も入れれば十分かと思いました。

 スタンダードを歌う歌手として外せないダイアナ・クラールは、美人ながらあまりにも太々しいので、いまひとつキャラが好きではないのですが、ピアノタッチセンスが抜群なので、悔しいけれど車で聴くにももってこいのプレイヤーと言えます。

 

 ニーナ・シモンほどのブラック・カラーを打ち出した世界はなかなかありませんが、トラディショナルやオーガニック路線へ向かうと、ドン・チェリーがいます。

 ドン・チェリーも、方向性やキャラクターは大好きなのですが、車で聴く音楽となると2枚も入れておけば充分。

 この方向では、枚数の問題でなくアブドーラ・イブラヒム(ダラー・ブランド)のピアノと、ランディ・ウエストンの「ブルース・トゥ・アフリカ」ビックバンドバージョンとピアノソロバージョンは、何度でも繰り返し聞いて楽しめます。

 

さらにキャラクターで大事なのは、ミンガスです。

 下の2枚(片方はDVD)は、MINGUSというタイトルで全く違うものなのですが、どちらも超お気に入りのアルバム。

 ジョニ・ミッチェルの「ミンガス」とチャーリー・ミンガスのモノクロ・ライブ映像の「ミンガス」

 ジョニ・ミッチェルのこのアルバムをはじめて聞いたのは、おそらくFM放送で、その時の衝撃は忘れられません。
「いったいこのギターは誰が弾いているんだ?」
「こんなユニークでセンスの良いギタリストがいたなんて」
 アルバムメンバーのウエイン・ショーターのソプラノサックス、ジャコ・パストリアスのベースの腕ももちろんで、ほどなくジャコ・パストリアスが亡くなってしまっただけに、彼の限られた名演アルバムのひとつとしての評価が高いのはわかります。

が、このジョニ・ミッチェルのギターやボーカルのジャズプレイヤーとしてのレベルとセンスの良さは、どうしてもっと評価されないのでしょうか。不思議でなりません。

 チャールス・ミンガスに捧げられたこのアルバムが最高傑作であるとともに、そのミンガスが、そこまで尊敬される由縁も、この車で聞くにふさわしい音楽を絞っているうちになんとなく見えてきました。

 そして大元のミンガスといえば「直立猿人」とう代表アルバムが思い浮かびますが、個人的には、DVDで出ているエリック・ドルフィーを迎えたライブ映像が最高です。

https://www.youtube.com/watch?v=5STaUWmh9bw

 もちろん、エリック・ドルフィーファンゆえということもありますが、小編成でスケールの大きな曲を表現するということにおいては、マイルス以上にコンポーザーとしての才能を感じます。とりわけ「オレンジ色のドレス」という曲に顕著にそれは見れます。

 秋吉敏子、ルー・タバキン、ビックバンドも好きですが、車の中で聞く選曲となると、圧倒的にミンガスがいいです。クラシックも含めて、私の場合は、四重奏程度までの小編成、もしくはソロの音楽が好みなので、小編成でありながら大きなスケールの音楽を生み出すという面では、ミンガスが最高かと。

 

 このような好みから出る帰結なのですが、私が車で聞く音楽の中には、マイルスやジョン・コルトレーン、MJQなどは入ってきません。

 若い頃の初恋の思い出と重なるロン・カーターのソロアルバムも外れます。車で聞くには、なぜか、かったるいのです。それと妻には申し訳ないのだけど、ソニーロリンズは、初めから私の選択肢には入っていません。

 ジャズでコルトレーンやマイルスを外すなんてあり得ないことかもしれませんが、マッコイタイナーのピアノソロはなぜか残ります。ドロドロサウンドでも、眠くはならないし。

 ただ、定期的に聴きたくなるコルトレーンとエリック・ドルフィー共演のインディア、インプレッションズのアルバムは入れておきました。

 同じかったるい部類に入るものでも、アランフェス協奏曲だけは、マイルスとジム・ホール、MJQなどの演奏が一気に聴き比べられるので、入れておきました。

 ギタリストは、やはり小編成かソロでないと車内では合わないので、ジョー・パスだけは欠かせません。

 

 

そして、車で最も多く聴いているアルバム、私のナンバーワン!

