帰蝶「塩川…」
知らなかった。
あの事件は、侍女らにも波及していた。
侍女らは全ての経緯を、殿に暴露した。
殿に言うてはならぬと申し付けたのに、
「殿に言うたな、そなた…」
塩川「いいえ。我ら、パードレに褒美を、とお願いしたまでにございます」
肌の色を忌み嫌っていた者たちが掌を返し、宗旨替え。
黒に恩賞と恩寵の雨をもたらしたのは侍女らであった。
たった一人の坊主の所業が、そら恐ろしい…。
宗教観をひっくり返す結果を招いてしまった。
この時、パードレに洗礼を受ける侍女もいた。
「和尚様…腹を痛め苦しむ女性を、見殺しに致しますか?」
和尚「初めてで、何をすれば良いか…」
和尚が爺に戻った。
重い扉に手を置き、
バンッ
結界を打ち付けた。
塩川「初めてを経て、経験というのではないのですか?」
和尚「何をすれば…?」
塩川「まずは、熙子様の許に我らを案内し、」
ちらりと袈裟を見て、和尚様の身分を量る。
「その衣を、下さいませ」
和尚「相分かった。この爺のを、使ってくれ」
塩川「ありがとう存じます」
和尚「女子を苦しみから救わねば、」
帰蝶「はい」
自我に囚われ、他人様を見ない坊主がいる一方で、
心の痛みを理解して下さる方丈、和尚が居られた。
私が、改宗に踏み切れない理由は、これであった。
知らなかった。
あの事件は、侍女らにも波及していた。
侍女らは全ての経緯を、殿に暴露した。
殿に言うてはならぬと申し付けたのに、
「殿に言うたな、そなた…」
塩川「いいえ。我ら、パードレに褒美を、とお願いしたまでにございます」
肌の色を忌み嫌っていた者たちが掌を返し、宗旨替え。
黒に恩賞と恩寵の雨をもたらしたのは侍女らであった。
たった一人の坊主の所業が、そら恐ろしい…。
宗教観をひっくり返す結果を招いてしまった。
この時、パードレに洗礼を受ける侍女もいた。
「和尚様…腹を痛め苦しむ女性を、見殺しに致しますか?」
和尚「初めてで、何をすれば良いか…」
和尚が爺に戻った。
重い扉に手を置き、
バンッ
結界を打ち付けた。
塩川「初めてを経て、経験というのではないのですか?」
和尚「何をすれば…?」
塩川「まずは、熙子様の許に我らを案内し、」
ちらりと袈裟を見て、和尚様の身分を量る。
「その衣を、下さいませ」
和尚「相分かった。この爺のを、使ってくれ」
塩川「ありがとう存じます」
和尚「女子を苦しみから救わねば、」
帰蝶「はい」
自我に囚われ、他人様を見ない坊主がいる一方で、
心の痛みを理解して下さる方丈、和尚が居られた。
私が、改宗に踏み切れない理由は、これであった。