hiyamizu's blog

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島田裕巳『なぜ八幡神社が日本でいちばん多いのか』を読む

2014年01月16日 | 読書2

島田裕巳著『なぜ八幡神社が日本でいちばん多いのか』(幻冬舎新書326、2013年11月発行)を読んだ。

裏表紙にはこうある。
日本全国の神社の数は約8万社。初詣、宮参り、七五三、合格祈願、神前結婚……と日本人の生活には切っても切り離せない。また伊勢神宮や出雲大社などの有名神社ばかりでなく、多くの旅程には神社めぐりが組み込まれている。かように私たちは神社が大好きだが、そこで祀られる多種多様な神々について意外なほど知らない。数において上位の神社の中から11系統を選び出し、その祭神について個別に歴史と由緒、特徴、信仰の広がりを解説した画期的な書。


全国の神社数 平成22(2010)年版『宗教年鑑』文化庁宗務課による
 86,440社   Cf. 仏教寺院は82,346寺
街角にひっそり、あるいは企業などが屋上に祀るなど、宗教法人として認証を受けていない「小祠」を加えると14万から15万社という人もいる。
明治時代に「神社整理」が行われ、複数の神社を一つに合祀し、19万3千社が11万余りに減った。

八幡信仰 7817社 八幡神社、八幡宮、若宮神社
八幡神は「古事記」「日本書紀」といった日本神話には登場しないで、歴史の舞台に忽然と登場する。八幡神はもともと新羅の神であった可能性が高い。
その後、八幡神は応神天皇と集合し、皇祖神となった。8世紀の初めの時点で宇佐に祀られた八幡神が朝廷にとってかなり重要な存在になっていた。宇佐八幡宮、そして岩清水八幡宮と八幡信仰が広がり、源氏、足利氏、徳川氏の氏神として武士の崇敬を集めた。
八幡神は八幡大菩薩となり仏教の仏ともなり、近世まで続く神仏習合の時代の象徴となった。そして、各地で一般民衆が八幡神を勧請して、地域の氏神として祀った。

伊勢信仰 4425社 神明社、神明宮、皇大神社、伊勢神宮
伊勢神宮(正式には「宗教法人神宮」)は、皇室の祖先とされる天照大御神を祀る内宮(「皇大神宮」)と、豊受大御神を祀る外宮(「豊受大神宮」)と、別宮、摂社、末社、所管社など125社からなる。
伊勢神宮の原型にあたるものは、当初は大和にあり、近江国、美濃国を経て現在の伊勢国に移った。

天神信仰3953社 天満宮、天神社、北野神社
歴史上の人物、菅原道真を神とする。人を神として祀るのは、生前の偉大な働きを顕彰する場合と、恨みを持って亡くなった人物の祟りを鎮める場合がある。道真は異例ともいえる大出世し、突然左遷された。そして死後、災厄が続き、祟り神、怨霊神となったが、のち生前の行いの評価から、学問の神、書道の神となった。

稲荷信仰 2790社 稲荷神社、宇賀神社、稲荷社
摂社、末社や街中の小詞を数えれば膨大となり、稲荷社が一番多くなる。
渡来人の秦氏が伊奈利と呼ばれる穀物の神を祀っていた。当初は本殿がなく、「神体山」と呼ばれる山や、神が鎮座する場所「磐(いわ)座(くら)」が御神体だった。



私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

さらっと読んで、神社の種類、由来や、祭神について一応頭に入れるには適当な本だと思う。そのために、もう少し簡潔に書いて欲しかったが。

タイトルの「なぜ八幡神社が日本でいちばん多いのか」という疑問に明確には答えていない。上に書いたように複合的原因なのだからしかたないのだが。この例のように、不明快な話、諸説併記が続くので、くたびれてしまう。長い時間の中で、神仏習合、離合、合祀を繰り返し神社の歴史は複雑だ。大きな流れだけとらえようとする著者に試みは評価できるのだが。

この本では、祭神、古事記、日本書紀などは比較的要領よく説明している。しかし、私もそうだが、多くの人は、祭神が誰かなど意識しないで神社をお参りしているのだろう。大多数は縁結び、合格などのご利益だけを意識して神社を選んでいると思う。しかも、古事記などに登場する神の名前は長ったらしく、複数あったりしてわかりにくい。



島田裕巳 (しまだ・ひろみ)
1953年東京都生まれ。宗教学者、文筆家、東京女子大学非常勤講師。
東京大学文学部卒業、同大学大学院人文科学研究会博士課程修了(専攻は宗教学)。日本女子大学教授、東京大学先端科学技術研究センター特任研究員を歴任。
おもな著作に、『葬式は、要らない』、『日本の10大新宗教』、『浄土真宗はなぜ日本でいちばん多いのか』、『創価学会』などがある。


目次
日本の神々と神社
八幡―日本神話に登場しない外来の荒ぶる神
天神―菅原道真を祀った「受験の神様」の謎
稲荷―絶えず変化する膨大な信仰のネットワーク
伊勢―皇室の祖先神・天照大御神を祀る
出雲―国造という名の現人神神主の圧倒的存在感
春日―権勢をほしいままにした藤原氏の氏神
熊野―浄土や観音信仰との濃厚な融合
祇園―祭で拡大した信仰
諏訪―古代から続くさまざまな信仰世界
白山―仏教と深くかかわる修験道系「山の神」
住吉―四方を海に囲まれた島国の多士済々の「海の神」



系統別神社数 全国神社祭祀祭礼総合調査 平成2年~7年 神社本庁

1. 八幡信仰 7817社 八幡神社、八幡宮、若宮神社など
2. 伊勢信仰 4425社 神明者、神明宮、皇大神社、伊勢神宮など
3. 天神信仰 3953社 天満宮、天神社、北野神社など
4. 稲荷信仰 2790社 稲荷神社、宇賀神社、稲荷社など
5. 熊野信仰 2693社 熊野神社、王子神社、十二所神社、若(にゃく)一王子神社など
6. 諏訪信仰 2616社 諏訪神社、諏訪社、南方神社など
7. 祇園信仰 2299社 八坂神社、須賀神社、八雲神社、津島神社、須佐神社など
8. 白山信仰 1893社 白山神社、白山社、白(しら)山比咩(め)神社、白川姫神社など
9. 日吉信仰 1724社 日吉神社、日枝神社、山王社など
10. 山神信仰 1571社 山神社など
11. 春日信仰、12. 三島・大山祗(づみ)信仰、13. 鹿島信仰、14. 金毘羅信仰




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