hiyamizu's blog

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マイ・シューヴァル&ペール・ヴァールー『刑事マルティン・ベック 笑う警官』を読む

2016年08月30日 | 読書2

 

 

マイ・シューヴァル&ペール・ヴァールー著、柳沢由美子訳『刑事マルティン・ベック 笑う警官』(角川文庫シ3-24、18161、2013年9月25日発行)を読んだ。

 

裏表紙にはこうある。

反米デモの夜、ストックホルムの市バスで八人が銃殺された。大量殺人事件。被害者の中には、右手に拳銃を握りしめた殺人捜査課の刑事が。警察本庁殺人捜査課主任捜査官マルティン・ベックは、後輩の死に衝撃を受けた。若き刑事はなぜバスに乗っていたのか? デスクに残された写真は何を意味するのか? 唯一の生き証人は、謎の言葉を残し亡くなった。捜査官による被害者一人一人をめぐる、地道な聞き込み捜査が始まる―。

 

北欧ミステリーの親というべきマイ・シューヴァル&ペール・ヴァールーの「刑事マルティン・ベック」シリーズ10作中でもっとも有名な第4作。1970年代、英訳版からの邦訳があるが、昨年から、スウェーデン語から直接翻訳されたシリーズ作品が順次翻訳発行されている。

アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞受賞作。第1作は『ロゼアンナ』、第2作は『煙に消えた男』。

 

冒頭のヴェトナム戦争反対のデモ時代は1968年2月に実際にストックホルムで行われ、米国は2年間大使を引き上げた。物語ではその夜、67個の銃弾が発射され、2階建て路線バスの運転手と乗客合計9人が何者かに殺された。病院に運び込まれた1名も意味不明な言葉を残し死ぬ。乗客の中の1名は、右手に拳銃を握りしめたマルティン・ベック警視の部下・ステンストルムだった。

 

大量虐殺犯人は誰か? 若き刑事はなぜバスに乗っていたのか? 隣の看護師との関係は? 唯一の生き証人だった男の意味不明な言葉の謎は? 被害者全員が死亡したため、捜査は被害者一人ひとりの背景を調べ、地域を一戸一戸まわる地道な聞き込み捜査から始まるが、遅遅として進まない。

 

 

私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

 

 冒頭のバス乗車の全員が殺され、直接手がかりがないところから、地道な捜査で少しずつ犯人に迫っていく。しかも死亡者の中に前作までたびたび登場していた若き警官がいたという驚きの始まり方。

 

底流にある事件と今回の事件が見事に結びつき、殺人の動機がなるほどと思う。犯人逮捕の瞬間が衝撃的。

 

 

マイ・シューヴァル Maj Sjowall

1935年ストックホルム生。雑誌記者・編集者を経て65年から10年間ペール・ヴァールーと“マルティン・ベック” シリーズを10作書き上げる。

 

ペール・ヴァールー Per Wahloo

1926年スウェーデン南部西海岸ハランド県ツール―生。新聞記者を経て作家生活に。62年、執筆中の本の編集者マイ・シューヴァルと出会い、63年から共同生活。同時彼は結婚していたがその後離婚が成立。マイとのあいだに男子が二人いる。75年没。

 

マルティン・ベック シリーズの登場人物

ウィキペディアのマルティン・ベックを参考にしました。)

 

 

マルティン・ベック

スウェーデンのストックホルム警視庁の殺人課主任。

当初警部で、のち警視。年齢は40代から50代。この作品では結婚していたが(妻インガ、長女イングリット、長男ロルフ)、のちに離婚。

 

レンナルト・コルベリ

ストックホルム警察殺人課警部。

シリーズ初期ではベックとコンビ。過去の事故から拳銃を所持しない若手刑事の礼儀作法にもうるさい。妻グンとの間に幼い娘のボディルと息子ヨアキムがいる。

 

フレドリック・メランダー

ストックホルム警察殺人課警部。

後に殺人課から離れるが、記憶力抜群でデータベースとしてその後も度々登場。酒を飲まず、節約家。妻をこよなく愛し、痩せ型でヘビースモーカー。

 

オーケ・ステンストルム

ストックホルム警察殺人課警部補。

若手の刑事で、尾行の名手。

 

エヴァルド・ハンマル

ストックホルム警察警視長。

ベックの上司。叩き上げで、政治の圧力を嫌い、部下にも強要しない。シリーズ途中で定年退官。

 

 

「笑う警官」

死亡者リスト

グスタフ・ベングトソン:48歳、バスの運転手、狙われる理由がない

ヒルデュル・ヨーアンソン:68歳、年金暮らしの女性、娘の尋問はするが、問題ないだろう

ヨーアン・シュルストルム:52歳、自動車整備工場の主任

アルフォンス・シュヴェリン:43歳、貿易会社を倒産させてから肉体労働、唯一の生き証人だった。

モハンメド・ボウスィ:36歳、アルジェリア人、レストランの皿洗い、政治に関心なし

ブリット・ダニエルソン:28歳(?)、看護師、帰宅途中、ステンストルムとの関係なしか?

アッサーソン:会社経営だが、脱税で2回有罪、風紀違反で3回刑務所へ、愛人宅へ行く途中

ステンストルム:行動理由を署に報告せずに何を調べていたのか、なぜ銃を携帯していたか不明。

顔のない男:35~45歳、麻薬常用者、身元不明、なぜ乗車か不明、多額な現金所持

 

 

グンヴァルト・ラーソン

ストックホルム警察殺人課警部。

偏屈者。当初コルベリと仲が悪いが、のち意気投合。容疑者に暴力を振るい白状させることがある。

実家は貴族で裕福。衣服や車など高級品好み。海軍に勤務後、商船で世界を巡っていた。なお、クリスチャンソンとグヴァントらソルナの警察官の天敵でもある。「ロゼアンナ」に登場する同名の警視とは別人。

 

エイナール・ルン

ストックホルム警察殺人課刑事。

グンヴァルトの親友。赤鼻のルンと呼ばれ、鼻をいつもハンカチでこすっている。悪筆かつ難解な文章を書く。ラップランド出身でサーメ人の妻と息子が1人。

 

エーク

警察本庁殺人捜査課捜査官

 

オーサ・トレル

オーケ・ステンストルムの恋人。婦人警官となる。

 

イェルム

ストックホルム警察鑑識課主任

 

ペール・モンソン

マルメ警察署警部。

南部スコーネ弁の地方警察のベテラン。探し物の名人。禁煙のために爪楊枝をよく噛んでいる。妻とは別居。

 

ウルフ・ノルディン

スンズヴァル警察捜査官

 

ベニー・スカッケ

ストックホルム警察殺人課警部補。

若手の刑事。シリーズ途中でマルメ警察署のモンソンの部下となるが、ストックホルム警察に復帰。

 

スティーグ・マルム

ストックホルム警察警視長。

ハンマルの後任で、ベックの上司。官僚上がり。警察の実務経験が無い。

 

ニッセ・ユーランソン:ニルス=エリック・ユーランソン、38~39歳、定職なし、麻薬常習者、常に金回り良し 

ブロンド・マーリン:マグダレーナ・ロセーン、金髪の大女、ユーランソンと付き合っていた

オルソン:46歳、道路公団監督官、

ビュルン・フォシュベリ:48歳、あやしい会社を経営していたが、建築資材会社社長の娘と結婚、資産家として成功、テレサ事件に関連

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