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特定秘密保護法の廃止を求めるアピール(法律家7団体)

2014-04-22 14:50:35 | 日記
特定秘密保護法の廃止を求めるアピール
2013年12月6日、自民党と公明党によって、特定秘密保護法が強行採決されまし た。法案が国会に提出されると反対の声は各地・各分野に広がり、国会を包囲する行動が 連日展開され、世論調査では過半数の国民が法案に反対しました。こうした主権者である 国民の声を無視した強行採決は、議会制民主主義の根本に反する暴挙にほかなりません。
特定秘密保護法では、行政機関の長の裁量によって、防衛・外交・スパイ・テロにかか わる広範な情報が「特定秘密」に指定され、市民やマスメディアは「何が秘密か」すら知 ることができません。秘密を取り扱う公務員や労働者、その家族は、「適性評価」による 監視と分断のもとに置かれます。漏えいや秘密を取得しようとする行為、その共謀・教唆 ・扇動などが広く刑事罰の対象とされます。同法は、国際的基準であるツワネ原則からも 大きく逸脱したものであり、ひとたび同法が施行されれば、取材・報道の自由その他一切 の表現の自由や国民の知る権利は、警察による取り締まりと処罰を恐れて大きく制約され、 国民主権の原理を支える基盤は完全に切り崩されることになります。
特定秘密保護法は、一部の権力による情報の独占と恣意的な操作に道を開くものであり、 先の臨時国会で成立した「国家安全保障会議(NSC)設置法」と次に予定されている「国 家安全保障基本法案」と三位一体で集団的自衛権の行使を可能とする軍事立法にほかなり ません。これらが完成するとき、明文改憲への道が開かれ、日本は集団的自衛権を口実に アメリカと一緒に戦争をする国となってしまいます。
同時に、石破茂自民党幹事長の「デモはテロ」であるとする発言が示すように、特定秘 密保護法は、政府にとって不都合な国民の言論活動を警察権力により封じることを目的と する治安立法であり、政府に反対する声が「テロ」として排斥され、公安警察と密告・監 視が横行する社会が生み出されます。
いま、民意を無視した暴挙を批判し、秘密保護法廃止を求める運動が急速に広がってい ます。廃止を求める地方議会の決議や意見書は100自治体を超え、廃止を求める署名が 取り組まれています。2014年1月24日の通常国会開会日には廃止を求める3000 名を超える市民が国会を包囲しました。
他方、政府・与党は、「情報保全諮問会議」などを始動させ、施行の準備を進めていま す。また、「積極的平和主義」を掲げる「国家安全保障戦略」などを策定し、米国ととも に海外で戦争をする「集団的自衛権」の行使容認に踏み切ろうとしています。
秘密保護法を廃止させることは、「知る権利」を守り、民主政治を発展させるうえでも、 戦争の道を阻止するうえでも、決定的に重要な意味をもっています。
私たち法律家7団体は、憲法の基本原理である平和主義、基本的人権の尊重、国民主権 を否定する特定秘密保護法の施行前の廃止を求め、広範な国民の皆さんにさらなるたたか いを呼びかけるとともに、法律家7団体も全力でたたかっていく決意をここに表明します。

                                               2014年3月5日

社会文化法律センター 代表理事 中野 新・宮里 邦雄
自由法曹団 団長篠原義仁
青年法律家協会弁護士学者合同部会 議長 原 和 良
日本国際法律家協会 会長大熊政一
日本反核法律家協会 会 長 佐々木 猛 也
日本民主法律家協会 理事長 渡 辺 治
日本労働弁護団 会長鵜飼良昭

憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使容認に反対する声明(自由法曹団 2014年3月13日)

2014-04-14 17:57:53 | 日記
集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈の変更は、歴代政府が禁じてきた海外での武力行使に道を開き、国土防衛に徹する「専守防衛」の基本方針を転換し、憲法9条を死文化させるものだと自由法曹団は強く反対している。

憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使容認に反対する声明
2014年2月12日,衆院予算委員会で,安倍首相は,4月に安保法制懇から集団的自 衛権の行使容認の報告書の提出を受け,夏頃には集団的自衛権の行使容認を閣議決定で決 める意向を表明した。
安倍首相は,対中防衛のための日米同盟の強化を喧伝し,今秋の臨時国会で自衛隊法や 周辺事態法などの改正案を成立させ,年末までに行う「日米防衛協力のための指針(ガイ ドライン)」の再改定に行使容認を組み込もうと,解釈改憲の実現を急いでいる。
時の政府が,憲法の解釈を変更し集団的自衛権の行使を容認することは,武力の行使を 禁止した憲法9条に違反し,「国家権力の濫用を憲法で規律する」という立憲主義を破壊す るものであり,断じて許されない。
歴代の政府は,我が国が行使しうる自衛権は,自国への急迫不正の侵害があった場合に 実力をもって防衛すること(個別的自衛権)に限定され,自国への攻撃を条件としない集 団的自衛権は我が国を防衛するための必要最小限度の範囲を超えるものであり,憲法9条 上許されないのとの憲法解釈の見解を一貫して維持してきた。
また,歴代の政府は解釈改憲という手法も否定してきた。集団的自衛権の憲法解釈を変 更することに「自由にこれを変更するということができるような性質のものではない」(1 996年政府答弁)が裏付けている。
集団的自衛権は,他国から何ら攻撃されていなくても,「自衛」の名のもとに海外での戦 争や武力行使を実現することにある。過去に,ハンガリー動乱(1956年・旧ソ連),ベ トナム戦争(1964~1975年・アメリカ),チェコスロバキア侵攻・プラハの春(1 968年・旧ソ連),アフガニスタン侵攻(1979~1988年・旧ソ連),ニカラグア 軍事介入(1981年・アメリカ),アフガニスタン戦争(2001年~・アメリカ),イ ラク戦争(2003年~・アメリカ)など,アメリカや旧ソ連といった大国が集団的自衛 権を口実に海外での戦争や武力行使を繰り返してきたのである。
集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈の変更は,歴代政府が禁じてきた海外での武力 行使に道を開き,国土防衛に徹する「専守防衛」の基本方針を転換し,憲法9条を死文化 させる。それにもかかわらず,安倍首相は「最高責任者は私だ」「今までの解釈のままでい いのか」と発言した。安倍首相の発言は,権力の濫用を防ぐ憲法を時々の政権の考え方次 第で自由に変更できるものだと誤解したものであり,立憲主義を破壊するものである。
また,安倍首相は対中防衛のための日米同盟の強化を喧伝するが,このタイミングで日 本が集団的自衛権行使を容認するようになれば,一段と日中関係は悪化する。
憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使容認は,憲法9条に違反し,立憲主義を破壊 するもので,自由法曹団は,これに強く反対する。
                             2014年3月13日 自由法曹団 団長 篠原義仁

原発事故の経産省や東京電力の幹部たち責任不問で、天下り。(中日新聞2014年3月18日朝刊)

2014-03-18 10:56:10 | 日記
13万人以上の被害者が先行きの見通しもなく、避難生活を続けるなか、事故から3年も経ったいま、彼ら事故を引き起こした加害者たちは、勧奨退職扱いで6000万~8000万もの退職金を受け取ったうえ、大手企業へ天下りや再就職をしていることを日本人は知っているだろうか。


原発事故時の幹部、責任不問で天下り               

2014/3/18 朝刊

 福島原発事故から三年が過ぎた。原発政策を推進し、事故当時に経済産業省や東京電力の幹部だった面々は、その後、大手企業などに天下りや再就職をしている。事故収束の見通しが立たず、住民十三万人以上が避難生活を続ける今、彼らは何を思うのか。

■1000万円以上も退職金上乗せ

 「応答できませんので、お帰りください」

 今月八日の土曜日の午前。神奈川県内の松永和夫・元経済産業次官宅を訪ね、インターホンで事故から三年の心境を尋ねると、その言葉だけが返ってきた。

 当時、経産省の事務方トップだった松永氏は二〇一一年八月、後手に回った事故対応や、やらせシンポジウム問題の責任を問われる形で、就任から、わずか一年で更迭された。退任会見では、被害者に「大変、申し訳ない気持ちでいっぱいだ」と語った。

 その七カ月後、松永氏は、大手損害保険会社「損保ジャパン」の顧問に就任するなど、計四社の顧問と社外取締役に就いた。社外取締役として迎え入れた「住友商事」は「誠実な人格と高い見識があり、適任と判断した」と説明する。

 一一年八月、松永氏とともに資源エネルギー庁の細野哲弘・元長官と、旧原子力安全・保安院の寺坂信昭・元院長の二人も更迭されている。

 松永、細野、寺坂の三氏は、勧奨退職の扱いとなり、自己都合退職より退職金は一千万円以上も上乗せされ、六千万~八千万円程度が支払われたとみられる。

 細野氏は、みずほ銀行の顧問と、みずほ銀が約4%の株式を保有する興銀リースの社外取締役に納まっている。細野氏は取材に「現地の人はお気の毒と思いますが、申し上げることはありません」と話し、事故の責任については「組織に聞いてください」とだけ答えた。

