hiyamizu's blog

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貫井徳郎『慟哭』を読む

2021年11月21日 | 読書2

このところ読書記録が途絶えているが、超長編の4巻本を読んでいるためだ。ようやく2巻を終わったので、一息ついて、貫井さんの気になっていた『慟哭』を読んで、書いた。

 

貫井徳郎著『慟哭(どうこく)』(創元推理文庫Mぬ11、1999年3月東京創元社発行)を読んだ。

 

裏表紙にはこうある。

連続する幼女誘拐事件の捜査は行きづまり、捜査一課長は世論と警察内部の批判をうけて懊悩する。異例の昇進をした若手キャリアの課長をめぐり、警察内に不協和音が漂う一方、マスコミは彼の私生活に関心をよせる。こうした緊張下で事態は新しい方向へ!幼女殺人や怪しげな宗教の生態、現代の家族を題材に、人間の内奥の痛切な叫びを、鮮やかな構成と筆力で描破した本格長編。

 

本作品は貫井徳郎のデビュー作で、同時に代表作の一つ。

 

構成は1、2、3・・・と別れていて、「1、3、5・・・」の奇数章は新興宗教に救いを求める「彼」=松本の視点で描かれ、「2、4、6・・・」の偶数章は事件の陣頭指揮をとる警視庁捜査一課長「佐伯警視」視点で描かれている。

 

娘を亡くし空虚な心を持つ彼(松本)は新興宗教にのめりこんでゆく。次第に黒魔術を妄信し、依代(よりしろ)として少女の身体を求めていく。その姿は偶数章での犯人の姿だと思え、奇数章の松本は、どこで本編の偶数章にかかわってくるのかと思いながら読み進めていくことになる。

 

警察庁に毎年20人ほどしか採用されないキャリアは、一般警察官が20年かかる警視に27,8歳でなる。佐伯はそのキャリアで、その上、元法務大臣の隠し子という噂で、彼の妻は警察庁長官の一人娘だった。当然、多くのノンキャリの警察官からも、キャリアからも風当りは強かった。

 

昨年12月に行方がわからなくなっていた斎藤奈緒美ちゃんの遺体が平成3年1月発見された。電話を受けた捜査一課の40歳過ぎの丘本警部補は課長の佐伯に報告したが、同じ年頃の女の子を持つ佐伯の顔は峻烈なままだった。

佐伯の周りには、誤解と偏見が満ちている。それなのに、佐伯自身はそれを解消しようとはしない。丘本は佐伯の頸(つよ)さを哀れにすら感じた。(p74)

 

多くの少女が行方不明になったままで、佐伯は警察内外から厳しく責め立てられる。

 

 

私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで、最大は五つ星)

 

面白く読め、著者にすっかり騙されて、私も最後にびっくりした多くの読者の一人となった。

新人とは思えない重厚見事な書きっぷりだ。

 

三ッ星にした理由は2つ。

一つは、詳しくは書けないが、奇数章と偶数章に分けて書いていて、そのトリックがルール違反ではないのだが、「それはないよ」を思わせる点。(ヒントを最後に、ネタバレ・白字で記述(カーソルを置けば黒字になる))

もう一つは、奇数章のインチキ宗教の記述が長いこと。私自身は、このようなことはバカにしきっていて、松本視点とはいえ、正面切って書かれると読む気がしなくなるという個人的理由だ。

 

 

貫井徳郎(ぬくい・とくろう )の略歴と既読本リスト

 

 

眦(まなじり)、蠱(まじない)、窘(たしな)める

依代(よりしろ):神霊が依り憑く(よりつく)対象物のこと

誰何(すいか)の声もなく

瞋恚(しんい):怒り、仏教用語で、自分の心に逆らうものを怒り恨むこと。

 

 

 

 

 

 

 

以下、ネタバレ。

偶数章の最後で捜査一課長の佐伯は自分の娘が4人目の犠牲者となってしまう。時系列的に、偶数章の最後から奇数章の冒頭までには空白期間があり、その間の事はまったく書かれていないのだが、佐伯は辞職し、離婚し、名前を松本に戻した。

以上

 

コメント
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