本日時点で法令は施行されていませんが、「合理的配慮」について確認しましょう。
2016年に施行された「障害者差別解消法」の改正法案が、2021年4月に成立し、
6月4日の公布後、3年以内に政令で定める日から施行されることになっています。
現在は「努力義務」ですが、法令施行後は、国や自治体だけでなく、
民間事業者にも法的義務として「合理的配慮」の提供が求められることとなります。
障害者差別解消法(障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律)の前提になる
障害者権利条約(障害者の権利に関する条約:2006年に国連で採択、日本は2014年批准)において、「合理的配慮」とは、
「障害者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有し、
又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、
かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないものをいう。」とされています。
そして、障害者差別解消法では、行政機関等及び事業者に対し、その事務・事業を行うにあたり、個々の場面において、
障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、
その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、
社会的障壁の除去の実施について、必要かつ合理的な配慮(「合理的配慮」)を行うことを求めています。
合理的配慮が必要な対象
当法令における、「障害者」とは、「身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)
その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により
継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。」と定義しています。(法第2条第1項)
「合理的配慮指針」厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11704000-Shokugyouanteikyokukoureishougaikoyoutaisakubu-shougaishakoyoutaisakuka/0000078976.pdf
1 合理的配慮は、個々の事情を有する障害者と事業主との相互理解の中で提供されるべき性質のものであること。
2 合理的配慮の提供は事業主の義務であるが、採用後の合理的配慮について、事業主が必要な注意を払っても
その雇用する労働者が障害者であることを知り得なかった場合には、合理的配慮の提供義務違反を問われないこと。
3 過重な負担にならない範囲で、職場において支障となっている事情等を改善する合理的配慮に係る措置が複数あるとき、
事業主が、障害者との話合いの下、その意向を十分に尊重した上で、より提供しやすい措置を講ずることは差し支えないこと。
また、障害者が希望する合理的配慮に係る措置が過重な負担であるとき、事業主は、当該障害者との話合いの下、
その意向を十分に尊重した上で、過重な負担にならない範囲で合理的配慮に係る措置を講ずること。
4 合理的配慮の提供が円滑になされるようにするという観点を踏まえ、障害者も共に働く一人の労働者であるとの認識の下、
事業主や同じ職場で働く者が障害の特性に関する正しい知識の取得や理解を深めることが重要であること