沢木耕太郎『貧乏だけど贅沢』(文春文庫さ2-18、2012年1月10日文藝春秋発行)を読んだ。
裏表紙にはこうある。
いきなり空港へ行ってから、そこで初めて目的地を選び、切符を買うと語る井上陽水。群ようこのアメリカ初体験は下着モニターだった。高倉健が理想とする死に場所とは……。人は何故旅をするのか。何故旅に惹かれるのか。常に考え続ける著者が、旅における「贅沢な時間」をめぐって十人と語り尽くした対談集成。解説・此経啓助
森の少女とカジノの男(井上陽水)
陽水がすごく好きだったり、ちょっと避けているものは大体セクシュアル。プリンス、ローリングストーンやジョン・レノンはセクシャルで、ポール、クランプトンはそうではない。セクシャルな人は、欠落しているところがあって、それを補おうとするとセクシャルになる。
贅沢な旅(阿川弘之)
戦後、洋上原爆実験の標的にされて沈められた軍艦長門の墓場に行くとき、乗った400トンの船が漁船風で客室がなくてデッキで波しぶきに打たれ、毎晩リュックを枕に寝た。
百日のクルーズに50着のドレスを持ち込む女性がいる。同じ船会社の船に何回、何十回乗ったかという表彰があるが、老人ホームのように、ずっと乗りっぱなしの人がいる。
十年の後に(此経啓助) 此経啓助(これつね・けいすけ):1942年東京都生まれ。日本大学芸術学部教授。インドのブッダガヤに7年滞在。
死に場所を見つける(高倉健)
“健さん”が一番好きな場所はハワイ。人が温かいから。でも最近は人が多すぎて西海岸へ行く。今は気持ちが和むポルトガルへ行きたい。
旅を生き、旅を書く(高田宏) 高田宏1932年京都府生まれ。作家。
出発の年齢(山口文憲) 山口文憲法(ふみのり)1947年静岡県生まれ。エッセイイスト。べ平連の脱走兵事件で逮捕。初めて外国体験をするのは26歳がいい。
終わりなき旅の途上で(今福龍太) 1955年東京都生まれ。東京外国語大学院教授。文化人類学者。
だから旅はやめられない(群ようこ) むれ・ようこ、1954年東京都生まれ。作家。年とったらマカオでボーッとしていたと思っていた。ばかにしていたハワイに行ったら、空と海がきれいなハワイがいいと思った。
20歳のときアメリカニュージャージーに3ヶ月行った。下着のモニターでほぼ監禁状態。条件は身体のサイズと、秘密を守るために英語が堪能ではないこと。
ラテンの悦楽(八木啓代) 1962年大阪府生まれ。シンガー、ブック・ライター。メキシコに家を持つ。
博奕的人生(田村光昭) 1944年生まれ。プロ雀士。
「勝てばツキで、負ければ実力」勝ち方は永遠に未知で、負け方ははっきりしている。
単行本は1999年文藝春秋より刊行。
私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)
対談相手の人生が変わっていて面白い。沢木耕太郎の上を行く人たちで、沢木が必死こいて、あれもこれもと言い立てるのがオモロイ。
アメリカでは20代、30代で道を外れてからまた戻るルートがあって、優れた人も多いとの話もあったが、日本のように道を外れた人は戻るルートがないと、必死になって変わったルートを探すので、それもまたオモロイかなと、他人事ながら思ってしまう。
沢木耕太郎(さわき・こうたろう)
1947年東京大田区生まれ。横浜国大経済学部卒。ノンフィクション作家、エッセイスト、写真家。
卒業後、富士銀行の初出社日に退社。
1970年『防人のブルース』でデビュー。
1979年『テロルの決算』で大宅壮一ノンフィクション賞
1982年『一瞬の夏』で新田次郎文学賞
1985年『バーボン・ストリート』で講談社エッセイ賞
2013年『キャパの十字架』で司馬遼太郎賞 を受賞。
スポーツや旅を題材とするノンフィクション、小説などが多く執筆。