 細野氏は、東電の損害賠償支援スキームを作成した中心人物だ。債権者の大手銀行や株主を免責し、国と電力会社などの出資で設立した原子力損害賠償支援機構が、必要に応じて東電に資金を注入するという内容。東電の経営破綻を回避し、事実上、国民が払う電気料金や税金で支えるという仕組みだ。

 東電の有価証券報告書によれば、みずほ銀は約五千三百億円を東電に長期で貸し付けている。持ち株比率第八位の大株主でもある。東電が経営破綻すれば、債権や株を失う恐れが出る。

 東京ガス子会社の東京エルエヌジータンカーなど三社の顧問に就任した寺坂氏にも取材したが、「申し訳ございませんが、取材には答えていません」と言葉少なだった。

 緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)の情報の公表が遅れた問題について、寺坂氏は国会事故調で「公開されていれば、住民の避難方向などの参考になったかもしれない」と被ばくが拡大した可能性を認めている。

 原発事故直後、旧保安院のスポークスマンを務めた西山英彦・元審議官。女性問題が報じられ、停職一カ月の処分を受けた。その後、環境省の福島除染推進チーム次長を務め、一三年六月に退職した。その三カ月後、自動車部品メーカー「矢崎総業」に入社し、企画室主査に就いている。

■強い利害関係 憤る避難住民

 一方の東京電力。社内で絶大な権力を握っていた勝俣恒久・元会長は一二年六月に「経営責任を取る」として退任。その後も、東海原発などを運営する日本原子力発電(原電)の社外取締役を務めていたが、一三年六月にここも退いた。

 自宅を訪ねると、勝俣氏の妻は「取材は受けないことになっている。今は(仕事は)しておりません。(東電に)行ってもおりません」と話した。

 勝俣氏は一一年三月三十日の記者会見で「社会に心配、迷惑をかけた」と話したが、対応の不手際を問われると、「まずさを感じていない。電気、通信が途絶える厳しい環境のため、作業が遅れた」と反論した。

 事故直後に陣頭指揮を執った清水正孝・元社長は、三月二十九日に体調不良を理由に入院。四月七日に復帰した。事故から一カ月以上すぎてから、福島を訪れ、避難住民に直接、謝罪。「皆さんが、早く故郷に戻れるように全力を尽くしたい」と土下座した。「重い十字架を背負う覚悟」と発言していた。

 清水氏は一一年六月、「広く社会に迷惑をかけたことを鑑み、私がまず、けじめをつけるのが筋と判断した」と辞任。一年後に、東電が筆頭株主の富士石油の社外取締役に就任している。清水氏の自宅を訪れたほか、会社を通じて取材を申し込んだものの、締め切りまでにコメントを得ることはできなかった。

 元経産官僚の古賀茂明氏は「経産省の三人は原発政策を推し進め、事故対応や汚染水対策でも初動でミスを重ねた責任がある。退職金を割り増しされた上に、天下りもして、逃げ切ったという感じだ。結局、経産省は誰も責任を取っていない」と指弾する。

 「細野氏がみずほ銀行に天下りしたのも驚きだ。みずほ銀行は利害関係者そのもの。細野氏らが東電の破綻回避のスキームをつくり、みずほグループの債権を守った」と指摘する。みずほ銀の広報担当者は「(スキームとは)関係ない。経営全般の助言をお願いするため招いた」と説明。古賀氏は「福島復興に協力する国民の善意を悪用し、銀行を助け、国民にツケが回された形だ」と解説した。

 天下りの問題に詳しい兵庫県立大大学院の中野雅至教授は「能力本位の天下りならば、否定はしないが、能力以外の力学が働いているように見える。しがらみのある天下りは、公正な行政をゆがめることになる」と危惧する。「生活に困窮している避難住民の思いを重視していないということだろう」と話す。

 政策研究大学院大学の福井秀夫教授(行政法)は「東電幹部の再就職も問題だ。東電は国から事業の独占を許され、国のてこ入れで成り立つ会社だ。『民間』から『民間』に移るのだから、構わないというわけにはいかない」と批判する。

