2104年4月23日、JR東海は、国にリニア環境影響評価書を提出したが、内容は、沿線住民が心配する問題に対する対策は、ほとんど何もなかった。
(2014年4月24日付中日新聞と東濃版)
可児市では、市長初め、可児市議会、地元住民の意見はほとんど反映されておらず、久々利大萱地区の地下化や古窯群初めとする文化が破壊されるという要求についてもまったく変わらない評価書が、国に提出された。地下化要求の地元、久々利自治連合会の田口誠一会長は、「地元が期待する内容は何一つなかった」、「どうやって工事をして行くのかがまったく示されておらず、残土の問題も気になる。橋脚の間隔を伸ばしたとしても、工事のやり方によっては大変な環境の破壊になるのではないか」と懸念した。
市議会の川上文治議長は「地下化がベストだという議会の共通認識は今も変わらない」「今後出される国の意見において、文化や環境保全について十分配慮されることを期待する」とコメントした。
この外、4月24日には、各種の記事が掲載された。
地元関係者から注文も リニア評価書
2014/4/24 紙面から
環境影響評価書の内容を説明するJR東海の林保弘担当部長(左)=県庁で
環境影響評価書の内容を説明するJR東海の林保弘担当部長(左)=県庁で
二〇二七年に東京-名古屋間で開業予定のリニア中央新幹線で、JR東海が二十三日に国土交通省に提出した建設工事などに関する環境影響評価(アセスメント)書。県内では、古田肇知事の意見を受けて三月時点から一部を修正したものの、沿線の関係者からは反発や丁寧な説明を求める声も上がった。この日は県庁でも、同社の担当者二人が会見。環境影響評価準備書に対する三月の知事の意見を考慮して評価書を作成したことを説明した。
ウラン鉱床が点在する東濃地域のトンネル掘削工事では事前にボーリング調査を行い、ウラン濃度など地質の状況を把握することを評価書に盛り込んだ。工事の掘削土から高い放射線量を検出した場合、覆土するなどの対策も以前より詳しく示した。
多治見市の市民団体「多治見を放射能から守ろう!市民の会」の井上敏夫代表(64)は「一歩前進」と受けとめつつ「ボーリング調査の結果は着工前に詳しく地元住民に説明してほしい」と注文した。
県内のリニア工事では千二百八十万立方メートルの残土が発生する見通し。ただ、評価書では残土置き場の場所や内容は不明なままだ。JR東海は自社の再利用分以外は、公共工事などに活用してもらう考えで、残土置き場選定でも沿線市町に協力を依頼している。
中間駅や車両基地が設置される中津川市リニア推進課の担当者は「早く残土に関する内容を決め、周辺環境への影響や対策を示してほしい」と求めた。
一方、美濃焼関連史跡がある可児市久々利地区の一・二キロ区間では、史跡保護を理由に地下トンネル化を望む声を受け、区間の一部で橋脚の数を減らす方針も。重要な史跡が見つかれば橋脚の位置の調整など回避策も検討する。地元の陶芸家加藤弥右衛門さん(72)は「橋脚の数がどうだろうが、目の前の風景、静かな環境が台無しになるのは変わらない」と憤った。
JR東海は今後、国交相と環境相の意見を受けて評価書を確定し今年秋の着工を目指す。古田知事は「県として言うべきことがあれば積極的に意見する」とコメントした。
「内容変わっていない」 リニア評価書に沿線住民
2014/4/24 紙面から
リニア中央新幹線の環境影響評価(アセスメント)をめぐり、JR東海は二十三日、知事意見などを基に修正した環境影響評価書を国土交通相に送付した。今回の評価書に対し、県の担当者は評価する受け止めを示す一方、沿線の市民団体からは「準備書の段階から内容が変わっていない」との不満の声も上がった。
県は三月、JR東海の環境影響評価の準備書に対し、工事計画の具体化や準絶滅危惧種のオオタカへの影響調査などを求める五十五項目の知事意見を提出していた。
JR東海は今回、リニア実験線の測定結果のデータを盛り込み、住民から不安の多かった電磁波の影響や騒音について「健康に影響はない」とした。
関連施設に関しては、長さ約一キロにわたる名古屋市ターミナル駅の範囲、同市中区にできる変電所内の建物の配置図などを具体的に示した。
