未来への不安、根底に 安保法案反対の声(2015年8月31日中日新聞)

2015-09-03 07:47:16 | 桜ヶ丘9条の会
未来への不安、根底に 安保法案反対の声 

2015/8/31 中日新聞


 安全保障関連法案に反対する人々の抗議の声が30日、全国に広がった。国会議事堂を取り囲んだ大規模集会には音楽家の坂本龍一さん(63)ら各界の著名人も参加してスピーチした。東京電力福島第一原発事故後に広がった首相官邸前のデモ行動などを映画化した歴史社会学者の小熊英二・慶応大教授(52)に、この日のデモや集会をどう見たのか、聞いた。

◆小熊英二教授に聞く

 これほど多くの人が集まり声を上げたのは、日本社会の変化を示している。その根底にあるのは、「民意と議会がずれている」という危機意識と、「日本の未来はどうなるのだろう」という不安感だ。

 シャッターが閉まった商店街の風景をみても分かるように、いまの日本では、余裕のないところから昔の状態が保てずに変化している。二十年前と比べて最も風景が変わっていないのは、政治の中枢がある永田町と霞が関、そしてメディアの中枢がある大手町や渋谷だ。そこの住人たちが一番、社会の変化が分かっていない。それ以外の人々は、未来に不安を感じ、議会とメディアのあり方にいらだっている。

 「戦争反対」や「勝手に決めるな」といったスローガンは、それを間接的に表現している言葉でもあると思う。「戦争反対」は「未来が不安だ」、「勝手に決めるな」は「あなたたちは何も分かっていない」という感覚を表現していると翻訳すれば、少しは分かるのではないか。

 今回感じたことは二つある。一つは国会前という空間が、抗議の場として定着したことだ。福島の原発事故後に起きた二〇一二年の官邸前抗議からの運動の成果だろう。不当を感じることに声を上げる政治文化が浸透したのは、よい変化だ。

 もう一つは、報道の広がりと野党四党首がスピーチを行ったことに象徴されるように、メディアと政党がいくらか社会の変化に追いついてきたことだ。一二年の官邸前抗議の時点に比べると、そこはよい方向に向かっている。

 まだ変化を感知できていないメディアと政党は、自分たちが「裸の王様」の状態にあることを知るべきだ。

■各界からも声

◆音楽家・坂本龍一さん「憲法の精神取り戻す」

 安保法案のことが盛り上がってくる前は現状に対してかなり絶望してたんですが、シールズの若者たち、そして女性たちが発言してくれているのを見て、日本にもまだ希望があるかなと思っているところです。崖っぷちになって初めて、私たち日本人の中に憲法の精神、九条の精神がここまで根付いているということを、皆さんがはっきり示してくれて勇気づけられています。ありがとうございます。

 今の日本国憲法は、確かにアメリカに与えられたという声もありますけれど、今こういう状況で民主主義が壊されようとしている、憲法が壊されようとしている。ここに来て民主主義を取り戻す、憲法の精神を取り戻すということは、まさに憲法を自分たちで血肉化すること。とても大事な時期だと思います。

 世界の歴史を見ると、憲法は人々が自分たちの命を懸けて闘い取ってきたものです。もしかしたら日本の歴史の中では、明治憲法しかり、日本国憲法しかり、自分たちで命を懸けて闘い取ってきたものではなかったかもしれないけれど、今まさにそれをやろうとしている。

 僕たちにとって、イギリス人にとってのマグナ・カルタ、フランス人にとってのフランス革命に近いことが、ここで起こっているんじゃないかと強く思っております。

 一過性のものにしないで、あるいは仮に安保法案が通っても終わりにしないで、行動を続けてほしいと思いますし、僕も一緒に行動してまいります。

◆作家・森村誠一さん「戦争は女性が犠牲に」

 大勢集まった女性に対してお話しします。戦争は最も残酷な形で女性を破壊します。憲法に女性が美しくある権利を保障するという言葉はありません。なぜか。当たり前のことを憲法にうたう必要がない。

 ところが、戦争になれば女性に一番大切な美しさを守ることが踏みにじられます。もんぺという醜い衣服を着て、パーマをした女性は髪をそがれ、振り袖を着た女性は袖を切られた。竹やりでわら人形を刺し貫く訓練をさせられた。

 それを見て私は戦争を絶対にやってはいけないと思った。女性が壊されることは、子どもが生まれなくなり、人生が破壊され、地球が滅びるということです。

 安倍政権は、再び戦争可能な国家にしようとしているが、絶対にいけない。私たちの責任であり、使命であり、義務でもある。今日の雨を共有した女性たちは忘れないようにお願いしたい。

◆映画監督・園子温さん「市民として声上げる」

 僕は映画監督ですが、ただの普通の市民です。きょうはシールズの応援団として、ここに来なきゃいけないなと思って来ました。本当に、それだけです。

 本当にこんなに集まってすげえなと思うんだけど、僕も皆さんと同じ、ここに集まったただの市民として、ずっと声を上げたいと思っています。

 <おぐま・えいじ> 慶応大総合政策学部教授。専門は歴史社会学。「生きて帰ってきた男」で第14回小林秀雄賞。脱原発運動を記録した映画「首相官邸の前で」が9月2日に公開される。

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