新型肺炎、政府対応は後手に
2020/2/13 中日新聞
新型コロナウイルスによる肺炎(COVID=コビッド=19)の感染拡大を受け、政府は十二日に中国からの外国人の入国拒否範囲を広げるなど、水際対策を強化した。クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」や政府チャーター機の帰国者からの感染者は出続けているが、政府の対応が追いつかず、対処方針も二転三転。危機管理が後手に回っている印象は否めない。
▼「先手」
「先手先手で対策を総動員してほしい」。安倍晋三首相は十二日の対策本部会合で、全閣僚にそう指示した。
先手強調は、感染拡大に対する焦りの裏返しだ。
十二日朝までに、クルーズ船で感染が確認されたのは百七十四人。乗船した検疫官の感染も確認された。十一日には、中国・武漢市から政府のチャーター機で帰国し、直後の検査で陰性だった邦人二人がその後発症し、再検査で陽性と判定されたことも発表された。
▼ちぐはぐ
感染した検疫官は防護服を着ていなかった。政府当局者は「毎回防護服を着脱する負担を考慮した」と話すが、国民民主党の泉健太氏は十二日の衆院予算委で「国民から見ると不思議だ」と疑問を投げかけた。
与党も政府対応に危機感を持つ。公明党の佐藤茂樹氏も予算委で、自宅待機させた帰国者からの感染確認について「ちぐはぐな対応だ。例外は認めない方がいい」と苦言を呈した。
健康状態の観察期間も揺れた。政府は中国湖北省からの帰国者の指定施設滞在期間を十四日間としていたのを、四日に十日間に短縮。世界保健機関(WHO)の見解を踏まえ、六日には一二・五日間に再変更し現場の混乱を招いた。
政府高官は「中国は潜伏期間が延びるケースもあると発表している。難しい」と、さまざまな情報が飛び交う中での水際対策の難しさを明かす。
▼体制
クルーズ船では、ウイルス検査態勢が整わず、約三千六百人の乗客乗員は十四日間の船内待機を余儀なくされている。加藤勝信厚生労働相は十二日、全員の検査は経過観察後の下船の際に行いたいと、なお時間がかかることを示唆した。
チャーター便や帰国者の宿泊先の手配、クルーズ船の乗客乗員への支援、ウイルス検査など、縦割りになりがちな関係省庁の対応の取りまとめも課題だ。
自民党は七日、政府に対して内閣官房にある複数の感染症対策部局の統合・格上げを提言。情報収集能力の拡充や、指揮命令系統を一本化して各省庁に素早く指示できる体制づくりを求めた。
首相も組織の不備は認めているようだ。十二日の衆院予算委で「組織強化は重要な視点だ。感染症の危機管理体制を不断に見直し、対応力を一層高めていく」と語った。
(後藤孝好)
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