中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

休職復職Q&A③

2022年01月24日 | 情報

Q4; 人事部の労務管理担当です。上司から聞き取りした情報などを保管・管理して
おくべき部門としては、どの部署が望ましいでしょうか?
それとも、情報によって異なるのでしょうか?そうなると、個人情報の分散も気になります。

A: 聞き取りした部門が、記録・管理するのが原則です。

産業医であれば産業医が、健康管理スタッフであれば健康管理スタッフが、
人事部門であれば人事部門が、それぞれ聞き取った事実・情報を一次情報として管理してください。
産業医や健康管理スタッフには守秘義務が課せられていますが、
当然のこととして人事部門も社内規程で守秘義務が課せられることを規定しておいてください。

反対に、関係のない部門の担当者・管理職が聞き取ることは、個人情報ですから問題になります。
特に職場復帰問題については、いろいろな部門・担当が関与しますので、
産業医・健康管理スタッフ・人事部門間で情報共有することも必要です。

当事案に関しては、安衛法第104条(2019.4.1改正安衛法)により、企業内(それぞれの
事業場単位ではありません
)で「健康情報の取扱規程」を定めることが義務となりました。
当法改正については、いまだによく理解していない企業があるようですが
(小職註;これにはやむを得ない事情もあります)、当規程では、特にどの部門が
どの情報に関与するのか、詳細に規定するように望まれています。
なお、現実問題として「健康情報の取扱規程」を定めろと云われても、皆目見当もつかないことでしょう。
ですから、規程を定めるためには、以下の手引きを参照してください。

「事業場における労働者の健康情報等の取扱規程を策定するための手引き」(厚生労働省)

https://www.mhlw.go.jp/content/000497426.pdf

余談ですが、策定にあたっては、事前に手引きを読み下すことが必要ですが、
原則、手引きにある規程例をそのまま、御社の規程とすることには問題ありませんし、
むしろ推奨されています。

 

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(参考)労働者1人平均年次有給休暇取得率の年次推移

2022年01月23日 | 情報

有給休暇5日の取得義務化により、労働者1人平均年次有給休暇取得率が、大きく伸長しています。
なお、PDFの図表を当ブログに直接掲載できませんでした。
必要な場合には、以下の資料にあたって下さい。

令和3年就労条件総合調査の概況

https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/21/dl/gaikyou.pdf

P6 第2図 労働者1人平均年次有給休暇取得率の年次推移

2021年 56.6%
2020年 56.3%
2019年 52.4%
2018年 51.1%
2017年 49.4%
2016年 48.7%
2015年 47.6%
2014年 48.8%
2013年 47.1%
2012年 49.3%
2011年 48.1%
2010年 47.1%
2009年 47.4%
2008年 46.7%
2007年 46.6%
2006年 47.1%
2005年 46.6%
2004年 47.4%
2003年 48.1%
2002年 48.4%
2001年 49.5%
1999年 50.5%
1998年 51.8%
1997年 53.8%
1996年 54.1%
1995年 55.2%
1994年 53.9%
1993年 56.1%
1992年 56.1%
1991年 54.6%
1990年 52.9%
1989年 51.5%
1988年 50.0%
1987年 50.2%
1986年 50.3%
1985年 51.6%
1984年 55.6%
注:1)「取得率」は、(取得日数計/付与日数計)×100(%)である。
  2)平成11年以前は、12月末現在の状況を「賃金労働時間制度等総合調査」として取りまとめたものである。
  3)平成19年以前は、調査対象を「本社の常用労働者が30人以上の会社組織の民営企業」としており、平成20年から   「常用労働者が30人以上の会社組織の民営企業」に範囲を拡大した。
  4)平成26年以前は、調査対象を「常用労働者が30人以上の会社組織の民営企業」としており、また、「複合サービス事業」を含まなかったが、平成27年より「常用労働者が30人以上の民営法人」とし、さらに「複合サービス事業」を含めることとした。

〇時間単位年休制度導入割合= 「時間単位の年休制度導入企業2割にとどまる」

https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/000867649.pdf

「 年次有給休暇の取得に関するアンケート調査( 企業調査・労働者調査) 」( 独 立 行 政 法 人 労 働 政 策 研 究 ・ 研 修 機 構 ( J I L P T ) )概 要
調査期間 令和2年1月27日~令和2年2月7日
企業調査 :全国の従業員30人以上の企業 17,000社
労働者調査 :調査対象企業を通じて、そこで雇用されている労働者 71,796人分
有効回収数 企業調査 5,738票 (有効回収率 33.8%) / 労働者調査 15,297票 (有効回収率 21.3%)

(参考)これからの労働時間制度に関する検討会  第7回資料 厚労省HP
令和3年12月16日(木)

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_22662.html

主な論点(案)
○それぞれの労働時間制度の意義をどう考えるか
○裁量労働制が、その制度の趣旨を踏まえたものとなるための方策についてどう考えるか
・労働時間、健康・福祉確保措置、処遇・評価
・対象業務、対象労働者、本人同意、同意の撤回
・集団的労使コミュニケーション、導入後の運用 等
○年次有給休暇(時間単位年休を含む)の取得促進の在り方についてどう考えるか
○経済社会の変化、デジタル化による働き方の変化、コロナ禍等による労働者の意識変化の中、アフターコロナの働き方を見据えた労働時間制度等についてどう考えるか

 

 

