英宰相ウィンストン・チャーチルからのメッセージ   

チャーチルの政治哲学や人生観を土台にし、幅広い分野の話を取り上げる。そして自説を述べる。

ストーカー犯罪は日英で深刻

2012年12月31日 12時54分42秒 | 時事問題
 神奈川県逗子市でデザイナーの三好梨絵さん(当時33)が刺殺されたストーカー事件は記憶に新しい。「ハリファクス侯爵の歴史夜話」でも取り上げた。
 卑劣なストーカー行為はどうも日本だけの現象でないらしい。英国でもストーカー行為が大きな問題になっている。
 英議会の統計によれば、ストーカーによる被害者は毎年約12万人。そのうちの大多数は女性だ。ただストーカー犯罪として英警察が摘発したのは年間5万3000件にすぎない。そのうちの50人に1人しか起訴されなかったという。
 キャメロン英首相がことし3月、ストーカー被害にあった女性数十人をダウニング街10番地の首相官邸に招待した。首相は今までの刑法では十分に対処できないと述べ、新たなストーカー規制法を導入することを約束した。
 11月25日付のサンデー・タイムズによれば、英政府はこのほど、ストーカー行為に対して最高6カ月、暴力行為の恐怖を与えるストーカー行為に対して最高5年の懲役刑を導入した。
 英国でも、逗子市の事件や1999年に女子大生が殺された埼玉・桶川ストーカー事件同様、執拗なストーカー行為や、それに伴う強迫が殺人に結び付いたケースもあったという。
 一例を取り上げると、クリフォード・ミルズ受刑者は元ガールフレンドのローナ・スミスさんをフェイスブック上でストーカー行為をした後、昨年2月にロンドン南部のブリックストンのアパートで刺殺した。殺人罪で無期懲役刑(終身刑ではない)の有罪判決がこのほど下された。
 キャメロン首相はストーカー被害にあった女性を前に「ストーカー行為は恐るべき犯罪であり、被害者の生活を生き地獄にさせている」と話した。「現在の法律では不十分だ。ストーカーを関連刑法で罰するのではなく、もっと強力な独立したストーカー規制法規で対処すべきだ」
 英警察当局高官もストーカー犯罪の取り締まりを約束し、「ストーカー被害者を心理的恐怖や物理的な危害から保護するカギは、国民全員がストーカー行為を重大な犯罪だと認識すること、及び警察官による迅速な行動だ」と強調している。
一方日本では、三好さんの元交際相手の無職小堤英統容疑者は一日に1000-2000回の迷惑メールを送った。しかし、神奈川県警は、迷惑メールを規制する法律がなかったために、小堤容疑を逮捕できなかった。
 ドメスティックバイオレンス(DV)の被害女性を支援する特定非営利活動法人(NPO法人)「全国女性シェルターネット」など全国の45団体はこのほど、ストーカー規制法の抜本的改正を求める緊急声明を出した。 声明は、現行の規制法が現実のストーカー事件に不十分なものだと指摘している。
 自民党は11月13日、ストーカー規制法改正案を議員立法で提案することを決めた。電子メールや他者のソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)への書き込みも規制対象に加える内容だ。与党の民主、野党の公明両党も同調する考えで、今国会中にも成立する可能性が高い。
 英議会が今までよりも厳しいストーカー規制法を成立させたように、日本でも一刻も早い、強力な規制法案を衆参両院で通過成立させなければならない。日本国民のストーカーに対する意識向上も、ストーカー犯罪の抑止力になると思う。
(参考)日本のストーカー行為の認知件数は2001年(平成13年)以降、1万2000件~1万5000件の間を推移しているが、実際の数はこの数より多いと思われる。

 (2012年11月27日 07時03分00秒)

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