 松永、寺坂、勝俣、清水の四氏らは、避難住民らでつくる福島原発告訴団に一二年六月、安全対策を取らずに原発政策を進めて事故を起こしたなどとして、業務上過失致死傷罪で告訴された。検察は不起訴にしたが、検察審査会で処分の妥当性を審議している。

 告訴団事務局の地脇美和さん(43)は憤る。「避難住民は、補償の問題でいがみ合ったり、経済的に苦しかったり、傷ついている。天下りする人は、自分はたまたま運が悪かった程度にしか思っていないのだろう。事故の責任が問われないのは、許せない。退職金や報酬を差し出してもらいたいぐらいだ」

 (荒井六貴)

政府の過ちを正せるのは市民だけだ(チュムスキー氏 中日新聞2014年3月8日)

2014-03-12 22:19:31 | 日記
政府は「心配ない」とウソをつく

 「無防備な子どもたちが、放射線の危険にさらされている。恐ろしいことだ」。上智大での講演会で来日したのを機に東京都内のホテルで四日、福島の親子ら三人と面会したチョムスキー氏は嘆いた。

 三人は、福島市に住む武藤恵さん(40)と長女で小学三年生の玲未(りみ)ちゃん(9つ)、福島県郡山市から静岡県富士宮市に自主避難した長谷川克己さん(47)。長谷川さんは妻、小学二年生の長男(8つ)、長女(2つ)の四人暮らしだ。

 武藤さんの自宅は福島第一原発から約六十キロ。「政府は換気扇を閉めて、外出する時はマスクを着けるように、ということしか教えてくれなかった」と当時の混乱を振り返った。

 山形県に週末だけ自主避難していた時期もあったが、経済的な問題もあり、やめた。「事故後、子どもの体調が良くない」という。国は緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)による放射能汚染の情報を公表しなかった。にもかかわらず「『安全宣言』をした。周りは事故前と変わらない日常に戻ったように見えるが、そうではない」と、放射能の恐怖にさらされている現実を訴えた。

 長谷川さんは、郡山市で介護事業を営んでいたが、事故の五カ月後に自主避難した。「将来、健康被害が出たら、お金で償われても元には戻れない。子どもを守ろうという思いだけだった」。避難先の静岡での生活については「工事現場の日雇い作業員をして食いつないだこともある。経済的に安定せず、心もとないです」と切々と語った。

 自主避難者は十分な補償が受けられない。東電からの補償金も避難区域内に住んでいた避難者に比べて乏しく、経済的な負担が重くのしかかる。

「子どもらがどんなに不安でも、政府というのは心配するなとウソで言い含めようとするものなのです」。チョムスキー氏は、米国とソ連の緊張が核戦争の寸前まで高まった一九六二年のキューバ危機のころのことをとつとつと語った。「私の娘の友達の中には、戦争になれば生き残れないと不安そうな子もいた。米政府は『米ソの緊張関係は危なくない』と宣伝した。私の娘は学校の先生から『核戦争が起きても机の下に隠れれば大丈夫』と言われたんですよ」

 緊張した面持ちでチョムスキー氏の顔を黙って見つめていた玲未ちゃんは、周囲に促されて「武藤玲未です」と自己紹介。チョムスキー氏も、この時ばかりは柔和な表情を見せ、「日本に五十年ぐらい前にも来たことがある。私の娘がちょうどお嬢ちゃんと同じくらいだった」と懐かしがった。

◆子どもを見よ

 チョムスキー氏は、福島第一原発事故の後、二〇一一年九月に東京都内で開かれた脱原発集会の際、支持を表明する連帯メッセージを寄せた。福島の親子らと面会したのは、福島の子どもたちの「集団疎開裁判」を支援してきた縁からだ。一二年一月、「最も弱い立場の子どもらがどう扱われるかで社会の健全さが測られる。私たち世界の人々にとって裁判は失敗が許されない試練だ」と集団疎開裁判を支持するメッセージを寄せている。

 集団疎開裁判では、郡山市に住む児童と生徒十四人が、空間放射線量が年間一ミリシーベルト未満の地域に疎開して教育を受ける措置を市に求め、仮処分を申し立てた。

 司法の判断はつれなかった。福島地裁郡山支部は一一年十二月、申し立てを却下。仙台高裁も一三年四月「福島原発周辺の児童・生徒の健康に由々しい事態の進行が懸念される」と指摘しながら抗告を却下した。

