いま読む日本国憲法(26条教育機会均等、27条労働の権利)中日新聞(7月27日、8月11日)

2016-08-12 08:24:57 | 桜ヶ丘9条の会
<いま読む日本国憲法>(20) 第26条 教育機会、念入りに保障 

2016/7/29 中日新聞

 万人が教育を受けられる権利と、保護者が子どもに教育を受けさせる義務を定めた条文です。人の成長や人格形成にとって欠かせない教育の機会を、違う角度から念入りに保障しているわけです。

 二六条は、義務教育を無償とすることも明記しています。義務教育は、現行制度では小中学校の九年間。無償とは授業料を徴収しないこととされています。

 この憲法の精神に基づき、教育の基本方針を定めた法律が、一九四七年に制定され「教育の憲法」などと呼ばれてきた教育基本法です。第一次安倍政権時代の二〇〇六年に初めて改正され、「我が国と郷土を愛する態度を養う」など愛国心の理念が書き込まれましたが、愛国心の押しつけとの批判が出ました。

 自民党の改憲草案は、国が「教育環境の整備に努めなければならない」との義務規定を二六条に書き加えています。草案Q&Aは「施設整備や私学助成などについて、国が積極的な施策を講ずること」を想定していると説明していますが、気になるのは「教育が国の未来を切り拓(ひら)く上で欠くことのできないものであることに鑑み」という部分。個人の成長より、国家の利益になるための教育を追求するようにも読めます。

 ちなみに日本国憲法で「義務」という言葉が出てくるのは、三大義務とされる教育、勤労、納税について定めた二六、二七、三〇条と、公務員らの憲法尊重擁護義務を定めた九九条の四カ条だけ。憲法が、国家権力から国民の権利を守ることを主眼にしているためです。

 自民党内には「義務を忘れて権利だけ主張していては、社会生活は成り立たない」との意見が強く、改憲草案にも多くの義務が追加されています。

<いま読む日本国憲法>(21) 第27条 働けるよう国が支援 

2016/8/11 中日新聞

 全ての国民に、働く権利があることを定めた条文です。この条文に基づいて、職業安定法や雇用保険法、労働基準法など「勤労の権利」を守るための法律がつくられています。言い換えれば、国は、国民が働く機会を得られるような施策を行い、働けない人に対しては生活の保障をするよう求められているわけです。

 二七条一項は、働く権利だけでなく働く義務も定めていますが、労働を強制されたり、働かない人が罰せられたりするわけではありません。働く能力も機会もある人は仕事をして、だれかの役に立とうという精神的な規定などと考えられています。

 二項で、賃金や就業時間など労働条件の基準を「法律で定める」としたのは、雇用する側に比べて立場が弱い労働者を保護するためです。労働者が、著しく低い賃金や長時間労働を押しつけられることがないよう、国の関与を求めているのです。

 三項で児童の酷使を禁じたのも、社会的弱者と言える子どもが、しばしば過酷な労働を強いられてきた歴史を踏まえたものです。

 自民党の改憲草案も、二七条については現行条文とほとんど変わりません。

 むしろ問題はリストラや失業、過労死、サービス残業などが現実に横行し、二七条の目指す理想とかけ離れてしまっていることです。有効求人倍率が全体的に回復傾向にあるとはいえ、雇用者の四割前後を依然、非正規労働者が占めています。「ブラック企業」の問題も深刻です。

 現実を二七条に近づけるための、不断の努力が国に求められています。


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