英宰相ウィンストン・チャーチルからのメッセージ   

チャーチルの政治哲学や人生観を土台にし、幅広い分野の話を取り上げる。そして自説を述べる。

SNS投稿の信頼性は?  風評が時として大変な事態を引き起こす

2019年04月19日 10時19分42秒 | 国際政治と世界の動き
 アフリカ東部・ルワンダがこのほど、民族虐殺から25年を迎えて開催した大規模な追悼式典は、風評被害の怖さをあらためてわれわれに思い起こさせる。
 80万人が犠牲となった民族虐殺では、多数派フツの民兵組織が主体となり、少数派ツチなどを殺害、それをあおったのはラジオ局の放送だった。「当時の経緯はフェイクニュースや憎悪をあおる情報がSNSなどで広がる今の状況とつながる」として、式典に出席した人たちからは「憎悪をあおる情報が広がることにもっと警戒すべき」との声が挙がった。
 ルワンダのポール・カガメ大統領は国民のさらなる団結と種族間のいっそうの和解を訴え、怒りの激情を箱の中に納めて封じ込めるように説いた。そして1994年当時の暗黒と絶望は今日、「姉妹は母となり、隣人は叔父さんとなった。見知らぬ人々は友人になった」と述べた。
 当時のラジオが虚偽の風評を流し、今日はツイッターなどのSNSがラジオにとって変わった。ことし4月8日、「人が刺されて犯人は捕まっていません」などとツイッターにうその投稿をしたとして、警視庁は、20代の男女4人を軽犯罪法違反(虚偽申告)の疑いで書類送検した。
 警視庁によると、送検容疑は3月15日午後10時ごろ、ツイッターに暗闇で人が倒れる様子の動画と、「ナイフか何かの刃物で刺されたみたいです。犯人はまだ捕まっていません。場所は町田市です」とうその投稿をしたというもの。書き込みを見た人から翌日110番通報があり、署員らが確認したが、そうした事実は確認されなかったという。
 容疑者4人はことの重大性を認識せず、「こんなにネットで炎上するとは思わなかった」などと供述しているというが、ルワンダの大量虐殺事件と、虚偽の風評と言う点では同じだ。
 フェイスブックなどのSNSで、偽ニュースや誤情報が含まれ、トランプ大統領が勝利した米大統領選の結果にも影響を及ぼした「ロシア疑惑」にも当てはまる。
 通信が便利になればなるほど、個人が通信手段を自由自在の操れるようになる。1990年半ば以降からの「通信革命」が、それを可能にした。
  SNS上のニュースを信用するかどうかを、日本経済新聞社がこのほど、電子版の読者に聞いた。それによると、「信用しない」との答えが87.1%に上り、「信用する」の12.9%を大きく上回った。
 65歳の男性は「大手メディアは裏取り後に情報掲載をするため、ある程度信頼感があるが、SNSのニュースはソースを含め真偽不明確が多い」などと話し、「信用しない」と答えた読者の多くは、SNS上のニュースの情報源を最初から疑ってかかっている姿勢が顕著だった。一方、「ツイッターの長所は情報の速効性にある」などとSNSを評価する声もあった。
 大多数の読者が信用する新聞やテレビなどの既存メディアでさえ、読者を誘導する記事や報道をしばしば見かける。ましてや、個人の感情が入り、客観性に欠ける傾向があるSNSはなおさらだ。
 いつの時代も、情報は情報として理解し、それが絶対の真理だとは思わないことだ。とくに21世紀の幕が開き、SNSが大きな情報源のひとつになりつつある現在に言えることだ。
  異なった情報源から事実を探る姿勢が、情報に携わるメディアの記者だけでなく、一般の人々にも求められる時代が今日、到来しているのかもしれない。 

 写真:民族虐殺から25年を迎え、犠牲者に祈りを捧げるルワンダの人々