hiyamizu's blog

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藤野恵美『ハルさん』を読む

2014年01月18日 | 読書2

藤野恵美著『ハルさん』(創元推理文庫Mふ51、2013年3月東京創元社発行)を読んだ。

裏表紙にはこうある。
(瑠璃子さん……今日はね、ふうちゃんの結婚式なんだよ。まさか、この僕が「花嫁の父」になるなんて……)結婚式の日、ハルさんは思い出す、娘の成長を柔らかく彩った五つの謎を。心底困り果てたハルさんのためにいつも謎を解き明かしてくれるのは、天国にいる奥さんの瑠璃子さんだった──児童文学の気鋭が、頼りない人形作家の父と、日々成長する娘の姿を優しく綴った快作!


冒頭は、ハルさん(春日部晴彦)が亡き妻瑠璃子さんの墓参りを終えて、一人娘ふうちゃん(風里)の結婚式に向かうシーンで始まり、タクシーの中でふうちゃんが幼稚園のときのお天気雨(狐の嫁入り)に驚いたときの回想シーンとなる。そして、そのまま幼稚園時代の第1章「消えた卵焼き事件」が始まる。
以下、章の終わりで結婚式直前のシーンに戻り、回想シーンから次の章では、ふうちゃんが小学生、中学生と章を追う毎に成長し、次の章に入っていく。そして最終章では、ふうちゃんは大学生で、やがて結婚式の場面で最後になる。



第一話 消えた卵焼き事件
幼稚園生のふうちゃんは、探偵の衣装を作ってと言う。仲良しの隆君のお弁当の中の卵焼きがなくなり、ふうちゃんが疑われているという。ハルさんは、瑠璃子さんの天の声に導かれて、事件を解決す。

第二話 夏休みの失踪
小四のふうちゃんは、植物図鑑を欲しがったり、植物や自然に関心があるようだ。「自分に合わない場所にいるのは、大変?」とつぶやき、しばらく後に、ふうちゃんは突然いなくなってしまった。

以下、第三話「涙の理由」では、ふうちゃんのいじめ疑惑が、第四話「サンタが指輪を持ってくる」では高校生のふうちゃんが花屋のバイトし、怪我して入院し、その病院の消灯時間の謎が明かされる。第五話「人形の家」ではハルさんの作った人形の取り換え事件が起こる。

2007年発行の単行本の文庫化



私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

高校生向けのようで、気楽に軽く楽しく読める。殺人などもなく、悪人の登場せず、謎も些細な日常ミステリーで、良い意味で“ゆるい”小説だ。
主体は、人付き合いが苦手で人形作りに熱中する父と、歳と共に父と距離を置く娘との愛情物語で、このあたりの気持ちと言葉のやりとりは良く書けていて心が温かくなる。



藤野恵美(ふじの・めぐみ )
1978年大阪府生まれ。児童文学界注目の俊英だそうだ。
2004年に『ねこまた妖怪伝』でジュニア冒険小説大賞を受賞しデビュー。
主な作品は、〈怪盗ファントム&ダークネス〉シリーズ、『ゲームの魔法』
その他、『紫鳳伝 王殺しの刀』『七時間目の怪談授業』『七時間目の占い入門』『妖怪サーカス団がやってくる!』など。

本書のあとがきで語っている。
度重なる夫のDVに耐えかねたのだろう、著者の母親が子供たちの眠る家に火をつける事件を起こした。父親が暴力をふるう人だったからこそ、その反動として、ハルさんというキャラクターを設定し、有り得たかもしれない幸福な子供時代を描いた。子供時代の家庭環境からまっとうに子育てできる自信がなく、子供を持つことなどないだろうと思っていたが、この作品を書いたことで心境に変化があり、今、3歳の息子がいるという。


コメント
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