 上の写真では、ジョン・マクラフリンやマハビシュヌ・オーケストラのアルバムがたくさんあるように見えますが、実はこれもFMで聴いたある忘れられないマハビシュヌ・オーケストラの曲があり、ただその1曲に出会うために片端から買ってしまったものです。結局、未だにその曲には出会えていません。

 でも、マハビシュヌオーケストラではなく、マクラフリン・トリオの演奏に出会えたことで、私の車内音楽世界は格段に楽しい日々となりました。

 トリオというと、アルディメオラ、パコデルシアとのスーパーギタートリオの方が有名ですが、そちらは、車で繰り返し聞くようなタイプではありません。

https://www.youtube.com/watch?v=Idy5E5UXCYs&t=2468s

(マクラフリン・トリオのアルバムは、写真のものともう一枚あるはずなのですが、現在行方不明)

 マクラフリンのアコースティックギターとそれをシンセ加工した独特のサウンドは、初めて聞いたときには、ギター、ベース、パーカッションの他に、誰がキーボードを弾いているんだと思ったほどです。
そして何よりの出会いは、パーカッションで参加しているインド人のTrilok Gurtu(トリロク・グルトウ)です。
 映像を見るまで、まさかこんな格好でドラムを叩いていたなんて夢にも思いませんでした。

 オレゴンにも加わっているのもうなずけますが、独特のサウンド作りの魅力もさることながら、ドラム、とりわけバスドラムのように聞こえるバスタムのキレの良い響きには、ずっと聞き入ってしまいます。たった3人で、これだけのサウンドを生み出してくれるというのも、車で聞く音楽として最高のもので、助手席に妻がいる時でも安心して流せるサウンドというのもありがたいところです。

 オレゴンのメンバーそれぞれのソロアルバムなどは、とても斬新で面白いのですが、前衛すぎて車で聴く気にはなれません。

 

 他に、セロニアス・モンク、山下洋輔のソロ、などのピアノソロアルバムが多いので、当然、キース・ジャレットのソロは、運転には聞き入りすぎる危険もありますが、よく聞いています。

 

あらためて要約すると

① アルバムが一貫したテーマや曲調で統一感のあるもの

② 大編成ではなくソロかトリオくらいまでの小編成のもの

③ バラード調のものは、概して眠くなるので繊細な表現を伴った作品に限る

そんな領域の選択で7~80枚くらい入ったでしょうか。

 

以上のような理由から、私が車で聞く音楽となると、不思議とビ・バップからクールジャズ、ハード・バップに至るジャズ王道の演奏は外れてくるのです。
だからと言って、それらの音楽が決して嫌いというわけではありません。

ただ車で聴くには合わないのです。

 

ここで、もう一つ気づいたことがあります。

車内という狭い空間の制約を強調しましたが、もうひとつの属性として、一人で聞く音楽と複数の人間、あるいは公共の空間で聞く音楽の違いというものを感じました。

私の好みのフリージャズは、好みの合った人とでないとなかなか安心して聞けないものですが、私は、マイルスやMJQがまったく聞けないということではなく、他人の家や公共の空間(ジャズ喫茶、飲食店店舗など)では、むしろフリージャズ以外の方が、自分自身も安心して聞くことができます。

実は、この辺にジャズを二分する重大な視点が含まれてます。
ちょっと文字で書き残すのは勇気がいるので、やめておきますw

とはいえ、32ギガのSDカードのおかげで、思わぬ深いところに入ることができました。

 

次回は、クラシック編を整理してみます。

 

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負債の網  お金の闘争史・そしてお金の呪縛から自由になるために