二〇二七年のリニア開業に向け、本年度から設置された県リニア事業推進室は「事業全体の流れとして着実に進んでいる」とし、県環境活動推進課は「計画を詰めていく中で県の要望を反映してもらえると思う」と話した。
準備書では情報が不十分としていた大村秀章知事は「今後ともしっかりと対応していただくよう求めたい」とコメントした。
一方、春日井市の市民団体「リニア新幹線を考える会」の竹内純子代表(59)は、亜炭鉱採掘跡周辺で綿密な空洞調査を検討するとのJR東海の方針に「これまでの内容と変わっていない印象」と指摘。
工事で地盤沈下の心配があるとして「地元住民に悪影響が出ないように、春日井市役所を通じて適切な工事を求めたい」と語った。
県内ルートは名古屋市と春日井市を通る二十五キロ。ルートの大半が地下四十メートルより深い大深度地下トンネルとなっている。
豊丘で削減、検討 リニア、トンネル掘削用非常口
2014/4/24 紙面から
リニア中央新幹線計画で、JR東海は二十三日、長野市内で会見し、国に提出した環境影響評価書の中身を説明した。県が地元の要望を踏まえ三月にまとめた知事意見を反映し、トンネル掘削用の非常口をめぐり、豊丘村は一カ所の削減が検討されたが、南木曽町の削減要望は聞き入れられなかった。町関係者は「引き続き削減の要望を続けたい」と話している。
県内は沿線最多の十一カ所の非常口が設けられる。町内に二カ所の非常口を抱える南木曽町は強く削減を要望したため、県はJRに対し非常口の削減を求めていた。
評価書でJR側は、非常口を削減した場合、工期にどれだけの遅れが生じるか四ケースを想定し検討。豊丘村の一カ所ならば工期の遅れは一年にとどまるため、今後の工事計画の具体化の中で検討の余地があるという。
一方で、南木曽町の二つの非常口は、中央アルプスなどを通過する長いトンネルの掘削に使われるため、なくしてしまうと工期が大幅に遅れるという。
大鹿村で一日最大千七百台とされる工事用車両の集中緩和策では、非常口近くに発生土の仮置き場を設置する。土砂運搬の時期を調整したり、工期に余裕のある工事を遅らせたりすることにより、台数の集中を防ぐ。
ただし、発生土の搬出先や仮置き場の場所が決まっていないことを理由に、JR側はどの程度削減するのか明らかにしなかった。
このほか、大鹿村の小渋川地点をトンネル化する要望に対しては、その先に位置する南アルプスをより深く掘削する必要があり、工事が難しくなるため採用するべきでないと結論づけた。
一日あたりの車両通行台数や通行時間の協定を地元自治体と結ぶことには、要望があれば各市町村と相互に確認するという。
JR東海の担当者は「評価書は現時点でできるベストの内容。工事の認可後には、工事車両の通過台数や仮置き場など、より詳しく地元に説明できる」と話した。
(小西数紀)
◆首長ら「危険性は」「工期延びる」
JR東海が示した評価書では、知事意見がある程度は反映された一方で、小渋川地点のトンネル化や南木曽町での非常口削減は見送られた。沿線の首長からは「将来の危険性はぬぐえない」「工期が延びる方がマイナス」と心配する声が上がった。
大鹿村の小渋川橋梁のトンネル化を求めていた柳島貞康村長は「JRは安全性は高いと言うが、深層崩壊などの危険性が指摘されている。考え違いではないか」と話す。
JRはトンネル化を避ける理由に、工事の難しさや工期の延長などを挙げたが、柳島村長は「安全や住民生活を守ることが最優先だ」と口調を強めた。
二カ所の非常口を一カ所に減らすよう要望していた南木曽町の宮川正光町長は「認められなかったのは残念。今後も要望活動を続けていく」と述べた。
一方で、JRが非常口の削減を検討するとした豊丘村は削減の要望をしていない。下平喜隆村長は「山の中にあるので、ここを削減しても住民生活への影響は少ない。工期が延びる方がマイナス。村の希望は、短い工期で生活道路に残土を出さず、住民生活への影響を減らすことなのに」と困惑した。
飯田市の牧野光朗市長は「知事意見の多くに対応している。工事用車両の集中緩和策に仮置き場を設置するのは踏み込んだ内容だ」と評価する。今後、内容を精査した上で、必要な要望があれば県などと連携してJRと協議するという。
