横田騒音判決 深刻な被害を直視して (2020年1月24日 中日新聞)

2020-01-24 09:27:03 | 桜ヶ丘9条の会

横田騒音判決 深刻な被害を直視して 

2020/1/24 中日新聞

 米軍機の飛行差し止めは認めないが、住民が受けた騒音被害の賠償金は日本政府が払う。こんな図式の判決が定着している。公害は延々と続く。司法はもっと住民の被害の深刻さを考えてほしい。

 米軍横田基地(東京)ばかりではない。米軍機や自衛隊機の騒音被害をめぐっては、厚木(神奈川)や普天間・嘉手納(沖縄)など全国計七つの基地で訴訟が起きている。

 横田基地の場合は今回で「第九次」の公害訴訟である。周辺住民らが一九七六年から起こしている裁判だ。今回は基地の周りに住む六市一町の人々ら約百四十人が原告である。夜間から早朝にかけての飛行差し止めと騒音被害などの損害賠償を求めていた。

 一審では被害の賠償は命じたが、飛行差し止めの求めは退けた。東京高裁もこれを踏襲し、約一億一千万円の賠償を国に命じた。実はどの基地の訴訟でも、最高裁判例に基づき、このパターンの判決が続いている。

 過去に自衛隊機の夜間飛行を差し止めたケースはあったが、そもそも自衛隊機は夜間の離着陸はほとんどしていなかった。ましてや米軍機に対しては「支配の及ばない第三者の行為の差し止めを求めるものだから、理由がない」との論法ではねつけている。

 つまり基地の騒音という公害については進歩が望めない状況である。大勢の住民は今後もがまんを強いられるだけである。

 今回の訴訟では二〇一八年に配備された垂直離着陸輸送機オスプレイによる健康被害が訴えに加わっていた。特有の低周波音が新たな被害を生んでいる。もともと墜落などの懸念が持たれ、基地周辺の住民が余計に不安に思うのは当然である。だが、裁判所では「原告の症状が低周波音によるものとは認定できない」と、こちらの点も退けてきた。

 米軍というだけで司法が思考停止に陥ってはいないか。いわゆる「うるささ指数」に基づいて、賠償金支払いを命ずれば足る、とでも考えているなら誤りだ。

 不要な夜間・早朝の離着陸があろう。住民被害を考えれば、飛行を最小限まで控える措置もありうる。

 司法が日本政府を促し、米国側と交渉してもよいのだ。無為無策のままではいけない。

 防音工事では防ぎきれない低周波音が心拍数や頭痛などに影響していると住民はいう。その声にもっと耳を傾けるべきだ。


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