不戦の意志を貫こう (2015年9月20日中日新聞)

2015-09-20 11:38:45 | 桜ヶ丘9条の会
不戦の意志を貫こう 取締役論説担当・深田実 

2015/9/20 中日新聞
 新安保法制が成立しようとも、日本人の心には変わらぬものがあるにちがいない。それは戦後日本の精神、不戦の意志とでもいうべきものだ。

 振り返れば、冷戦が終わってPKO協力法が成立した。国際貢献の名の下「普通の国」へという声が出ていた。しかしながら反対も強かった。とりわけ戦争体験者は自衛隊が海外へ行くことに不安をもった。法律には武力不行使のタガがはめられた。ぎりぎりの不戦である。

 そして今、安保法案に対し戦争世代は無論、戦争を知らない世代も多くが反対した。違憲の疑い、内容のあいまいさ、民主主義の軽視など理由はさまざまだ。だが底流には日本が築き上げてきた有形無形の不戦の意志が働いている。

 有形の部分とは、たとえばアジアの国々への経済支援がある。支援は繁栄を生み、やがて信頼となる。平和醸成である。

 無形の部分とは、不戦・非戦の精神である。武力不行使は世代を超えて引き継がれている。

 アメリカを悪く言いたくはないが、トリガー・ハッピーと俗に呼ばれる。トリガー、引き金をひきたがるとは好戦的ということだ。巨大軍需産業国の宿命かもしれない。不戦の精神の反対だ。新安保法制は不戦の日本をアメリカの戦争の下請けにしかねない。

 政府は日本周辺の緊張をしばしば持ち出した。中国は軍備を強大化させ、北朝鮮は核をもつ。日本は日米同盟を保持すると同時に東アジアの一員でもある。緊張をあおるより融和と秩序形成の役割を果たすべきだろう。

 平和主義は、センチメント、情緒的という見方がある。逆に自衛隊の海外活動が高い評価を得てきたのは武力行使をしないからだという指摘もある。実際、武力はテロを拡散させている。そうならば武力不行使はセンチメンタルどころか平和創出のリアリズムではないか。

 法律が成立しても国民多数が望まぬなら不用にできる。政治勢力は選挙で決まり、違憲の訴えは司法が裁く。不戦の意志を持ち続けよう。日本の針路を決めるのは私たちなのである。

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