ひつじ草の挑戦状

色んな思いを綴ってます。

従うだけの駒ですよ、ふん、

2011-09-10 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
お日様が傾きかけた頃、酒田港の、斯波のアトリエで、
斯波「出来たな」
与一「はい」
能子さんにプレゼントする漆塗りの櫛と、斯波さんが作ってくれといった、桔梗の花柄と、
源氏絵巻『末摘花』のかんざしが仕上がった。桔梗の花かんざしは…多分、土岐さんに、でも、“末摘花(すえつむはな)”…誰に?まったく、教えてくれない。
斯波「アイツ、喜ぶだろうなぁ」弟分の嫁は可愛いらしく、すっかり彼女の義兄気分で…。
与一「…だと、いいですね」困ってしまう。義兄になるのは、気分だけにしてもらいたい。
それは、能子さん…俺の妻の事を俺抜きにして、何でも決定してしまう事で、
昨日、不意に、斯波さんが「能子の護衛、池田さんに任せたぞ」
はぁ?唐突な話で、聞いてないですよ、と言ったら「今、言ったろ」
まったく、聞いてないですッ。
「くん…」いじけるように鼻を鳴らして、櫛に施した漆の香りを確かめた。
最初、ツンとした漆の香りが鼻についた。だが、今は香りが馴染んで優しくなった。
ただ、今でも馴染めないのは、池田さんのハーブ系ミントの爽やかな香りで、どういうわけだか、能子さんの橙(だいだい)の香とマッチしている。俺の雑念だけがマッチしてないようで、ムッとしてしまった。鼻が利くと厄介なもんだ。大丈夫か?俺…と、自分が揺らいだ。
よりによって、池田さんですか?
「強敵と思しき奴から味方に付ける、鉄則だ」
強敵…ですか。ざわ…心がざわついて、で、何を始めるんです?
「能子のためだ」
はぁ?こんな調子だ。兄貴衆の話の輪の中に入れてもらえない。決定事項に逆らえない。
会議の出席ぐらい、させて下さいッ。
ふぅ…、と溜息付いて、する…漆の感触を指で確かめた。滑らかで気持ちいい。
視覚が薄れる中、頼りはこの指。作業中も漆の質感と銀細工の凹凸は指先の感触で掴んだ。こういう細かい作業は昔から好きだった。指が平均より細く長い、与えられた矢では矢が抜き難く、自分で作るようになった。それが功を奏したのか、
斯波「見事なもんだ」と、指先と、鋭いセンスを褒めてくれた。
与一「勇将の下に弱卒なし、ですね」(強く優れた武将の下には、その心に従う家臣がいる)
何も聞かされてない部下は、当然従うだけの駒ですよ、ふん、ちょっとふて腐れて言ったら、


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