膨らむ防衛費、届かぬ管理 装備品でまた26億円水増し(2018年2月12日中日新聞)

2018-02-12 09:56:53 | 桜ヶ丘9条の会
膨らむ防衛費、届かぬ管理 装備品でまた26億円水増し 

2018/2/12 中日新聞

 防衛装備庁は先月、東京都にある精密機械製造会社「東京航空計器」が、航空自衛隊の戦闘機の修理費などを水増し請求していたとの調査結果を発表した。六年前に問題になった三菱電機などによる過大請求を受け、防衛省は再発防止策を打ち出したが、根本的な改善にはほど遠い実態が露呈した。政府予算案で防衛費が過去最高の五兆一千九百十一億円に達する中、コスト管理のあり方は置き去りになっている。

■同じパターン

 過大請求二十六億円、ペナルティーの違約金など含め計七十億円を国に納付させた-。

 防衛装備庁が先月十七日に発表した東京航空計器の水増し請求の内容だ。不正は二〇〇九年度からの八年間に及び、戦闘機の機器製造や修理などで工数(作業の時間、人数など)を偽って申告。記録が残っていた三百四十件の契約で不正を認定したが、さらに一九八〇年代から行われていた可能性があるという。

 工数の水増しは一二年、三菱電機(東京都)が計二百四十八億円に上る不正をしていたことが内部通報をきっかけに判明した。その後も一三年、島津製作所(京都市)で同様の工数水増しによる九十三億円の不正請求が発覚した。同じようなパターンが繰り返されている。

■年6700件

 防衛省は三菱電機の問題を受け、抜き打ち調査の拡大など再発防止検討結果をまとめている。

 しかし、調査担当の職員は約三十人ほど。一六年度実績で年間に約六千七百件、金額で二兆円近くに上る契約があり、各企業への調査はサンプル抽出にとどまっている。

 また、データ上のつじつまが合っていれば、基本的に問題視しないという。装備庁調達企画課の担当者は「検査する人手がとても足りない。企業側の性善説に立たざるを得ない」と話す。東京航空計器にも一二、一三年度に調査を実施したが、不正があった契約は調査対象外だった。

 今回の問題を受け、新年度から新たに情報機器に詳しい「システム監査検査官」を配置して監視を強めるが、総人員は変わらない。膨大な件数をどこまでチェックできるかは未知数だ。

■透明性確保を

 防衛省は発注時に必要となる工数を見積もるが、そもそも企業側の事情が反映しやすい。

 今回のように継続的な作業では、算出の基になるのは過去の実績という。過去から不正が行われていれば、事実とは異なる実績を基にした見積もりを作成することになる。

 防衛産業に詳しい拓殖大の佐藤丙午(へいご)教授は「防衛産業は防衛省の要求に応えられる企業の数が限られ、省側があまり厳しく追及しにくい面はある。一方で企業側には、契約に含まれない試験段階のコストなどをどこかで回収しなければ、商売が成り立たないという感覚はある」と指摘する。

 その上で「開発から製造、廃棄に至るまでの全体のコストについて透明性を高め、必要なら契約方式の見直しも考えるべきだ」との見方を示した。

 (原昌志)

繰り返される不正 組織的隠ぺいも

 防衛装備品の調達を巡っては1998年、旧防衛庁調達実施本部の幹部らが、防衛産業4社の装備品水増し請求に対する返納額を不当に減額したとして、東京地検特捜部に逮捕された背任・汚職事件があり、同庁の組織的な証拠隠滅工作も発覚した。

 2007年には、防衛専門商社に契約で便宜を図るなどの見返りに賄賂を受け取ったとして、元防衛事務次官が逮捕された。商社側は装備品代金の水増し請求もしていた。

 調査結果が先月発表された東京航空計器の過大請求では、戦闘機などの酸素供給装置や計器類の製造や修理、点検で工数を水増しして、防衛省から不正に作業費を受け取っていた。現場作業員は正しい実績を記録していたが、管理部門で改ざん。防衛装備庁に対しては「民間の仕事の赤字を埋めるためだった」と説明した。社内の経理システム更新時に判明し、昨年1月に自主申告していた。
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