(西川正志、石川才子、吉川翔大)
(2014年4月24日付中日新聞と東濃版)
可児市では、市長初め、可児市議会、地元住民の意見はほとんど反映されておらず、久々利大萱地区の地下化や古窯群初めとする文化が破壊されるという要求についてもまったく変わらない評価書が、国に提出された。地下化要求の地元、久々利自治連合会の田口誠一会長は、「地元が期待する内容は何一つなかった」、「どうやって工事をして行くのかがまったく示されておらず、残土の問題も気になる。橋脚の間隔を伸ばしたとしても、工事のやり方によっては大変な環境の破壊になるのではないか」と懸念した。
市議会の川上文治議長は「地下化がベストだという議会の共通認識は今も変わらない」「今後出される国の意見において、文化や環境保全について十分配慮されることを期待する」とコメントした。
この外、4月24日には、各種の記事が掲載された。
地元関係者から注文も リニア評価書
2014/4/24 紙面から
環境影響評価書の内容を説明するJR東海の林保弘担当部長(左)=県庁で
環境影響評価書の内容を説明するJR東海の林保弘担当部長(左)=県庁で
二〇二七年に東京-名古屋間で開業予定のリニア中央新幹線で、JR東海が二十三日に国土交通省に提出した建設工事などに関する環境影響評価(アセスメント)書。県内では、古田肇知事の意見を受けて三月時点から一部を修正したものの、沿線の関係者からは反発や丁寧な説明を求める声も上がった。この日は県庁でも、同社の担当者二人が会見。環境影響評価準備書に対する三月の知事の意見を考慮して評価書を作成したことを説明した。
ウラン鉱床が点在する東濃地域のトンネル掘削工事では事前にボーリング調査を行い、ウラン濃度など地質の状況を把握することを評価書に盛り込んだ。工事の掘削土から高い放射線量を検出した場合、覆土するなどの対策も以前より詳しく示した。
多治見市の市民団体「多治見を放射能から守ろう!市民の会」の井上敏夫代表(64)は「一歩前進」と受けとめつつ「ボーリング調査の結果は着工前に詳しく地元住民に説明してほしい」と注文した。
県内のリニア工事では千二百八十万立方メートルの残土が発生する見通し。ただ、評価書では残土置き場の場所や内容は不明なままだ。JR東海は自社の再利用分以外は、公共工事などに活用してもらう考えで、残土置き場選定でも沿線市町に協力を依頼している。
中間駅や車両基地が設置される中津川市リニア推進課の担当者は「早く残土に関する内容を決め、周辺環境への影響や対策を示してほしい」と求めた。
一方、美濃焼関連史跡がある可児市久々利地区の一・二キロ区間では、史跡保護を理由に地下トンネル化を望む声を受け、区間の一部で橋脚の数を減らす方針も。重要な史跡が見つかれば橋脚の位置の調整など回避策も検討する。地元の陶芸家加藤弥右衛門さん(72)は「橋脚の数がどうだろうが、目の前の風景、静かな環境が台無しになるのは変わらない」と憤った。
JR東海は今後、国交相と環境相の意見を受けて評価書を確定し今年秋の着工を目指す。古田知事は「県として言うべきことがあれば積極的に意見する」とコメントした。
「内容変わっていない」 リニア評価書に沿線住民
2014/4/24 紙面から
リニア中央新幹線の環境影響評価(アセスメント)をめぐり、JR東海は二十三日、知事意見などを基に修正した環境影響評価書を国土交通相に送付した。今回の評価書に対し、県の担当者は評価する受け止めを示す一方、沿線の市民団体からは「準備書の段階から内容が変わっていない」との不満の声も上がった。
県は三月、JR東海の環境影響評価の準備書に対し、工事計画の具体化や準絶滅危惧種のオオタカへの影響調査などを求める五十五項目の知事意見を提出していた。
JR東海は今回、リニア実験線の測定結果のデータを盛り込み、住民から不安の多かった電磁波の影響や騒音について「健康に影響はない」とした。
関連施設に関しては、長さ約一キロにわたる名古屋市ターミナル駅の範囲、同市中区にできる変電所内の建物の配置図などを具体的に示した。
