英宰相ウィンストン・チャーチルからのメッセージ   

チャーチルの政治哲学や人生観を土台にし、幅広い分野の話を取り上げる。そして自説を述べる。

「台湾有事は日本有事」に反発する中国共産党の真意は何か    帝国主義者になり下がった元マルクス主義者      

2021年12月04日 11時51分51秒 | 国際政治と世界の動き
 中国共産党政府は安倍晋三元首相の最近の言動に反発し、赤裸々な内政干渉だと怒る。安倍氏は、台湾のシンクタンク主催のオンライン講演で、「『台湾有事』は『日米同盟の有事』だ」などと発言したからだ。
 中国共産党政府は駐中国大使の垂秀夫(たるみ・ひでお)氏を中国外務省に呼び出した。抗議の内容は、中国の華春瑩外務次官補が1日夜、各国の記者に話した。「公然と中国の主権を挑発し、強硬に『台湾独立』勢力を後押しした」「極めて誤った言論で、中国の内政に乱暴に干渉した」
  これに対して、垂・駐中国日本大使は「日本国内にこうした考え方があることは、中国として理解をする必要がある。中国側の一方的な主張については受け入れられない」と反論し、毅然とした態度を示した。
  安倍氏は1日のオンライン講演で、「『台湾有事』は『日本有事』だ。すなわち『日米同盟の有事』でもある。この認識を、習近平国家主席は断じて見誤るべきではない」などと発言した。
  安倍氏の真意はわからない。あくまで民主主義国家の台湾を支援するため、日本は米国とともに立ち上がると述べたのか?もしそうなら、私とは見解が違う。私は中国の台湾侵攻は、尖閣侵攻、そしてかつて中華帝国の属国(冊封体制下)の琉球王国(現在の沖縄)への侵攻に必然的に繋がると判断するからだ。薩摩藩が17世紀の初め琉球に侵攻し、薩摩藩領とし、現在の日本領土になっている歴史的経緯がどうであれ、現在は日本の領土である。
  中国革命を推進し、伝統的な中国社会の封建制度から脱皮して皆が平等で食べるに困らないマルクス・レーニン主義の理想を実現しようとした革命家らはもはや中国大陸にはいない。革命は独裁となり、毛沢東主義となり、マルクス・レーニン主義という西洋の思想は中国2000年の「一君万民」の皇帝政治に飲み込まれた。中国共産党は中国大陸にはもはやいない。表看板は「中国共産党」とは書かれているが、一歩家に踏み込めば、そこは独裁集団や独裁者が跋扈する空間だ。
  中国共産党は、漢や清などの歴代帝朝の一つになった。習近平国家主席は、来年行われる、5年に1度開かれる中国共産党大会で皇帝となる。中国共産党は1949年に始まった一つの帝朝と言える。
  この帝朝、中国共産党は富国強兵により、1人1人の国民所得は低いとは言え、国家の国力を測る尺度となるGDPでは超大国にのし上がりつつある。習近平はこれを「中華の偉大な復興」と唱える。孫武が書いた「孫子の兵法」のごとく、できれば戦わずして、この目標を達成したいのだろう。
  「中華の偉大な復興」とは何か。習は明らかに1839~42年のアヘン戦争以前の東アジアの国際秩序に戻したいのだろう。18世紀の末、イギリスの特使、ジョージ・マカートニーに清帝国の乾隆帝が要求した類いのことを現代によみがえらしたいのだ。
  マカートニー特使とイギリス使節団を従属国の朝貢使節として扱い、三跪九叩頭(三回跪き、九回頭を下げる)の礼を求めた類いのことを現代によみがえらせたいのだろう。要するに中国共産党はアメリカを抜いて世界の覇者になりたいのだ。
   中国は「一帯一路」政策をアジアとヨーロッパに推し進めている。19世紀に英仏など帝国主義国家が進めた帝国主義政策そのものだ。20世紀前半、欧米に追いつき追い越そうと必死に突っ走り、結局は帝国主義となり滅亡した日本の後を追っているようだ。
  中国共産党は最初は融資すると見せかけて、債務を重ねに重ねて破産寸前の開発途上国の港湾や重要戦略拠点を奪取する。笑みの奥に邪悪な真意が垣間見える。スリランカやアフリカ諸国がその餌食になった。そしてラオス政府は最近、中国と自国の間に新幹線を開通させた。中国が建設費用の7割を持ち、ラオスが3割を持ったが、その3割の大部分は中国からの利子の高い借款だ。ラオスが払えなくなると、中国共産党政府は必ず、ラオスの戦略的拠点を奪取するだろう。
   やっと中国共産党の真意を見抜いた国がある。バルト3国だ。エストニア、ラトビア、リトアニアだ。中国からは地政学的に遠い国々だ。中国の伝統的な戦略を見抜くのに時間がかかったのは無理はない。
   法のない国の行き着く先は侵略だ。国際法や法律を為政者の利益、国益追求の手段とする国の行き着く先は侵略だ。かつて日本の戦国時代、武田信玄公は「信玄法度」をつくる際、法律が自分より上にあることを認めた。これに対して中国の伝統は皇帝や国のトップの下に法律があるのだ。こんな伝統を受け継いできた国を信用できるはずがない。
   中国共産党は「台湾は中国の一部だ。内政干渉は許されない」と主張する。意識するとせざるとにかかわらず、「台湾問題」は中国共産党政府が追い求める「中華の偉大な復興=中国の世界支配」の手段に過ぎない。
   中国という権威主義国家は、歴史を見れば分かるように、台湾併合だけでは満足しないだろう。中国史から理解できるように、尖閣や琉球、そして東南アジアや朝鮮半島を”冊封体制”の下に置くだろう。否、世界を”冊封体制”の下に置くことを求めているのかもしれない。

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