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故郷へ恩返し

故郷を離れて早40年。私は、故郷に何かの恩返しをしたい。

スイス、ウッツウィル

2015-02-12 04:18:16 | 思い出話

初めて、スイスに行ったのは28年前のことです。

サービスの教育ということで、2週間の出張でした。
凍っている路上を会社まで、朝まだ暗い中をとぼとぼ歩いていきました。
着くと製粉機の組み立てラインに行きました。
着いてほどなく、9時の休憩になりました。
男達はサンドイッチをかじりながら、朝からビールを飲んでいました。

朝のうちにボルトを外し、構造を勉強しました。
午後になると、会社から給料をもらいながら
午前中だけ学校に行く若者が帰って来ました。
彼らと一緒にボルトを締めて元通りにしました。

毎日、ボルトを緩めまた締めるの繰り返しでした。
それ以上のことは、ありませんでした。

夜は、若者の実家のレストラン「ローズ」まで
暗い中、時々教会から流れてくる時の鐘を聞きながら月明かりを頼りに歩きました。
途中、会社のそばを通ると、マシニング機械が唸っていました。
真っ暗闇の中でも機械は動いていました。半分以上日本製の機械でした。
後に知ったことでした。
夕方にマシンング機械にセットし、夜のうちに仕上げていました。
倉庫には、セットした台座が山のようにストックされていました。

ローズに着くと、すでに大勢の男たちが飲んでいました。
トランプをやったり、歌ったりでした。
奥のピアノで伴奏をしていたのが、若者の姉でした。
美しい姉にみんな声をかけていました。
若者は、英語が話せませんでした。私は、ドイツ語が話せませんでした。
それでも片言の英語で話しました。姉が英語で通訳をしてくれました。
不思議に楽しかった。毎夜通いました。

スイスウッツウィルにその後30回ほど通いました。
その頃の国際便では、煙草は吸えたし、座席の手すりをあげて横になれました。
今では、日本からの観光客でぎゅうぎゅう詰めです。
片道11時間の旅は、苦痛になりました。

友人たちが、どんどん偉くなっていきました。
どこに行ってもMr.と声がかかるようになりました。
日本の特許の解説を頼まれました。
飲んでる席で、日本語の科学用語の特許説明の英訳を仕上げました。
そりゃ、感謝されました。
仕事の話は、だんだん少なくなりました。
家族のことや趣味のことが中心になりました。
英語は堪能ではないけど、日本語が上手になりました。
日本語で考える思想や技術の展開は、外人の耳に留まるようになりました。
日本にいても相談のメールが来るようになりました。
毎日のように英語でメールや報告書を書くうちに、電話で話せるようになりました。
冗談ばかりの長電話になりました。

日本に関して疑問が湧くと、私に相談が来るようになりました。
ぜんぜん面識のないスイス人からも来るようになりました。
都度、考えられるすべての知恵を絞って答えました。

ある時、ビールの担当者から試験的に日本酒を仕込んでみたいので、
日本酒醸造のプロセスを調べて報告して欲しいと依頼がありました。
いつまでと聞くと1週間以内に、試験的に仕込みたい量は
1キロリットルと答えました。
東京にある10の造り酒屋を調べ、電話をしました。
受け付けてくれたのは、2社でした。田村酒造では見学だけでした。
4合瓶の絞りたてを買ってきました。東村山の豊島酒造を訪ねました。
田中さんという30代の杜氏さんが会ってくれました。
正直に、依頼されたミッション(酒造りのプロセス調査)の話をしました。
全部見せてくれました。
タンクサイズも発酵に使用する菌の種類まで教えていただけました。
私は、改善すべき瓶詰ラインとHACCP仕様の工程改善について、
見せていただいた時間と同じ位、現場で説明しました。
気障ですが、私の最大限の感謝の気持ちでした。
教えていただいたように、翌日王子の日本醸造協会を訪ね
英語で説明した日本酒の本を手に入れました。
その翌日、ノートに書き写した1キロリットル仕様のプロセスを仕上げて
スイスに送りました。
手に入れた2冊の本は、航空便で送りました。
依頼されたミッションは、3日間で終了しました。

今でも、日本のカレンダーを送っています。
日本に来たビール責任者を浅草に案内し、浮世絵の版画店に行きました。
彼は、版画レプリカに15000円払いました。
彼の家の一番良い場所を私から来るであろうカレンダーのために
スペースをとってくれています。

顔が、話す言語が違おうが関係ないのです。
固く言えば、ギブ&テイクです。
柔らかく言えば、興味に応えるです。
今度は仕事ではなく、観光で行きたいものです。
妻も一緒です。

2015年2月12日
コメント
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