2020年10月03日 | 無償の労働、贈与とお金

世の中には、現行のドルや円以外にも、様々なお金の仕組みがあります。

本書は、人類史上でお金が生まれた経緯というよりも、近代社会で政府発行通過誕生の経緯、金融支配がどのように仕組まれてきたのかを、世界中の事例を紹介しながら、見事に解き明かしてくれています。

ここ数十年の間に、世界各地で起こる国家や企業の財政破綻は、借金が第一の理由ではありません。
負債の多くは、一時的な現象にしか過ぎません。

米ドル一極支配がどのように生まれてきたのか。

旧ユーゴスラビア、アルゼンチンなどが、どのように財政破綻に陥ったのか。

また私たちが知らない間に、巨額の負債を抱えていた国家が、どのように復活を遂げているのか。

自国通貨発行の意味、中央銀行の独立性を保つことの重要性など、国際通貨基金が公然と介入して貶めている実態を知ることができます。

 

大英帝国と新世界秩序帝国との間には目を見張るような類似点が見られる。主な違いは、英国王室はねらいの達成のために暴力を使ったのに対し、新世界秩序のエリートは金融テロリズムを基調といたという店である。また、大英帝国は、他国を植民地化し、天然資源を奪い、英国実業家たちの工場までそれを船で運ぶことによって建国されてきた。「赤コート兵」侵略の後で、地域文化はぼろぼろにされ、「より進んだ」英国式の生き方に取って代わられた。
 対して、ウォール街が支配する新世界秩序帝国は、他国を海外融資や投資で植民地化することによって建国されている。魚をしっかり釣り針にかけた後、新世界秩序の金融テロリストたちは栓を抜き被害者は何の前触れもなくいきなり乾いたところに宙吊りにされ助けを乞う。そこで登場するのが国際通貨基金である。かれらの救済レシピである民営化や貿易自由化を含む緊縮改革は、標的国の天然資源やその他の資源の強奪に相当し、これは新世界秩序のエリートたちの手にわたる。それは大英帝国がより粗野な方法で実現させたのと同じ結果である。
 (ボブ・ジョルジュビッチ『クロニクルズ』寄稿記事 エレン・ブラウン『負債の網』より孫引き) 

 

これまで破綻したどこの国家よりも多い、世界でダントツの1,000兆円にものぼる負債大国であるアメリカが、なぜ破綻せずにいられるのか。
 
かたや未だ対外純資産では世界一の金持ち大国である日本が、何故かくも没落し続けるのか。
 

大西つねき 講演資料より
 


金利を伴うお金で貸し付けをし、ある時急に引き締めを行い破綻させ、値崩れした資産を根こそぎ掻っさらう仕組みは、決してお金そのものの普遍法則ではありません。

世界に溢れている失業者、露頭に放り出されるホームレス、経営に失敗して自殺にまで追い込まれる経営者などは、必ずしも彼らの責任によるものではありません。

本来、経済活動を活発にするために機能するはずのお金が、実体経済の活性化よりも、ただお金を増やすことこそが第一の目的の時代になってしまいました。

「金余り」と言われるほどの時代であっても、より多くのお金を増やすことこそが未だに至上目的なのです。

2019年3月に出た本ですが、本来、世界中がコロナ過に見舞われている今こそ、お金があるべき役割を果たせば平和をもたらすことができるのだと教えてくれる1冊です。

上下二段で500ページにも及ぶ内容ですが、経済に関する本は巷に溢れていながら、これほど実践的で現実的な勉強になる本は初めてかもしれません。したがって、読むのにもとても時間がかります。
決して哲学や経済学書のような難解さがあるわけではありません。ここの説得力ある具体例に驚かされながら、それを飲み込み了解するのに時間がかかるという意味です。

1章1章が、1節1節が、あまりにも濃い本なので、twitterでひとつひとつの切り口を分けて紹介して行けたらと思います。

 


エレン・H・ブラウン著
『負債の網  お金の闘争史・そしてお金の呪縛から自由になるために』
那須里山舎  本体4800円+税

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