学者「違憲」で自民に波紋 安保法案採決時に党議拘束外し要求も
2015/6/10 中日新聞
衆院憲法審査会で自民党推薦を含む参考人の憲法学者三人全員が、安全保障関連法案を「違憲」と指摘した問題の余波が収まらない。政府は九日、従来の憲法解釈に照らして問題はなく「合憲」との見解を野党に示し、自民党も失地回復を急ぐ。憲法学者の間では違憲とする見方が強く、国民の理解を得られるかどうかは不透明だ。
■技術者
「全く違憲でないという著名な憲法学者もたくさんいらっしゃいますから」。四日の審査会終了後、菅義偉官房長官は記者会見で強調した。だが「三対〇」で違憲とされた参考人質疑の衝撃は拭いようもない。
その後、自民党の高村正彦副総裁からは「憲法学者の言う通りにしていたら、自衛隊も日米安全保障条約もない。日本の平和と安全が保たれたか極めて疑わしい」との発言も飛び出した。
政府が反論見解をまとめたのは、参考人の発言を放置すれば混乱が拡大しかねない点を重大視したためだ。早期に事態の収拾を図りたいとの思惑があるが、そう簡単に事は進みそうにない。
菅官房長官の会見を受け「『著名な憲法学者』の名前を教えてほしい」とツイッターでつぶやいたのは木村草太首都大学東京准教授だ。
「憲法学者は一種の技術者。家を建てる場合に『ヨーロッパ風にしたい』と施主が好みを示すのは自由だが、柱の太さや鉄骨の量について技術者の忠告を無視すれば、とても安心して住める建物にはならない」と例え、従来の主張を押し通そうとする政府の姿勢に警鐘を鳴らす。
■整合性
審査会前日の三日には「憲法九条を根底から覆すものだ」として憲法学者らが安保法案の廃案を求める声明を発表、これまでに呼び掛け人と賛同者が計二百人を超えたとしている。
「明日の自由を守る若手弁護士の会」の黒沢いつき共同代表は、安保法案が合憲だとの立場を取る憲法学者はごく少数だと主張。「政府は参考人が都合のいいことを言わなければ無視する。主権者にとって、危うい権力者が暴走している」と痛烈に批判する。
一方、集団的自衛権は合憲とする駒沢大の西修名誉教授は「参考人の意見は粗さが目立つ」と指摘し「『合憲』あるいは『少なくとも違憲ではない』という憲法学者は少なからず存在する。学説は数の問題ではなく、どこまで論理的整合性があるかだ」と話した。
■足すくわれた
自民党内は、審査会での参考人質疑後、動揺を隠せない。安保法案審議の「強烈な逆風」(自民党中堅)に、九日開かれた党の意思決定機関の一つである総務会は荒れた。出席した村上誠一郎元行革担当相は法案採決の際、賛成の党方針に従う「党議拘束」を外すべきだと要求。「(参考人の意見を)一刀両断で切り捨てるのは正しい姿勢なのか」と迫った。谷垣禎一幹事長ら執行部側が反論し応酬となった。
執行部は全国各地で「車座集会」を積極的に開催する方針だ。幹事長名で十日以降、全国の衆院選挙区支部長らに街頭演説を実施するよう通達。「国民の命と平和な暮らしを守る大切な法律だ」とアピールする特製ビラも急きょ準備した。
安保法案は会期末の二十四日までの衆院通過は困難な情勢。党執行部の焦りは、「違憲法案」との見方が急拡大すれば国会攻防を乗り切れないとの危機感が背景だが、自民党筋は「訴えれば訴えるほど逆効果かも」と漏らす。党ベテランは「最重要法案がこんな形で足をすくわれるとは思わなかった」と力なく語った。
党幹部は成立までの日程をにらみ「少々強引な手を使わざるを得ない局面も出てくる」と思い詰める。
2015/6/10 中日新聞
衆院憲法審査会で自民党推薦を含む参考人の憲法学者三人全員が、安全保障関連法案を「違憲」と指摘した問題の余波が収まらない。政府は九日、従来の憲法解釈に照らして問題はなく「合憲」との見解を野党に示し、自民党も失地回復を急ぐ。憲法学者の間では違憲とする見方が強く、国民の理解を得られるかどうかは不透明だ。
■技術者
「全く違憲でないという著名な憲法学者もたくさんいらっしゃいますから」。四日の審査会終了後、菅義偉官房長官は記者会見で強調した。だが「三対〇」で違憲とされた参考人質疑の衝撃は拭いようもない。
その後、自民党の高村正彦副総裁からは「憲法学者の言う通りにしていたら、自衛隊も日米安全保障条約もない。日本の平和と安全が保たれたか極めて疑わしい」との発言も飛び出した。
政府が反論見解をまとめたのは、参考人の発言を放置すれば混乱が拡大しかねない点を重大視したためだ。早期に事態の収拾を図りたいとの思惑があるが、そう簡単に事は進みそうにない。
菅官房長官の会見を受け「『著名な憲法学者』の名前を教えてほしい」とツイッターでつぶやいたのは木村草太首都大学東京准教授だ。
「憲法学者は一種の技術者。家を建てる場合に『ヨーロッパ風にしたい』と施主が好みを示すのは自由だが、柱の太さや鉄骨の量について技術者の忠告を無視すれば、とても安心して住める建物にはならない」と例え、従来の主張を押し通そうとする政府の姿勢に警鐘を鳴らす。
■整合性
審査会前日の三日には「憲法九条を根底から覆すものだ」として憲法学者らが安保法案の廃案を求める声明を発表、これまでに呼び掛け人と賛同者が計二百人を超えたとしている。
「明日の自由を守る若手弁護士の会」の黒沢いつき共同代表は、安保法案が合憲だとの立場を取る憲法学者はごく少数だと主張。「政府は参考人が都合のいいことを言わなければ無視する。主権者にとって、危うい権力者が暴走している」と痛烈に批判する。
一方、集団的自衛権は合憲とする駒沢大の西修名誉教授は「参考人の意見は粗さが目立つ」と指摘し「『合憲』あるいは『少なくとも違憲ではない』という憲法学者は少なからず存在する。学説は数の問題ではなく、どこまで論理的整合性があるかだ」と話した。
■足すくわれた
自民党内は、審査会での参考人質疑後、動揺を隠せない。安保法案審議の「強烈な逆風」(自民党中堅)に、九日開かれた党の意思決定機関の一つである総務会は荒れた。出席した村上誠一郎元行革担当相は法案採決の際、賛成の党方針に従う「党議拘束」を外すべきだと要求。「(参考人の意見を)一刀両断で切り捨てるのは正しい姿勢なのか」と迫った。谷垣禎一幹事長ら執行部側が反論し応酬となった。
執行部は全国各地で「車座集会」を積極的に開催する方針だ。幹事長名で十日以降、全国の衆院選挙区支部長らに街頭演説を実施するよう通達。「国民の命と平和な暮らしを守る大切な法律だ」とアピールする特製ビラも急きょ準備した。
安保法案は会期末の二十四日までの衆院通過は困難な情勢。党執行部の焦りは、「違憲法案」との見方が急拡大すれば国会攻防を乗り切れないとの危機感が背景だが、自民党筋は「訴えれば訴えるほど逆効果かも」と漏らす。党ベテランは「最重要法案がこんな形で足をすくわれるとは思わなかった」と力なく語った。
党幹部は成立までの日程をにらみ「少々強引な手を使わざるを得ない局面も出てくる」と思い詰める。
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