二〇二七年のリニア開業に向け、本年度から設置された県リニア事業推進室は「事業全体の流れとして着実に進んでいる」とし、県環境活動推進課は「計画を詰めていく中で県の要望を反映してもらえると思う」と話した。
準備書では情報が不十分としていた大村秀章知事は「今後ともしっかりと対応していただくよう求めたい」とコメントした。
一方、春日井市の市民団体「リニア新幹線を考える会」の竹内純子代表(59)は、亜炭鉱採掘跡周辺で綿密な空洞調査を検討するとのJR東海の方針に「これまでの内容と変わっていない印象」と指摘。
工事で地盤沈下の心配があるとして「地元住民に悪影響が出ないように、春日井市役所を通じて適切な工事を求めたい」と語った。
県内ルートは名古屋市と春日井市を通る二十五キロ。ルートの大半が地下四十メートルより深い大深度地下トンネルとなっている。
豊丘で削減、検討 リニア、トンネル掘削用非常口
2014/4/24 紙面から
リニア中央新幹線計画で、JR東海は二十三日、長野市内で会見し、国に提出した環境影響評価書の中身を説明した。県が地元の要望を踏まえ三月にまとめた知事意見を反映し、トンネル掘削用の非常口をめぐり、豊丘村は一カ所の削減が検討されたが、南木曽町の削減要望は聞き入れられなかった。町関係者は「引き続き削減の要望を続けたい」と話している。
県内は沿線最多の十一カ所の非常口が設けられる。町内に二カ所の非常口を抱える南木曽町は強く削減を要望したため、県はJRに対し非常口の削減を求めていた。
評価書でJR側は、非常口を削減した場合、工期にどれだけの遅れが生じるか四ケースを想定し検討。豊丘村の一カ所ならば工期の遅れは一年にとどまるため、今後の工事計画の具体化の中で検討の余地があるという。
一方で、南木曽町の二つの非常口は、中央アルプスなどを通過する長いトンネルの掘削に使われるため、なくしてしまうと工期が大幅に遅れるという。
大鹿村で一日最大千七百台とされる工事用車両の集中緩和策では、非常口近くに発生土の仮置き場を設置する。土砂運搬の時期を調整したり、工期に余裕のある工事を遅らせたりすることにより、台数の集中を防ぐ。
ただし、発生土の搬出先や仮置き場の場所が決まっていないことを理由に、JR側はどの程度削減するのか明らかにしなかった。
このほか、大鹿村の小渋川地点をトンネル化する要望に対しては、その先に位置する南アルプスをより深く掘削する必要があり、工事が難しくなるため採用するべきでないと結論づけた。
一日あたりの車両通行台数や通行時間の協定を地元自治体と結ぶことには、要望があれば各市町村と相互に確認するという。
JR東海の担当者は「評価書は現時点でできるベストの内容。工事の認可後には、工事車両の通過台数や仮置き場など、より詳しく地元に説明できる」と話した。
(小西数紀)
◆首長ら「危険性は」「工期延びる」
JR東海が示した評価書では、知事意見がある程度は反映された一方で、小渋川地点のトンネル化や南木曽町での非常口削減は見送られた。沿線の首長からは「将来の危険性はぬぐえない」「工期が延びる方がマイナス」と心配する声が上がった。
大鹿村の小渋川橋梁のトンネル化を求めていた柳島貞康村長は「JRは安全性は高いと言うが、深層崩壊などの危険性が指摘されている。考え違いではないか」と話す。
JRはトンネル化を避ける理由に、工事の難しさや工期の延長などを挙げたが、柳島村長は「安全や住民生活を守ることが最優先だ」と口調を強めた。
二カ所の非常口を一カ所に減らすよう要望していた南木曽町の宮川正光町長は「認められなかったのは残念。今後も要望活動を続けていく」と述べた。
一方で、JRが非常口の削減を検討するとした豊丘村は削減の要望をしていない。下平喜隆村長は「山の中にあるので、ここを削減しても住民生活への影響は少ない。工期が延びる方がマイナス。村の希望は、短い工期で生活道路に残土を出さず、住民生活への影響を減らすことなのに」と困惑した。
飯田市の牧野光朗市長は「知事意見の多くに対応している。工事用車両の集中緩和策に仮置き場を設置するのは踏み込んだ内容だ」と評価する。今後、内容を精査した上で、必要な要望があれば県などと連携してJRと協議するという。
(西川正志、石川才子、吉川翔大)