200円って妥当なの? KDDI通信障害「おわび返金」 (2022年8月10日 中日新聞)

2022-08-10 22:54:04 | 桜ヶ丘9条の会

200円って妥当なの? KDDI通信障害「おわび返金」

2022年8月10日 
 7月上旬、携帯電話の利用者らに大混乱をもたらしたKDDI(au)の通信障害。同社が「おわび」として示したのは、一律200円の返金だ。これが物議を醸し、「子どものお菓子代か」と皮肉も飛び出すほど。通信障害で受けた打撃は人によっては大きい。今回の対応は妥当なのか。 (中沢佳子)
 通信障害の発端は七月二日未明。メンテナンス作業の際、音声通話に関係する設備の交換中に不具合が起き、トラブルが連鎖した。四日夕まで音声通話やデータ通信が使いづらい状況が続き、全面復旧は発生から約八十六時間後。この間、一一九番などの緊急通報、物流やATMなど、多岐にわたる分野で支障が出た。
 KDDIの約款では、サービスが全く利用できない、または同程度の状態が二十四時間以上続いた場合、損害を賠償する「二十四時間ルール」を定める。
 今回、約款返金の対象は音声サービスのみの契約者二百七十八万人。障害が続いたのは二日分と判断し、基本使用料などをもとに一日平均五十二円を請求額から差し引く。さらに補償外の人を含め、auや傘下の沖縄セルラーの利用者三千六百五十五万人に一律二百円をおわび返金する。
 総額では七十五億円に上るとはいえ、一人当たり二百円。本紙には「通信障害で仕事が半月分とんで収入激減。二百円って本気で困る」と読者の嘆きが寄せられた。インターネット上にも「逆にイラッとする額」「二百円はない。子どものお菓子代か?」という憤りのほか、「二百円なんていらないから、そのお金でシステム増強して」と対策強化を求める声もやまない。
 通信業界ではソフトバンクが二〇一八年、NTTドコモも昨年、大規模な障害を起こした。ただ二十四時間ルールに達せず、個人への補償は見送られた。KDDIの対応は妥当なのか。
 「いや、安い。音声サービスの契約をベースに算定したが、データ通信が使えずに仕事や生活で困った人はたくさんいる。もう少し手厚くしないと納得は得られない」とスマホジャーナリストの石川温(つつむ)さん。今回の障害は人為的ミスで、今後も起きうると危ぶむ。
 ネット環境に接続できる無料Wi−Fiサービスを終了するコンビニや公共交通機関が相次いでいる。「新型コロナウイルス禍で訪日外国人客が減り、集客効果も見込めなくなったのが一因。今回のような事態に備え、ユーザーは自宅のWi−Fi環境を整えるほか、周辺の無料スポットを事前に把握するなど自衛策が必要だ」
 ITジャーナリストの三上洋さんも「『前例』にさせないという意味でも、このぐらいが限界なのだろう。約款上でも文句の言えない対応だが、契約者の心証は悪い」と語る。
 監督官庁の総務省は、通信障害や災害といった有事に、一時的に他社の通信網を利用できる「ローミング」の導入に向け、検討を進めるとしている。ただ、簡単ではないと三上さんは踏んでいる。「各社の通信設備の改修や、回線を切り替える仕組みの構築などの必要がある。技術面でもコスト面でも壁は高い」
 とはいえ、非常時の通信手段の確保は急務だ。
 日本大の福田充教授(危機管理学)は「あらゆるものがネットワーク化され、社会の維持に欠かせなくなった。社会のライフラインが止まれば、人々の生活や経済活動にとどまらず、社会の基盤が揺らぐ。命を脅かす事態にもなりかねない」と気をもむ。通信インフラの不具合がもたらす打撃の大きさも今回で証明されたとし、こう説く。「経済合理性の観点から無料Wi−Fiや公衆電話が減らされた。しかし非常時の備えとして、国や自治体が一定数整備しておかなくては」
 
 

 


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