 福島の親子らは四月にも、約十人の子どもを原告として、地元の自治体を相手に集団疎開を求める行政訴訟を起こす予定だ。

 チョムスキー氏は、親子らに「政府に対する外圧を上手に使うことだ」とアドバイスした。「核戦争防止国際医師会議(IPPNW)などの権威ある国際的な団体と健康被害の調査について連携し、放射線の被害を広く訴えることもできる。日本政府に被害を隠すことは恥ずかしいと思い知らせられればよい」

 「日本は広島、長崎の原爆を経験し、放射線の怖さを知っているはず。それなのに、政府が被災者の不安に寄り添わないとは。言葉にならない」と日本政府の対応を厳しく批判した。
◆市民運動が道

 チョムスキー氏は、本紙のインタビューに対し、安倍政権についての懸念も口にした。「日本の超国家主義者は平和憲法をなくそうとしている。安倍晋三首相らが靖国神社に参拝し、従軍慰安婦を否定しようとするのは、日本を帝国の時代に戻そうという狙いがあるのではないか。ヒトラーが権力を掌握していく過程を思い起こさせる」

 集団的自衛権の行使容認についても「集団的自衛権と言えば聞こえは良いが、実態は侵略戦争だ。米政府も戦争を国防と言い換えるが、それに似ている。だまされてはならない」と指摘。自民党の石破茂幹事長が特定秘密保護法の抗議活動に対し、「テロ行為と本質は変わらない」と言い放ったことに触れ、「政府は市民の反発を恐れている。テロリストというのは、権力側が反対する市民にレッテルを貼っているだけだ。強制や弾圧を正当化する言い訳にすぎない」と話した。

 「政府の過ちを正せるのは市民だけだ。困難だろうが、福島や日本全体で、政府が無視できない運動をつくり出してほしい。地域の市民のつながりを強化してほしい。それこそが状況を改善していく道だ」

 (林啓太)

 <ノーム・チョムスキー> 言語学者、哲学者。1928年、米国フィラデルフィア生まれ。ペンシルベニア大を卒業し61年からマサチューセッツ工科大(MIT)教授。50年代に言語学における革命的な理論を発表し「現代言語学の父」と呼ばれる。

 一方で、ベトナム反戦運動に携わり、人権や平和に関して積極的に発言。今年1月には、米軍普天間飛行場の沖縄県名護市辺野古への移設について、「沖縄の軍事植民地状態を深化、拡大させる」と反対する声明を他の有識者とともに発表している。

 著書に「統辞構造論」「メディアとプロパガンダ」「秘密と嘘と民主主義」など。

再び原発依存 あり得ぬ(中日新聞 2014年2月26日 特報)

2014-03-05 16:36:30 | 日記
 東京都知事選などの結果を受け、政府は二十五日、原発の再稼働を進めるべく、新たなエネルギー基本計画案を示した。来月中に閣議決定される見通しだ。原発について、当初案の「ベース電源」を修正し「ベースロード電源」と位置付けたが、要は原発社会に引き戻すということ。三年前の福島の事故直後、なぜ原発と決別しなくてはならないかが広く語られた。主要な理由を再び確認したい。

◆規制は最低基準

 基本計画案では、原発を「優れた安定供給性と効率性を有し」と記した。しかし、福島原発事故の原因はまだ分かっていない。東京電力や政府は津波説をとるが、国会の事故調査委員会は「地震動による損傷がなかったとはいえない」とする報告書をまとめた。

 国会事故調のメンバーの一人で、元原子炉圧力容器設計者の田中三彦氏は「原因に加え、シビアアクシデント(過酷事故)に至った過程など分かっていないことは多い。津波以外に原因があるとなれば、さらなる対策が必要になる。だから、政府や東電は認めたくないのだろう」と話す。

 計画案は再稼働について「原子力規制委員会の専門的な判断により、世界で最も厳しい水準の規制基準に適合すると認められた場合には進める」と明記している。

 だが、市民団体「たんぽぽ舎」(東京)によると、先月二十日の国会内の集会で、原子力規制庁の担当者は「規制基準を満たした原発でも事故は起きる。この基準は最低のもので、あとは事業者の責任」と発言したという。田中氏も「そもそも規制委に審査する能力があるのかという問題もある」と疑問を呈する。

◆避難計画ずさん

 規制委は二〇一二年十月に原子力災害対策重点区域を、原発の十キロ圏から三十キロ圏へ拡大した。一三年二月には原子力災害対策指針が改定され、原発から五キロ圏は放射性物質の拡散前に避難、三十キロ圏は屋内退避、周辺で毎時五〇〇マイクロシーベルトの放射線量が測定されれば、避難するよう定めた。

