中日春秋 (2020年11月5日 中日新聞))

2020-11-05 10:04:15 | 桜ヶ丘9条の会

中日春秋

2020年11月5日 中日新聞
 州(ステート)が集まっているのに、なぜ米国は「合州国」ではなく「合衆国」なのか。諸説あるようだが、人々が協力しあう「合衆」の国であるからだと、語源を追った元国立国会図書館副館長の斎藤毅さんが書いている(講談社学術文庫『明治のことば』)
▼辞書によると、「合衆」は「多くの人や物などが集まって一つになること」。そんな合衆の国が米国であり、「州」を合わせた国という意味ではないということらしい。協力して一つになる国。美しく聞こえる呼び方に違いない
▼国名の由来とは反対の空気が、届くニュースからは伝わってくる。接戦となった米大統領選である。暴動を恐れて、多くの店が入り口をふさいだ。混乱に備えて銃を買う人も増えた。衆と衆の分断と対立が、この選挙戦でさらにあらわになっている
▼分断をあおってきたトランプ大統領は、不利の予想をはね返す支持を得ている。開票の打ち切りまで求め、新たな混乱の種をまいているようだ
▼州ごとの政党色は、この大統領選でもあまり変わらなかったようである。固定化は以前からだが、かつては大統領選の長い論戦を経て、支持が一つに収れんした時代もあった。地域ごとにばらばらの人々が集まった「合州国」の色が、濃くなっていないか
▼どちらが制しても「集まって、一つになる」空気が生まれるようには感じられないのが悲しい。

 


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