hiyamizu's blog

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マイ・シューヴァル&ペール・ヴァールー『刑事マルティン・ベック 煙に消えた男』を読む

2016年08月28日 | 読書2

 

 

マイ・シューヴァル&ペール・ヴァールー著、柳沢由美子訳『刑事マルティン・ベック 煙に消えた男』(角川文庫シ3-22、19671、2016年3月25日発行)を読んだ。

 

裏表紙にはこうある。

夏休みに入った刑事マルティン・ベックにかかってきた一本の電話。「これはきみにしかできない仕事だ」。上司の命で外務大臣側近に接触したベックは、ブダペストで消息を絶った男の捜索依頼を受ける。かつて防諜活動機関の調査対象となったスウェーデン人ジャーナリスト。手がかりのない中、「鉄のカーテンの向こう側」を訪れたベックの前に、現地警察を名乗る男が現れる―。警察小説の金字塔シリーズ・第二作。

 

 今流行の北欧ミステリーの親というべきマイ・シューヴァル&ペール・ヴァールーの「刑事マルティン・ベック」シリーズの第1作『ロセアンナ』に続く第2作。第4作の『笑う警官』がもっとも有名だが、シリーズ全10作全部が既に1970年代に英訳版から邦訳されている。昨年から、スウェーデン語から直接翻訳されたシリーズ作品が順次翻訳発行されている。

 

 シリーズはスウェーデンの首都ストックホルムを舞台にした連作。主人公のマルティン・ベックは警察本庁刑事殺人課勤務で、スウェーデンでもっとも優秀な犯罪捜査官だと評されるが、いつも鼻風邪を引き、仕事中毒で夫婦仲は冷え切り、まっすぐ家へ帰りたくない。気のいい友人で有能なコルベリ、記憶の達人メランダー、海軍上がりで尊大なラーソンなどの同僚とのチームワークで地道な捜査を続け、事件を解決していく。

 

 第2作の『煙に消えた男』の舞台は、当時は「鉄のカーテンの向こう側」と呼ばれていたハンガリーのブダペスト。ストックホルム群島で1か月の休暇の初日、ベックは電話で呼び出され、消えた男の行方を探すためにたった一人で旅立った。男は有力週刊誌の記者でアルフ(アッフェ)・マッツソン。影響が大きいため秘密裡の調査になるという。

 

 別れた妻から3名の飲み友達の名前を聞き、マッツソンのアパートを調べ、パブで仲間の編集者モリーンから話を聞き、重要な情報は何一つ得られないままブダペストへ飛んだ。翌日、ハンガリー駐在スウェーデン大使館の書記官と話、彼が泊まったホテルのフロント係から彼から行き方を聞かれた住所を聞き出す。スウェーデンに電話して相棒のコルベリが新聞から調べた、彼の彼女が水泳選手アリ・ブックとの情報を得る。しかし、アリと会ったが、彼を知らないと言った。ホテルに戻ると、ハンガリーの警察官ヴィルモス・スルカが訪ねて来て互いに探り合うだけの話し合いをし、一日が終わる。

 

 ここまでで、約半分。地味な調査の連続が、一気に動き出す。ベックはアリから誘惑され、謎の男から襲撃されるが、スルカに救われ、・・・。

 

 

私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

 

 

当時流行のスパイ小説のような派手なアクションも天才的な謎解きもなく、地味な捜査活動をひたひたと描く。もつれた糸を手繰るように、少ない情報を一つ一つ確かめ、ときに行き止まりで無駄になっても、もとに戻りひたすら進む。おそらく実際の警察活動もこんなに非効率なものなのだろう。リアルな(おそらく)警察小説である。

 

北欧・東欧諸国の地名、個人名がややこしく、付箋を付けながら、前をくくって確かめながら読み進めた。KindleにX-Rayという検索機能があり、登場人物や用語が作品のどこにあるかがひと目でわかり、すぐそこへ飛べるらしい。さすが電子書籍。

 

ハンガリーのブダペストの光景が巧みに描写されている。冷戦時代の東側の光景であるが、現在ブダストと共通する部分もあり楽しめた。

 

 

 

 

マイ・シューヴァル Maj Sjowall

1935年ストックホルム生。雑誌記者・編集者を経て65年から10年間ペール・ヴァールーと“マルティン・ベック” シリーズを10作書き上げる。

 

ペール・ヴァールー Per Wahloo

1926年スウェーデン南部西海岸ハランド県ツール―生。新聞記者を経て作家生活に。62年、執筆中の本の編集者マイ・シューヴァルと出会い、63年から共同生活。同時彼は結婚していたがその後離婚が成立。マイとのあいだに男子が二人いる。75年没。

 

マルティン・ベック シリーズの登場人物

ウィキペディアのマルティン・ベックを参考にしました。)

 

 

マルティン・ベック

スウェーデンのストックホルム警視庁の殺人課主任。

当初警部で、のち警視。年齢は40代から50代。結婚していたが(妻インガ、長女イングリット、長男ロルフ)、のちに離婚。

 

レンナルト・コルベリ

ストックホルム警察殺人課警部。

シリーズ初期ではベックとコンビ。でっぷりしていて走るのが苦手。世間知のたけている。若手刑事の礼儀作法にもうるさい。妻グンとの間に幼い娘のボディルと息子ヨアキムがいる。

 

フレドリック・メランダー

ストックホルム警察殺人課警部。

記憶力抜群でデータベースとしてその後も度々登場。酒を飲まず、節約家。妻をこよなく愛し、痩せ型でヘビースモーカー。後に殺人課から離れる。

 

オーケ・ステンストルム

ストックホルム警察殺人課警部補。

若手の刑事で、尾行の名手。

エイナール・ルン

ストックホルム警察警察官。

辛抱強いベテラン。北部出身。

 

 

エヴァルド・ハンマル

ストックホルム警察警視長。

ベックの上司。叩き上げで、政治の圧力を嫌い、部下にも強要しない。シリーズ途中で定年退官。

 

 

「煙に消えた男」

 

アルフ(アッフェ)・シックスティン・マッシソン

スウェーデン人ジャーナリスト。ブダペストで行方不明となる。

 

スヴェン=エリック・モリーン

ジャーナリスト。アルフ・マッシソンの親友。

 

オーケ・グンナルソン

モータジャーナリスト

 

ベングト・エイラート・ユンソン

ジャーナリスト。酒を飲んで喧嘩してアルフ・マッシソンを傷つけ警察に連行される。

 

アリ・ブック

ブダペストに住む女性水泳選手

 

テッツ・ラーデベルゲル

ドイツ人ツアーコンダクター、ベッグを襲う。

 

テオドール・フルーベ

ドイツ人ツアーコンダクター、ベッグを襲う。

 

ヴィルモス・スルカ

ハンガリーの警察官

 

 

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