 こうした方針に沿って、関係自治体では地域防災計画や広域避難計画づくりを進めている。だが、広域避難計画の有効性自体を疑問視する声がある。

 立石雅昭・新潟大名誉教授(地質学)は「五キロ、三十キロと範囲を決めたが、福島原発事故での被害は三十キロにとどまらなかった。風向きや強さによっては、さらに被害が広がっていた。範囲は原発の出力や地形によっても異なってくる」と、三年前の経験が生かされていないと指摘する。

 先月の中央防災会議では、高齢者ら災害弱者の名簿づくりを市区町村に義務付けることが決められた。立石氏は、先の大雪で関東甲信や東北地方で交通がまひしたことを念頭に「気候によっては、災害弱者の避難はさらに困難になるだろう」と推測。「地域住民の命を守る避難計画ができていない限り、たとえ技術的な基準をクリアしても、原発の再稼働はあり得ない」と断じた。

◆核のゴミどこへ

 原発は「トイレなきマンション」といわれる。使用済み核燃料の処分方法はいまだ見つかっておらず、再稼働させれば、状況が悪化することは必至だ。

 電気事業連合会によると、国内の原発に貯蔵されている使用済み核燃料は計一万四千三百七十トン。青森県六ケ所村の再処理工場には二千九百四十五トンある。貯蔵スペースに対する占有率が八割を超す原発は福島第一を含めて五原発に上り、再処理工場では98・1%に達している。

 国は地下深く埋める「地層処分」を前提に最終処分場の場所を探しているが難航。基本計画案には「国が前面に立って解決に取り組む」「対策を将来へ先送りせず、着実に進める」などの文言が並ぶだけで、具体策は示していない。

 北海道大の大沼進准教授(環境心理学)は「何十年も前から言われてきた課題だが、国も電力会社もずっと目を背け、ふたをしてきた。これ以上の先送りは許されない。原発への賛否にかかわらず、本気で取り組まなければいけない時期にきている」と指摘する。

◆悪夢のサイクル

 使用済み核燃料を再処理し、プルトニウムとウランを取り出し、再び燃料とする流れが「核燃料サイクル」だ。回収したプルトニウムとウランで作る混合酸化物(MOX)燃料を高速増殖炉で燃やす計画が、福井県敦賀市の「もんじゅ」。MOX燃料を通常の原発の燃料とするのが「プルサーマル」発電だ。

 基本計画案は再処理とプルサーマルを「推進する」。もんじゅについても「克服しなければならない課題について十分な検討、対応」をするとして、断念してはいない。

 自民党の秋本真利衆院議員は「事実上、破綻している核燃料サイクルを継続すれば、負担は税金や電気料金として国民に跳ね返ってくる」と批判する。

 一九九七年の稼働開始を目指した六ケ所村の再処理工場は試験運転中。トラブル続きのもんじゅは実用化のめどが立たない。ちなみに、一二年度までのもんじゅの事業費は九千四百八十八億円に上る。

 再処理をやめると、六ケ所村の使用済み核燃料は青森県外に出す約束だ。核燃料サイクルを動かすための原発再稼働という本末転倒な構図が浮かぶ。

◆誰も責任取らず

 福島原発事故では、事故を起こした東電を破綻処理せず、責任をあいまいにしている。あれだけの事故で、東電も政府も誰一人、責任を取っていない。

 東電救済の枠組みは、事故後間もない一一年六月に決められた。政府は原子力損害賠償支援機構を通じて公的資金一兆円を出資。昨年十二月には、賠償や除染のための資金支援枠を五兆円から九兆円に拡大。汚染水対策にかかる費用六百九十億円も政府が肩代わりすることになった。

 そうした費用は、税金や電力料金の形で国民につけ回しされる。東電には生き残りのために、被害者への賠償額を圧縮しようという姿勢も見え隠れする。

 慶応大の金子勝教授(財政学)は「被害者を犠牲にし、加害者の東電を救う現在の政策はモラルハザード(倫理観の欠如)そのもの」と話す。事故を起こしても責任を取らずに済む前例ができれば、「再び原発事故を誘発する原因にもなりかねない」。

 東電だけでなく、株主や融資している金融機関を含め、責任をきちんと問うことは不可欠だ。金子教授は「ずるずるとした東電延命で、逆に将来的な展望が見えず、優秀な社員がやめている。事故収束作業にも影響し、被害回復の遅れにつながっている」と警鐘を鳴らす。

 (上田千秋、篠ケ瀬祐司)