海洋プラスチックごみ、削減遅い日本(2018年6月22日中日新聞)

2018-06-22 09:06:47 | 桜ヶ丘9条の会
海洋プラごみ、削減遅い日本 

2018/6/22 中日新聞

 地球規模で、プラスチックによる海洋汚染が深刻化している。日本政府は今月八、九日にカナダで開かれた先進七カ国(G7)首脳会議で、プラスチックごみを削減する「海洋プラスチック憲章」を米国とともに承認しなかった。既に世界中で削減の取り組みは始まっているが、日本の動きは鈍い。

 「海洋ごみ対策は、海洋環境の保全のため喫緊の課題。一国だけの努力、G7や先進国だけの努力で解決できるものではなく、世界全体の課題として対処する必要がある」

 環境省によると、安倍晋三首相はG7の九日のセッションで、各国首脳にこう呼びかけた。

 その一方、「二〇三〇年までに全てのプラスチックを再利用・リサイクル可能とし、代替品がない場合は回収可能とする」といった対策を盛り込んだ海洋プラスチック憲章は承認を見送った。G7では欧州四カ国とカナダ、欧州連合(EU)は承認した。

 中川雅治環境相は十五日の会見で、非承認の理由を「国民生活や経済への影響を慎重に調査する必要があり、さまざまな方のご理解をいただき調整するプロセスを経ていない」と説明した。同省によると、時限を区切った数値目標である点がネックになったという。

 一六年の世界経済フォーラム(WEF)年次総会の報告では、プラスチックの微細ごみは全世界の海に毎年八百万トン以上が流れ込んでいる。自然界では分解されず、広がると取り除くのは難しい。重量に換算すれば、五〇年に魚の量を超すとの予測もある。

 日本列島の沖合や東京湾でも、魚介が餌と間違えて摂食する例が相次いで報告されている。

 東京農工大の高田秀重教授(環境化学)らは、一五~一七年、東京湾でムラサキイガイ(ムール貝)とホンビノスガイ計二十一枚を採取。全ての体内から直径〇・二ミリ以下のプラスチックの破片や、長さ〇・五ミリ程度のプラスチック繊維が見つかった。

 高田教授によると、破片はリサイクルされずに捨てられたペットボトルやレジ袋などが砕かれたプラスチックごみで、繊維は衣服の化学繊維がほつれて、洗濯排水で流されたものとみられる。

 東京海洋大の内田圭一准教授(海洋計測学)らの一六年の調査でも、日本列島の沖合数キロ~数百キロで、直径一ミリに満たないプラスチック片が大量に見つかっている。

 環境NGO「グリーンピース・ジャパン」によると、憲章を承認した英国やフランスをはじめ、インドやルワンダ、ケニアでも、レジ袋など使い捨てプラスチック製品の使用を禁止したり、禁止の方針を示したりしている。マクドナルドも、英国で紙ストローを提供するなど、企業の取り組みも進んでいる。

 高田教授は「憲章の対策は時限付きといっても、三〇年までで十二年も先。それまでに(産業界や社会での議論において)いくらでも進め方はあるはずだ」と指摘する。

 十九日の閣議で「プラスチック資源循環戦略」を来年六月に大阪で開かれる二十カ国・地域(G20)首脳会合までに策定することが決まった。あらためて日本の本気度が問われる。

 (皆川剛)


最新の画像もっと見る

コメントを投稿