浦部法穂の「憲法雑記帳」ファシズムの初期兆候?(法学館憲法研究所2017年9月19日)

2017-10-24 17:11:26 | 桜ヶ丘9条の会
浦部法穂の「憲法雑記帳」
 
第16回 ファシズムの初期兆候?

浦部法穂・法学館憲法研究所顧問
2017年9月19日

 民進党の新代表に前原誠司氏が決まったが、のっけからつまずいた格好になった。幹事長候補に名前が挙がっていた山尾志桜里議員の「不倫疑惑」が、時をはかったように『週刊文春』で報じられ、他のメディアも一斉に追随して「山尾たたき」に走ったからである。なにか、民進党前代表の蓮舫氏の「二重国籍」問題を、蓮舫氏が代表選に出るとなったときから『産経新聞』がしつこく騒ぎ始めたのと似た光景である。そしてまた、「加計学園問題」で前・文部科学事務次官の前川喜平氏が安倍首相にとって不都合な事実を語ったとき、前川氏の「出会い系バー通い」という、不正確で意図的に人格を貶めるような報道を『読売新聞』がしたこととも、重なってみえる。安倍政権を脅かす恐れのある人物を「アベ友メディア」がスキャンダラスな個人攻撃で潰しにかかる、という構図である。

 蓮舫氏や山尾氏の場合は、事の真相がどうであれ、付け入る隙を与えたという意味では「脇が甘かった」のは確かであろう。しかし、どちらのケースも、そもそも大騒ぎしなければならないような問題ではない。「不倫」云々は、事実がどうであれ、まったくプライベートな問題であって、政治の場で議論の対象にしなければならないような問題ではない。「二重国籍」問題も、かつて日本政府は、外国の大統領までつとめた人物(フジモリ・元ペルー大統領)を日本国籍保持者だとしてペルー政府からの引き渡し要求に応ぜず、日本の参議院議員選挙への立候補さえ認めたではないか。なのに、なぜ「アベ友メディア」や右翼の連中は、こと蓮舫氏に関して大騒ぎするのか。「日本人」が外国の大統領になるのは誇らしいことだが、「外国人」の血が混じった人間が日本の政党の代表になるのは許せない、というのが、彼らの本音なのだろう。そして、前川氏のケースは、報道内容が実態とはかけ離れたものだったこととともに、「官邸サイド」が情報をリークして書かせたという話さえ出ていた。権力を脅かしそうな者は、わずかでも「付け入る隙」を見つけ出し、真偽・真相を問わずメディアを使って容赦なく叩き潰す。いったい、「民主主義国家」でこんなことがあっていいのだろうか。

 アメリカ・ワシントンD.C.にある「ホロコースト記念博物館」の"Early Warning Signs of Fascism"と題された展示ポスターに書かれている14の項目が、安倍政権にそっくりあてはまるというので、近年ネット上で話題になっているという(同様にアメリカでは、トランプ政権にあてはまるとして、やはり話題になっているようだ)。そこに「ファシズムの初期兆候(Early Warning Signs)」として掲げられている14項目とは、以下のとおりである。

1. 強力かつ継続的なナショナリズム(Powerful and Continuing Nationalism)
2. 人権の蔑視(Disdain for Human Rights)
3. 団結させるための敵の設定(Identification of Enemies as a Unifying Cause)
4. 軍事の最優先(Supremacy of the Military)
5. はびこる性差別(Rampant Sexism)
6. 支配されたマスメディア(Controlled Mass Media)
7. 国家安全保障への執着(Obsession with National Security)
8. 宗教と政治の結合(Religion and Government Intertwined)
9. 企業の力の保護(Corporate Power Protected)
10. 労働者の抑圧(Labor Power Suppressed)
11. 知性や芸術の蔑視(Disdain for Intellectuals and the Arts)
12. 刑罰強化への執着(Obsession with Crime and Punishment)
13. 身びいきや汚職の蔓延(Rampant Cronyism and Corruption)
14. 不正な選挙(Fraudulent Elections)


 なるほど、以上の14項目のなかで、安倍政権にあてはまらないものは、なさそうである。 日本の現状は、すでに「ファシズムの初期兆候」をみせているのである。いや、実は「初期兆候」ではない。この展示ポスターの内容は、2003年にLaurence W. Brittというアメリカの政治学者が発表した"Fascism Anyone?"という論文からの抜粋だとされる。この論文は、ヒトラーのドイツ、ムッソリーニのイタリア、フランコのスペイン、サラザールのポルトガル、パパドプロスのギリシャ、ピノチェトのチリ、スハルトのインドネシア、といった歴史上現存したファシズム体制の分析を通じて、上記のような14の共通する特徴を抽出したのであった。だから、上記の14項目は、「ファシズムの初期兆候」というよりもファシズムそのものの特徴を示したものなのである。ということは、安倍政権の日本は「ファシズムの初期兆候」をみせているというよりも、ファシズムそのものだというべきことになる。だとすれば、冒頭に書いた「アベ友メディア」による「敵性人物」への個人攻撃も、あたりまえにある話だということになろう。

 3.(北朝鮮)と6.(「アベ友メディア」)が功を奏して13.(「森友」、「加計」)は早くも忘れ去られたようで、安倍政権の支持率はこのところまた上がってきているらしい。ファシストたちのやりたい放題を、いったい、いつまで許すのか。「ええ加減にせんかい!」という気分である。
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