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hiyamizu's blog

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ピーター・キャメロン「最終目的地」を読む

2009年06月16日 | インポート

ピーター・キャメロン Peter Cameron 著、岩本正恵訳「最終目的地」新潮クレスト・ブック、2009年4月発行を読んだ。原題は、“The City of Your Final Destination” 。

表紙の裏にはこうある。
南米ウルグアイの人里離れた邸宅に暮らす、自殺した作家の妻、作家の愛人と小さな娘、作家の兄とその恋人である青年。ナチスの迫害を逃れてきた先代が、ドイツ風の屋敷をたてたこの場所で、人生を断念したかのように静かな暮らしが営まれていた。そこへ突然、作家の伝記を書こういうアメリカの大学院生がやってくる。思いがけない波紋がよびさます、封印した記憶、あきらめたはずの愛-。全編にちりばめられたユーモアと陰翳に富む人物像、それぞれの人生を肯定する作者のまなざしが、深く暖かな読後感をもたらす。英国古典小説の味わいをもつ、アメリカの傑作小説。


この本の映画化“The City of Your Final Destination”が、ジェイムズ・アイヴォリー監督により完成しているようだ。真田広之が出演しているのに、配給が決まらず未公開らしい。このサイトにある映画の(小説と同じ)あらすじのいいかげんな訳が以下。 ( )は役者の名前


 

米国の若き大学院生オマー・ラザキOmar Razaghi (Metwally)が、最近亡くなったウルグアイの小説家ユルス・グントJules Gundの伝記を書くために相続人達の許可を得ようする。かれの積極的で有能なガールフレンドのディドラDeirdre(Alexandra Maria Lara)は、拒絶を取消してもらうよう積極的に行動するように彼に促す。彼は彼らの決心を変えてもらえるかもと希望を持ち、はるかウルグアイの田舎の彼らの家へ突然押しかける。・・・

グント一家は、草深く、蒸し暑いオチョ・リオスと呼ばれる広大な私有地にある2つの大きな古ぼけた家に住んでいる。

作家の未亡人キャロライン・グントCaroline Gund (いつものLaura Linneyと違いとげとげしい)はけして許可は与えないと繰り返し頑強に言う。

作家の兄アダム・グントAdam Gund (Hopkins)は逆の意見で、伝記だけが作家の名を残すことができるという。

作家の若い女主人アーデン・ラングドンArden Langdon (Gainsbourg)はキャロラインの側に立つ。そして、彼女は・・・。

オマーのさらなる二人の支持者は、グントの10歳の娘ポーシャPortiaと、アダムの事実上の伴侶ピートPete(真田広之)だ。



著者のピーター・キャメロンPeter Cameron は、1959年、アメリカ・ニュージャージー州生まれ。少年時代をイギリスで過ごす。ニューヨーク州ハミルトン大学卒業。1986年、短篇小説集「ママがプールを洗う日」でデビューし、高い評価を得る。長篇小説に「うるう年の恋人たち」「ウィークエンド」。2002年刊行の「最終目的地」はPEN/フォークナー賞およびロサンゼルス・タイムズ文学賞の最終候補になった。



訳者の岩本正恵は、1964年生まれ。東京外国語大学卒。翻訳家。主な訳書は、「巡礼者たち」エリザベス・ギルバート、「キス」キャスリン・ハリソン、「シェル・コレクター」アンソニー・ドーア 、「ノーホエア・マン」アレクサンダル・ヘモン、「世界の果てのビートルズ」ミカエル・ニエミ 、「石の葬式」パノス・カルネジス。
出版翻訳データベース」にインタビューコーナーがあって、岩本正恵さんが登場しているが、いかにも売れそうもない本、雑誌などの下訳、共訳から始めて、今があることが分かる。翻訳家で独り立ちするのは大変だ。



私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め)



原文もおそらくそうなのだろうが、訳文もすらすら読め、434ページとかなり厚い本だが、一気に読み終わった(実際は2日で)。筋立てはドラマチックなものではないし、次々と事件が起こるわけでもない。読むにつれ謎が深まり、引っ張られるのでもない。登場人物の魅力と、会話の中から次第に明らかになってくる人間関係に興味を引かれる。もちろん、結末も知りたくて、スラスラと読み続けてしまった。

すべての会話が生き生きとしていて、草深い田舎の古めかしい屋敷といった舞台装置も、個性的な人物を際立たせる。

優柔不断でいつもボーとしている主人公としっかりものの彼女とのやりとりがリアルで、作家の兄、妻、愛人3人の関係、個性が見事に描かれている。

厚い本だが、登場人物は、10名たらずで、キャラがはっきりしているので、いつも翻訳本で悩まされるカタカナ人名の混乱もなかった。

私には久しぶりの面白い小説だが、派手なところのないこの小説は万人向きなのか、私にはわからない。



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