OZ.

Opened Zipper

漫画「のりりん」(1)(2)

2011-05-10 00:00:01 | 折りたたみ自転車(MFWS-206F)
(2011年4月下旬)
「弱虫ペダル」で久々に自転車マンガにハマったので、他にも面白い自転車マンガが無いものかと物色します。
「かめも☆チャンス」や「ツール!」といったタイトルはよく見ましたが、内容・設定・評判などから判断するに、自分には合わなさそう。

他に何か…と調べていると「のりりん」というマンガがあることを知ります。
何だ「のりりん」って…主人公の愛称?
コミック1巻の表紙は女の子だったので、この女の子の愛称が「のりりん」なんだろうか…と思っていたら全然ハズれのようで、どうやら主人公は自転車嫌いの男らしい。
「のりりん」は方言で「(自転車に)乗りなさい」の意味らしい。
表紙の女の子は博多弁らしいけど、のりりんは三河弁?
あと、この作者のマンガでは人が死ぬのが定番らしい…そんな自転車マンガは嫌だなぁ。
自分好みでは無さそうな絵柄も含め、不安材料もあるものの、それ以外の点ではなかなか評判が良さそうだったので読んでみることにしました。

主人公はアメ車に乗るクルマ好きのメガネ男「丸子(まりこ)一典」、何故か大の自転車嫌い。
交差点でロードバイクに乗る博多弁の女子高生「織田輪(りん)」を撥ねそうになった事故をきっかけに、織田家の塩ラーメン屋に出入りするようになる。
輪の母親「織田陽子」は丸子に執拗に自転車に乗ることを勧めるが、頑なに拒否する丸子。
しかし陽子の策略に引っかかった丸子はロードバイクに乗らされる羽目に陥る。

…といった導入で始まるマンガ「のりりん」ですが、完全にハマってしまいました。
良いなぁ、何て悪道い自転車の薦め方なんだろうコレは。(絶賛)
織田陽子も悪道いんですが、それはこのマンガの作者の意向を反映したものなので、悪の張本人は作者の鬼頭莫宏だな。

主人公の丸子は最初「ジャマくせえチャリ野郎」「歩道走ってろ」「チャリなんか死んでも乗らねー」「チャリ乗ってるヤツは死ねばいいんだ」と言い放つ嫌なヤツで、明らかに自転車好きの敵。
しかし自転車を毛嫌いする訳があることが徐々に判明してきます…どうやら元彼女の小月優と別れた経緯に自転車が関係している模様。

織田陽子から「男は30超えたら自転車」と薦められ、事故で損傷した自転車のカーボンホイールの修理費用(25万円)を「自転車乗ったら5万円引き」と言われても、丸子は「自転車乗らないって決めてる」「自転車乗ってるヤツが嫌い」と抵抗。
「とにかく気持ち悪い」「ナルシスト」「汗臭い」「スポーツだか移動手段だかはっきりしない」「ガキっぽさ」「マゾだかサドだかはっきりしない」「盲信的で自分達こそ最高みたいなかんじ」「興味のない人間に強引に勧めようとする」と自転車乗りの嫌な点を挙げ連ねます。
これは一般的に自転車に興味の無い人から見た、自転車乗りの悪いイメージを「自転車嫌い役」丸子に代弁させているようです。

その「訳あって自転車嫌い」の丸子に自転車を強引に勧める「自転車推進派役」織田陽子は、自分では自転車に乗らないと言ってますが間違いなく自転車マニアで、マニアックな自転車を複数所有しているようだし、家族は皆自転車乗りのようなので、陽子は元自転車メカニックかな?

陽子は何故そうまでして人を自転車に乗せたがるのか? の説明を陽子の夫(輪の父親)の織田栄が語っていますが、この考えにはかなり共感できます。
「自転車に乗る素晴らしさが伝わりにくい」「自転車は仕方なく選ぶ移動手段と思われている」「日常に密着する分、面白さが伝わりにくい」「自転車の雑誌やイベントを見るのは既に興味を持っている人間」…確かにその通り。

自分も嫁さんにときどき自転車を勧めますが、子供の頃から必要に迫られて日常用に自転車(ママチャリ)に乗っていた嫁さんからは「自転車の何が楽しいのか分からない」と言われ、全く相手にされません。
家族で遠出した先でサイクリングしようと自転車レンタルしたときも、スポーツバイクは選んでもらえず、乗り慣れたママチャリを選ぶくらいだしなぁ。

なので陽子は強引にでも人をロードバイクに乗せることにより、地道に自転車の素晴らしさを広める草の根運動をしている、という設定だそうで…共感はするけど強引だな。

このマンガの中では陽子が指導役として、素人の丸子やその友人達に自転車を解説していきます。(走り方の指導は輪が)
陽子を筆頭に織田家が作者の気持ちを代弁して自転車を勧める人々、そして丸子やその友人達が自転車嫌いというマイナスからのスタートで自転車を学んでいく人々。
その設定をオブラートで包みまくってストーリー仕立てにした「自転車入門マンガ」なんだろう、と個人的には理解しました。
いや、「自転車教カルト教団の伝道書」かも知れないな。
最初は歩道を自転車で走っていましたが、混雑しているので車道を走り始め、丸子の独白を通して車道を走るときの注意点を読者に教えています。
それから仲間と一緒に自転車で走る楽しさも含め。

丸子がロードバイクを全力で踏み始め、自転車の愉しみを徐々に知っていく様も共感しながら読みました。
ペダルを土踏まずではなく拇指球で踏むように変えただけで進むようになることや、クロスバイクなどと比較してメカニカルロスが少ないことを体感し、自分の力だけで高速走行できる歓びを(不覚にも)感じる丸子。

ロードバイクとはレベルが全然違うけど、ハイユニ号をカスタムしてパーツを換えて、徐々に走りが良くなっていく(軽くなりスピードが上がる)ことを体感して、それで自転車の(カスタム+走ることの)楽しさにハマッたんだもんなぁ。
このマンガ、自転車に興味が無い人を自転車に誘うために使えるぞ、きっと。

さて2巻の終わりでは(陽子の謀略により)2年間真面目にトレーニングを続けている(でも感じ悪い)ロードレーサー等々力潤と1週間後に平坦道10kmレースをする羽目になった丸子。
「(丸子が)勝てるようになるわけない」と言いつつも陽子は秘蔵フレームで組んだ「去勢されていないモンスター」を丸子に使わせる以外にも何か悪辣な計画があるようですが、果たしてどうなることやら。
3巻が楽しみです。