中部の参院選 変革求める民意尊重を
2019/7/23 中日新聞
自民、公明の与党が改選過半数を得た参院選だが、中部地方では焦点となった改選一人区で野党が健闘した。与党は勝利におごらず、変革を求める民意を尊重して丁寧な政治に心がけてほしい。
中部七県(愛知、岐阜、三重、長野、福井、滋賀、静岡)で改選一人区の結果をみると、岐阜、三重、福井で自民候補が当選した。一方、長野は国民、滋賀は無所属候補が議席を得た。
野党が統一候補を擁立したことで、参院選の行方を占うと言われた全国三十二の改選一人区の勝敗は、自民の二十二勝十敗で勝率は68・75%だった。
これを中部七県に限ってみれば、自民の勝率は60%であり、全国の勝敗と比べて、野党側の善戦が目立つといえる。
中部七県全体の獲得議席でも、自民、公明の計六議席に対し、野党側は計五議席と肉薄した。
国会での「安倍一強」の構図は変わらないとはいえ、特に中部地方の与党関係者や当選者は、新しい風を求める声もこの地域に強くあることに耳を澄ませ、謙虚に政治に取り組んでほしい。
本紙が二十一日、中部七県の有権者一万五千百人余を対象に実施した出口調査では、有権者が投票で重視した政策は「年金」が46・1%と突出して多く、安倍政権が争点として打ち出した「改憲の是非」は15・0%にとどまった。
全国の獲得議席でも、与党などの改憲勢力は改憲発議に必要な三分の二に届かなかったが、中部地方の多くの有権者が改憲を争点にして投票したわけではないという調査結果は重い。
注目すべきは、この出口調査で、二十代、三十代の若者の四割超が自民党を支持したことだ。この傾向は全国共通のようだ。
海外に目を向ければ、香港では中国が国際公約した「一国二制度」を骨抜きにする動きに反対し、若者が主導する大規模デモが頻発している。
むろん、若者が強く政治の変革を求める時代背景は国や地域によって違うだろうが、今の日本の若者が「長期一強政権」を支持する底流として、自らの一票で政治は変わらないとする現状肯定の無力感があるとすれば心配だ。
投票を棄権した名古屋市の大学生は本紙の取材に「この選挙で自民優勢が覆るとは思えなかった」と述べた。政治の活力が失われているがゆえの現状肯定であれば、与野党共通の課題である。
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