尾上町をゆく(4) 玖須比(くすひ)の伝承
加古川市尾上町養田の大歳神社の伝承です。
中世の今津は、「今津千軒」と呼ばれ、たいそう賑わっていました。いつの頃から、今津へ二匹の大蛇が出没し、人を食べるようになりました。
長田の長(おさ)、玖須比(くすひ)は、大蛇退治に出かけました。ある日、子どもをつれて海辺に出ました。
急に空が曇り、大蛇があらわれ一気に幼児を飲み込んでしまったのです。
怒った玖須比の放った第二の矢が、大蛇の喉に命中しました。さすがの大蛇も地響きをたてて息絶えたました。
帰途、気がつくと物凄い形相で雌の大蛇が追いかけてきました。玖須比は振り返り、切りつけました。
傷ついた大蛇は「今津が元のようになったら、また人を食べに帰ってくる」と言い残して海に去っていきました。
二匹の大蛇が通った跡は、メス溝・オス溝と呼ばれ戦前、尾上に飛行場が作られるまでは残っていたといいます。
今津は、加古川の河口にあり、加古川の堆積作用により港としての機能を失い、幾度となく洪水に見舞われた土地柄でした。
そんな歴史が尾上(養田)に、「大蛇と玖須比」の伝承を残したのでしょう。
*写真:大歳神社の祭神・玖須比を説明する説明板