統幕長まるで”軍人政治家”(2015年9月3日しんぶん赤旗)

2015-09-09 13:09:51 | 桜ヶ丘9条の会
統幕長 まるで“軍人政治家”

「新基地」強力に推進 オスプレイの不安一蹴

仁比氏暴露の文書

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 2日の参院安保法制特別委員会で日本共産党の仁比聡平議員が暴露した一連の会談記録は、国民も憲法も無視して日米同盟強化に暴走する日米制服組の生々しい本音を伝える異例の内部文書です。「政治的中立性」が厳しく問われるべき自衛隊のトップである河野克俊統合幕僚長が、ルールを自ら踏みにじって、政治的見解を米軍幹部らに繰り返し伝えるという“軍人政治家”ぶりを露呈しています。


 記録によると、河野氏はオディエルノ陸軍参謀総長と昨年12月17日に会談し、戦争法案について「来年夏までには終了する」との見通しを伝えました。

 3日前の14日に投開票された総選挙での自民党公約集では、「安全保障法制」の策定時期には言及していません。安倍首相が年明けの通常国会への法案準備を明言したのも、第3次内閣が発足した昨年12月24日の記者会見です。法案の閣議決定(5月14日)はおろか、与党協議も行われていません。

 12月18日のダンフォード海兵隊司令官との会談では、河野氏は沖縄県名護市辺野古への米軍新基地建設や、キャンプ・ハンセン(同県金武(きん)町など)、キャンプ・シュワブ(同県名護市など)での「(基地の日米)共同使用が実現すれば、…沖縄の住民感情も好転するのではないか」と発言しています。

 12年に統幕が作成した内部文書(日本共産党・穀田恵二衆院議員が入手)では、これらの米軍基地内に陸上自衛隊の部隊が常駐して共同基地化する構想が示されており、“軍軍”同士で秘密裏に構想の検討を進めていることを改めて裏付けるものです。


 国民も沖縄県民も無視して、どこまでも米軍にすり寄る発言はこれにとどまりません。

 昨年11月の沖縄知事選では、辺野古新基地反対を掲げた翁長雄志氏が県民の圧倒的民意で勝利しました。にもかかわらず、河野氏は米兵の夜間外出禁止など、勤務時間外行動指針(リバティー・ポリシー)の順守による事件・事故防止という“選挙協力”に感謝を伝達しています。米軍の“選挙協力”に感謝するなど、主権放棄そのものです。

 その上、辺野古新基地については「政治レベルの議論だ」としながら、「安倍政権は(新基地を)強力に推進するであろう」と“政治家”顔負けの見通しまで述べています。

 さらにワーク国防副長官との会談では、墜落事故が相次ぐ垂直離着陸機オスプレイについて「国民の不安は低減されたか」と問われ、河野氏は「以前に比べ低減された」「不安全性を煽(あお)るのは一部の活動家だけである」と自説を披露し、国民の懸念や批判を切って捨てています。

 オスプレイの日米共通の整備拠点について河野氏は「日本に置いて頂けると更なる運用性の向上になる」と複数の米軍幹部に繰り返し“誘致”し、こびる姿勢を鮮明にしています。

派兵を意識

 国会でこれまで説明されたこともない軍事政策の方向性を、米側に説明している場面も散見されます。

 米軍トップのデンプシー統合参謀本部議長との会談では、海賊対処の拠点として国会で説明してきたアフリカ北東部・ジブチの自衛隊基地について、「今後の幅広い活動のため利用を拡大させたい」と用途を拡大させる方針を明言。戦争法案による海外派兵の拡大に備え、中東・アフリカをにらむ作戦拠点として基地強化していく考えを早くも伝達しています。

河野統合幕僚長の訪米会談記録概要(抜粋)

 防衛省統合幕僚監部の河野克俊統合幕僚長が昨年12月に行った訪米での会談記録概要(抜粋)は次の通り。(場所はいずれも米国防総省)

 ●17日、オディエルノ陸軍参謀総長

 河野 集団的自衛権の行使が可能になった場合は米軍と自衛隊との協力関係はより深化するものと考える。

 オディエルノ 現在、ガイドラインや安保法制について取り組んでいると思うが予定通りに進んでいるか? 何か問題はあるか?

 河野 与党の勝利により来年夏までには終了するものと考えている。

 ●18日、ワーク国防副長官

 河野 今回F35(ステルス戦闘機)のリージョナルデポ(地域の整備工場)が日本に決まり…オスプレイのリージョナルデポについても日本に置いて頂けると更なる運用性の向上となる。

 ワーク (オスプレイが)初期の事故により不公平な評価を受けることとなり残念である。

 河野 オスプレイに関しての不安全性をあおるのは一部の活動家だけである。

 ●18日、デンプシー統合参謀本部議長

 河野 AFRICOM(米アフリカ軍司令部)に連絡官を常駐させたいと考えている。またジブチは海賊対処の拠点ではあるが、今後の幅広い活動のためジブチの利用を拡大させたい。

 ●18日、ダンフォード海兵隊司令官

 河野 沖縄県知事選時にはリバティーポリシー(在日米軍勤務時間外行動指針)の実施、地域情勢に配慮して頂き感謝する。結果として普天間移設反対派の知事が就任したが、辺野古への移設問題は政治レベルの議論であるので方針の変更はないとの認識である。安倍政権は強力に推進するであろう。

