hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

長嶋有『もう生れたくない』を読む

2017年10月09日 | 読書2

 

 長嶋有著『もう生れたくない』(2017年6月28日講談社発行)を読んだ。

 

 講談社BOOK倶楽部の宣伝文句はこうだ。

「誰にも言わないままの言葉をいつか私はしたためよう。亡くなった人に、友達だと思っている人に。ネットに載せて読めるようなのではなくて、そう、空母の中の郵便局にたまる手紙のように」――。
マンモス大学の診療室に勤める春菜、ゲームオタクのシングルマザー・美里、謎めいた美人清掃員の神子。震災の年の夏、「偶然の訃報」でつながった彼女たちの運命が動き始める――。 スティーブ・ジョブズ、元XJAPANのTAIJIなど有名人から無名の一般人、そして身近な家族まで、数々の「訃報」を登場人物たちはどこで、どんなふうに受けとったのか。誰もが死とともにある日常を通してかけがえのない生の光を伝える、芥川・谷崎賞作家の新境地傑作小説!

 

 章は、2011年7月、2012年10月、2013年6月、2014年4月の4つの時期から成っていて、そこに実際の有名人(実名)の訃報15件と登場人物2人の訃報が盛り込まれ、他の登場人物たちの反応、というよりほぼ無反応な様子が描かれる。

 

 

 首藤春奈は、理髪店や郵便局があるA大学の学内診療室の受付だ。新聞でTAIJI死亡の新聞記事を見て、「誰だっけ、確かX JAPANの人だ」と思う。夫からメールが来て、返事を打つ。

 総務部の小波美里は、元夫のラジオアナウンサー・名村宏と遊んだセガサターンのX JAPANのゲームで最初にあったのがTAIJIだったような気がした。

 清掃員の根津神子(みこ)は学食で、大雪山系のトラウシ山登山者8名が亡くなって三回忌の新聞記事を見る。

 

 A大学で働く春奈、美里と、根津神子が日常の平凡な生活を送る中に有名人の訃報が入る。

 その他、学生同士で同棲している安藤素成夫とレンタルビデオ屋でアルバイトする小野遊里奈、同じ学生でバイトの美少女・蕗山フキ子、女たらしの「現代サブカルチャー論」の非常勤講師の布田利光、美里と宏の息子・紬(つむぎ)などが登場する。

 

初出:「群像」2017年1月号掲載作を加筆改稿。

 

 

私の評価としては、★★(二つ星:読めば)(最大は五つ星)

 

 ゆるい、ゆるい話で、私の感性には響かない。おまけに、私には縁のないゲームや、レンタル映画の話が続き、やっとのことで読み終えた。

 

 実在の人の訃報が実名で挿入されるのも変わっているが、そのときの社会の反応や、登場人物の反応もほとんど描かれず、何のための挿入か分からない。これが新規性??

 

「僕の小説には固有名詞がよく出てくると指摘されますが、実際の日常生活が固有名詞だらけだから自然とそうなっているだけ。それが僕の特徴というならば、実際の有名人の訃報を連発する書き方は僕の独壇場だなと思って(笑)」と著者は「小説丸 第108回」で語っている

 

 

 

長嶋有(ながしま・ゆう)
1972年埼玉県草加市生れ。北海道育ち。東洋大学第2文学部国文学科卒業。
シャチハタ勤務後、
2001年「サイドカーに犬」で文学界新人賞受賞、芥川賞候補
2002年「猛スピードで母は」で芥川賞受賞
2007年『夕子ちゃんの近道』で大江健三郎賞受賞
2016年『三の隣は五号室』で谷崎潤一郎賞受賞
その他、『ジャージの二人』、エッセイ『安全な妄想』など
ネット・コラムニスト「ブルボン小林」としても活動

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