経済打撃、政府想定の6倍 南海トラフ被害(2018年6月8日中日新聞)

2018-06-14 08:23:55 | 桜ヶ丘9条の会
経済打撃、政府想定の6倍 南海トラフ被害 

2018/6/8 中日新聞

 木学会の推計で、南海トラフ巨大地震の経済的な被害が長期的に千四百兆円を超える可能性があるとされた。二百二十兆円とした政府の想定を大幅に上回る数字で、現実となれば、日本経済は壊滅的な打撃を受ける。国の在り方を根本的に変えてしまう恐れもあるとして学会はインフラ整備を進めるよう提言するが、困難も予想される。人材育成などソフト面を含めた総合的な対策も課題となる。

■20年 

 南海トラフ地震では、内閣府の想定で死者は三十三万人に上る。学会の推計は、こうした犠牲者や建物の倒壊などの直接的な被害のみならず、その後二十年間の長期にわたり経済的な損失が続き、深刻な影響を与えることを指摘した。

 一方、インフラの耐震化など効果的な対策をすれば、被害想定額の三割程度を減らすこともできるという。国土交通省は二〇一四年、南海トラフ地震の対策計画を策定。住民の安全な避難とともにインフラの機能維持も柱に据えた。一八年度は首都直下地震と合わせ、千六百二十一億円を投じる。

■配分 

 重点は、高速道路と主要な国道だ。今後三十年の大地震(震度6弱以上)の発生予想確率が26%以上の地域の道路を優先に、落橋や倒壊防止の補強工事を推進。国の経済を支える「大動脈」で、被災後も可能な限り機能を維持できるようにする狙いだ。

 防波堤や護岸の強化も重視。大規模津波が襲来しても倒壊しにくいよう耐震化や液状化対策が進められている。港湾では、被災後の物流網維持に向けた訓練などの対策も取り入れる。

 ただ、課題は住民避難とのバランスだ。国交省幹部が「巨大災害では財産は二の次で、どれだけ犠牲者を減らせるかを優先しないといけない」と話すように、適切な予算配分が求められている。

■移住誘導

 学会推計の千四百兆円という被害額について、防災に詳しい兵庫県立大の室崎益輝教授は「日本の国内総生産(GDP)を大幅に上回る数字で、経済的に困難になる」と指摘する。「一つの産業が被害を受けても、影響が(他の産業に)連鎖しない政策が必要だ」

 静岡大の岩田孝仁教授は「建物を壊れないようにするハード面の対策に加え、物流や人の能力などのソフト面も強くしなければならない」と訴える。

 経済的な影響が大きい都市部での対策が不可欠な一方、人口減少が進む地方では自治体の財政面から対策が進みにくい。

 学会の検討委員を務めた目黒公郎・東京大教授は「住民に自発的に安全な土地への移住を誘導するような政策も必要だ」と提案する。

 さらに「巨大地震は発生確率が低いので対策が後回しにされがちだが、発生すると国が滅亡してしまう。事前対策で抑止力を高め、被害を国の力で復旧、復興できる規模まで小さくするべきだというのが学会のメッセージ」と警鐘を鳴らす。

◆3震源域、連動の恐れ

 南海トラフの巨大地震の元になるのは、ひずみの蓄積だ。日本列島が乗る陸側のプレート(岩板)の下に、海側のプレートが年数センチ程度の速さで潜り込んでおり、生じるひずみに耐えられなくなると陸側プレートが一気に跳ね上がって地震や津波を引き起こす。「海溝型(プレート境界型)」と呼ばれ、東日本大震災の地震も同様の仕組みで発生した。

 東海沖から九州沖に延びる南海トラフ沿いには、東海地震、東南海地震、南海地震の震源域が並ぶ。大きな地震はこれまでおおむね百~百五十年の周期で起きてきた。三つが連動し、超巨大地震になる恐れも指摘される。一七〇七年の宝永地震は連動により推定マグニチュード(M)8・6の地震になったと考えられている。

 一九四四年の昭和東南海地震や四六年の昭和南海地震からは七十年以上が経過。政府の地震調査委員会は今年二月、南海トラフを震源とするM8~9級の巨大地震が起こる確率が「70~80%」に高まっているとの評価結果を出した。大津波などで死者は最大約三十三万人に上ると想定されている。
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