hiyamizu's blog

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柚月裕子『合理的にあり得ない』を読む

2017年10月01日 | 読書2

 

 柚月裕子著『合理的にあり得ない 上水流涼子の解明』(2017年2月14日講談社発行)を読んだ。

 

 講談社の宣伝文句は以下。

上水流(かみづる)涼子は、はめられて弁護士資格をはく奪され、「上水流エージェンシー」という公にできない揉め事を解決する事務所を開いた。相棒は、貴山伸彦という、東大卒、IQ140で、全てに合理的、クールな男で、賞賛は軽く受け流し、叱責は重く受け止める。

 二人が5つの「あり得ない」依頼を解決した短篇集。

 

確率的にあり得ない

 建設会社の二代目経営者本堂仁志が、数々の不思議を見せられて、未来が見えるという高円寺裕也の言うがままになってしまう。心配した人から依頼を受けた涼子と貴山は、高円寺が会社と5千万円の経営コンサルティング契約を結ぼうという場に乗り込み、トリックを解き明かし、退散させる。

 

合理的にあり得ない

 バブルのときにアコギな稼ぎで大もうけし、上手に逃げ切った神崎恭一郎は株の配当・利回りだけで年2千万円の収入があり、悠々自適だ。ところが20歳の息子・克哉は引きこもりでり、信託銀行からの電話で、妻の朱美が2千万ものお金を無断で使っていたと発覚する。神崎は興信所へ依頼し、朱美は綾小路緋美子という詐欺師にだまされているとわかる。神崎は綾小路を呼び出して追及するが・・・。

 

戦術的にあり得ない

 暴力団・関東幸甚一家総長の日野照治と若頭・米澤健一が上水流涼子の事務所に依頼で訪れる。横山一家の財前総長との賭け将棋で、日野は最近急に負けが込んできて、相手は不正な手段を使っているに違いないという。5勝5敗での最終対局の掛け金は1億円で、成功報酬は1割、負けたら0円。東大将棋部主将、アマ5段の貴山は、過去の棋譜から財前の不正手段を見抜き、奇襲戦法・鬼殺しを日野に授け・・・。

 

心情的にあり得ない

 巨大グループの会長・諫間(げんま)の依頼は、長男・幸人(ゆきと)の娘・久実を連れ戻してほしいというもの。恋人のホストあがりの広瀬智哉と無理やり別れさせようとしたところ、家出してしまったらしい。

6年前、この諫間は社内反対派閥の顧問弁護士だった涼子をはめて、弁護士資格はく奪へ追いやったのだった。久実を見つけた涼子は、お金を捨てて、恨みを晴らすか、それとも・・・。

 この章で、涼子と貴山のとんでもない出会いも判明する。

 

心理的にあり得ない

 野球賭博を生業とする予土屋(よどや)が、社長の息子で阪神ファンの天見(あまみ)を徐々に賭博地獄に取込んでいく。涼子の事務所を訪れた桜井由梨が、自殺した父の手帳の謎のメモ欄の秘密を調べて欲しいと依頼する。父・桜井喜一は遊び人で、裕福な家を破産させ自殺したのだ。野球賭博の複雑な仕組みが解説される。

 

初出:「メフィスト」2012VOL.3, 2014VOL.2, 2015VOL.1, 2016VOL.1

 

 

私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

 

 柚月裕子さんにしては珍しく平易で気楽な作品。寝転んで面白く読める。

著者も「自分では「いままで発表した小説の中で一番エンターテインメント色が強い作品」だと思っています。」と講談社BOOK倶楽部で語っている

 

 事件の始まりは丁寧に語り、面白そうに始まるのだが、謎はあっという間に解決し、あっけない話が多い。

 やたら優秀な貴山の活躍が目立ち、いかにもいい女の上水流涼子は一体なにをしたのだろうかという話も多い。

 

 

柚月裕子 経歴&既読本リスト

 

 

 

 五徳とは、儒教における五常の徳、仁、義、礼、智、信のことだ。

コメント
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