 ダンフォード 安倍総理は移設を現行計画どおり実施し、沖縄の基地負担を減じる努力をしていくと理解している。

 河野 辺野古への移転やキャンプハンセン、キャンプシュワブでの共同使用が実現すれば、米海兵隊と陸上自衛隊との協力が一層深化すると認識している。これにより沖縄の住民感情も好転するのではないか。

論戦なき総裁選の憂い 安倍首相が再選(2015年9月9日中日新聞)

2015-09-09 09:02:43 | 桜ヶ丘9条の会
論戦なき総裁選の憂い 安倍首相が再選 

2015/9/9 紙面から
 安倍晋三自民党総裁の無投票再選が決まり、立ち止まって考える機会は失われた。安倍政権が国民の心からこれ以上離れることはないのか、憂いは深い。

 推薦人集めに最後まで奔走していた野田聖子前総務会長が立候補を断念し、安倍首相(党総裁)をはじめとする陣営の面々は安堵(あんど)していることだろう。

 自身の総裁任期いっぱいを務めての無投票再選は、任期が三年に延長されて以降、初めてだ。

 首相は再選を受けて「衆院選の公約を進めている中、一致結束していこうという多くの議員の考え方の結果だ」と語った。

党員らは投票できず

 自民党総裁選は一政党の党首選だが、政権与党にある現在、首相選びや政権の中間評価となる重要な選挙だ。共同記者会見や各地での街頭演説、テレビ出演などもあり、国民の関心を広く集める。

 国会議員に加えて、八十九万人余りの党員・党友も投票でき、党員らを介して、その時々の民意をある程度反映した選挙となる。

 振り返れば、安倍氏は総裁に返り咲いた二〇一二年総裁選の第一回投票で、党員らの投票に基づく地方票の過半数を制した石破茂地方創生担当相に後塵(こうじん)を拝し、国会議員のみによる決選投票で逆転当選した経緯がある。党員らは石破氏を選んだが、安倍氏は国会議員らの「永田町の論理」で総裁に就いたとも言える。

 党員らは今、安倍氏を総裁にふさわしいと思っているのか。憲法違反と指摘される安全保障法制関連法案や外交、アベノミクス(首相主導の経済政策)、原発・エネルギー政策、環太平洋連携協定(TPP)をこのまま進めていいと考えているのか。

 今回、無投票となったことで、候補者同士の論戦の機会も、党員らが意思表示する機会も失われたことは残念でならない。

異論認めぬ単色政治

 今年十一月、結党六十年を迎える自民党は、党内で実力者が競い合うことで活力を維持してきた。それが長く政権を託されてきた理由の一つだろう。

 その節目の年の総裁選で現職総裁以外、候補者がいなかった背景には、衆院への小選挙区制導入以降、自民党政治の弊害とされた派閥が弱体化し、総裁たる首相への権力集中が進んだことがある。

 今回の総裁選で、党内各派閥・グループは次々と首相の再選支持を表明した。谷垣禎一幹事長は「必ずしも無理に争いをつくる必要はないのではないか」と語った。まるで党全体が対立候補を抑え込むような動きだ。

 自ら立候補したり、安倍氏の対立候補を推して敗れたりすれば、安倍政権の間、冷遇される恐れがある。ならば首相支持を鮮明にして総裁選後に予定される内閣改造・党役員人事でポストを得た方が得策との判断が働いたのだろう。

 政治腐敗の元凶とされた派閥の弱体化は歓迎すべきだが、総裁や首相官邸への過度の権力集中は、異論を認めない「単色の政治」を招く。多様さを失いつつある党内の現状に、あまりにも無自覚ではないのか。

 もっとも野田氏も準備不足だった面は否めない。首相選びに直結する総裁候補たるには、地道に党内の基盤を固め、党員らに政策を訴え、支持を得ることが先決だ。

 安倍氏の総裁任期は一八年九月までの三年間。来年夏の参院選を乗り切れば、一八年十二月の衆院議員としての任期近くまで、首相を務めることができる。

 首相は一連の国政選挙と総裁選で国民や党員らの信任を得たとして、自らが掲げる政策の実現を目指すのだろう。気になるのは、国民の声に耳を傾けようとしない強引な政治手法だ。

 安保法案には報道各社の世論調査で国民の多数が反対しているにもかかわらず、聞き入れようとせず、今国会中の法案成立を強行しようとしている。

 公約に掲げた昨年の衆院選に勝利したので、推進するのは当然という論法だが、米軍普天間飛行場返還問題では、沖縄の選挙で繰り返し示された県民の民意を無視して名護市辺野古への「県内移設」を強引に進めようとしている。二重基準と言わずして何と言う。

政策論争の機会失う

 中国経済の減速で世界経済は不安定化し、日本の景気回復も足踏みしている。国内ではアベノミクスの副作用で格差拡大も指摘される。従来の経済政策の延長線上でいいわけがない。

 首相は無投票再選に安堵せず、日本の針路を論じ、政策を修正しうる機会が失われたことを、むしろ悔やむべきではないか。

 安倍政権を見る国民の目は、発足当初よりも厳しくなっている。これまでの「聞く耳もたず」の政治姿勢を改め、国民と真摯(しんし)に向き合うことを、この機に求めたい。