中日春秋(2019年12月12日 中日新聞)

2019-12-16 09:15:59 | 桜ヶ丘9条の会

中日春秋 

2019/12/12 紙面から

 悲しい時、苦しい時、目に涙があふれる。得るものもある。にじんできれいに思えたり、重なって見えたりする景色だ。苦境の時に見える世界に、人生を豊かにする手掛かりがある。故事成語だったか。たしかそんな言葉が西洋にあった

▼フィンランドのその女性も、つらい時に感じたものを政治家として生きる糧にしたようである。三十四歳の若さで、首相になったサンナ・マリーンさんだ。欧州紙によれば、現職の首相としては、欧州連合はもちろん、世界でも最年少で、過去と現在の女性首相の中でも、もっとも若い部類に属する

▼裕福ではない家庭に生まれ、幼い頃に、両親は離婚した。その後、母と母の女性パートナーとともに暮らすようになった

▼周囲のまなざしは、まったくやさしくなかったようだ。「本当の家族とも他の人と同じとも見てもらえなかった。(世の中から)理解されていないことが、もっともつらかった」と語っている

▼苦学の末に、大学を出ている。つらい現実の向こうに、個性を認め合い、大きな格差もなく生きられる世界がにじんで見えたか。政治家として平等や人権、公正さを標ぼうしている。国政の場に出てほんの数年で、前政権の退陣により、連立政権を率いることになった

▼内と外を分ける考えの政治指導者が目立っている欧州で、その若さとともに、異例のたたずまいの新首相である。


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