酒井順子著『そんなに、変わった?』(講談社文庫、さ66-14、2015年11月13日講談社発行)を読んだ。
実は、この本、二度目なのに気づかずに読んで、ご丁寧に感想文まで書いて、どどめにアップしてしまった。著者紹介の本のリストをクリックして初めて同じ本を読んで、書いて、アップしてしまったと気がついた。
暇な人は、以下の前回の感想文と比較して欲しい。
裏表紙にはこうある。
“負け犬”ブームから早や十年。晩婚や晩産が当たり前の今、もはや贅沢となった看取られ死、企業化するEXILE、旧外観そのままの新歌舞伎座etc. キョンキョンの役柄が、独身中年から母親に変わるほどに、はたして自分は変わったのか? あおられる激変ムードに棹さして書き継いだ「週刊現代」人気連載第8弾。
「週刊現代」に連載した46編ほどのエッセイが並ぶ。
年をとってもキャラクター好き、という性質は極めて子供っぽいわけですが、しかしこれは、男性がいくつになってもベビースターラーメンとか魚肉ソーセージを愛好するのと、似ています。子供の頃に愛した対象は、そう簡単に手放すことはできない。大人になってもこっそり子供っぽいものを楽しむ背徳感がまた、いいのです。(「だって好きなんだもの」)
美しい文字を書く人を見ると、私は「この人は絶対に、賢くて良い人に違いない」と思います。・・・
しかし、そんな私の「美しい文字信仰」を崩したのは、あの木嶋佳苗被告でした。(「字ギレイ顔の女」)
嫁力が最高値まで鍛えられた時に、嫁という生き物は姑と化すのだと思います。嫁は、自分の息子が結婚した時に姑になるのではなく、嫁力を鍛えていくうちに、じわじわと姑化していくのではないか。(「嫁力と姑力」)
酒井順子さんの母親のママ友達の間では、〇〇園(浴風園)に申し込むのが流行っているという。
「何年か前に申し込んだ時は、何と十六年待ちですって言われたわ。『その時まで、お元気で!』ですって。老人ホームに入るのも、健康第一なのよ」(「高齢者は金次第、若者は顔次第))
「仕事大好き中年」みたいな人のFB上の発言の中で特に背筋がゾクッとする言葉は、「学び」と「気づき」だ。
「自分の能力に自分で限界を作らないこと、それが今日の学び」
とか、
「今日も大切な気づきをもらった」
みたいな言葉は、善き事がポイントのように貯めることができるという思い込みがあって落ち着かない。(「学び」と「気づき」)
初出:「週刊現代」2012年5月5日・12日合併号~2013年4月20日号に連載され、2013年6月単行本で刊行。
私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)
一つ一つは短いエッセイだが、言いたいことがシャープで、大げさに言えば社会学の論文にもなると思える。相変わらず、日常の経験するなかで「そうそう!」とうなずき、微笑んでしまうことがあぶり出されていて楽しい読物になっている。
歳のせいか、毒が薄れ、口の悪さがマイルドになってはいるが、エッセイの中の一分野の達人と思う。特に素晴らしいと思う作品はないが、70点をコンスタントに獲得しているのは立派。
酒井順子(さかい・じゅんこ)
1966年東京生まれ。立教女学院在学中から雑誌にコラムを執筆。
立教大学社会学部観光学科卒。博報堂入社。3年で退社。
2003年『 負け犬の遠吠え』で婦人公論文芸賞・講談社エッセイ賞受賞。
『女も、不況?』『儒教と負け犬』『もう、忘れたの? 』『 先達の御意見』『ズルい言葉』『泡沫日記 』『ほのエロ日記 』、『そんなに、変わった?』(前回分)、『中年だって生きている』他