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質問力を磨こう

2022年01月21日 | 情報

心の不調で休職、復帰に備えるには 質問力を磨こう、そのコツは
2022年1月10日 朝日

心の不調で仕事を休む可能性は、誰にでもあります。復職後、再び不調に陥ることがないようにするには、どうすればよいのでしょうか。復職に向けたプログラムを実施しているNTT東日本関東病院(東京都品川区)の精神科医・秋山剛さんに聞きました。

二十数年前に病院に赴任する前、複数の企業の顧問をしていたことがあります。精神科担当の産業医です。そこでは、心の不調で休んだ人のうち一定数は復職後に再び不調となりました。診察室での指導だけでは防ぎきれないと感じていました。

心の不調には、大きく二つの要因があります。環境によるストレスと、本人の特性です。このうち本人の特性は、一度病気になると、そうなる要素が増す、とされます。仮に何もしないまま職場に復帰して以前と同じストレスに遭うと、また不調になるのは当然のこと。このため、ストレスへの対処法を身につけることが必要だと考えました。

病院に赴任して翌年、作業療法室を使って復職に向けたリハビリを始めました。今は「リワークプログラム」とも呼んでいます。

人によってストレス対処法は違いますが、一般的に上司とのコミュニケーションが取れていれば、そう簡単に病気にはならない。仕事を指示されて「無理」と言えず抱え込めば、残業も増えて病気にもなるリスクも高まります。コミュニケーション能力を高めることが、対処法の一つです

もちろん上司が悪いこともあります。上司がハラスメントにならずに指導するスキルは、今の日本企業では不足しているように思います。上司の研修も必要です。ただ、通常の人間関係において、100%どちらかが白でどちらかが黒、にはならない。リワークでは、本人の努力も促していきます。

リワークで重視しているのは、なぜ病気になったのかを振り返ってもらい、深く分析し、自分のもろさがどこにあるのかを認識してもらうことです。

例えば、自ら進んでどんどん仕事をする人がいる。「自分がやらないと迷惑をかけてしまう」。そんな思いで限界を超えて取り組んでしまい、周りもなかなか止めてくれない。リワークの中で作業していると、同じようにやり過ぎる様子が見えます。それをスタッフが指摘すると、本人も「あっ」と気づく。本人が意識していないことを診察室で聞き出すのは難しいですが、リワークによる作業療法で発見できることがあります。

また、言葉で説明されないことをうまく理解できない人がいます。人の動きから察する、といったことが苦手な人たちです。言葉の理解力は高いので学校のテストの点は良く、職場などでは立派な学歴で能力が高いと思われています。ただ、社会では言葉で説明されないことも多いので、そこについて「なぜできないのか」と責められてしまう。このほか、同時に複数の仕事をすることが苦手な人もいます。

自分は言葉で説明されないと理解しにくい、順番に一つひとつしかできない――。そんな人は、そうした自分の特性を職場に分かってもらう必要があります。

そこで、やはり上司とのコミュニケーションが重要になります。カギになるのは、自分が分からないことを遠慮せず質問すること。質問にはコツがあります。まずは、相手の話に整合性があるかを確認する。最初と最後に言っていることが違えば、そこを質問する。次に、自分の経験や知識、ほかで聞いたことと比較し、その違いを質問する。上司にこうした質問をすることは建設的なやりとりとなり、上司も「仕事を理解しようとしているんだな」と好意的に受け取ってくれるはずです。

まだまだリワークプログラムを受けられる医療機関は限られています。一般社団法人日本うつ病リワーク協会に加入する医療機関は全国で200程度。ほかに独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構の地域障害者職業センターが実施するリワークもあり、職場を含めて支援しています。企業自身が手がけるリワークもあります。

医療機関で治療を受けながらリワークに取り組む需要はもっとあるように感じます。ただ、リワークを実施するには人手もかかり、リワークだけで収支を成り立たせるのは難しい。職場復帰しようとする人をサポートする態勢を整えるために、診療報酬でリワークの加算をすることも必要だと思います。

秋山先生略歴(小職編集)
昭和54年3月東京大学医学部卒業。昭和54年6月東京大学医学部附属病院分院神経科入局。平成3年1月同医局長。平成8年4月~現在、関東逓信病院(現NTT東日本関東病院)精神神経科部長。平成30年2月~現在、一般社団法人うつ病リワーク協会理事。その他多数。

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休職復職Q&A②

2022年01月20日 | 情報

Q2;生産現場のグループリーダーです。療養が必要との主治医の診断書も出ており、
産業医も療養することが必要と判定しているのですが、
経済的な理由で休職を拒否する従業員がいます。
どのように説得すればよいでしょうか。

A;当該企業は、原則的に健康保険(協会健保?)に加入しているはずですから、
毎月の給与の支払いがない休職者(=療養中)には、毎月の給与の約60%にあたる傷病手当金が
原則として18ヶ月支給されます(健康保険法第99条1項)。
さらに、健康保険を上回る待遇を規定している企業もありますので、
企業の体力に応じた優遇策を検討いただくのも大切なことでしょう。
それよりも、会社は従業員に健康保険法をよく周知して、
当該従業員の懸念を払しょくすることが大切です。
それとも、御社は協会健保に未加入なのでしょうか?

なお、傷病手当金が支給される期間は、令和4年1月1日より、支給を開始した日から通算して
1年6ヵ月に変わっています。(ただし、支給を開始した日が令和2年7月1日以前の場合には、
これまでどおり支給を開始した日から最長1年6ヵ月です。)

 

Q3; 症状が重く面談できない社員にはどのように対応したらよいでしょうか?

A;原則として、休職・休業期間に入る前には、会社の人事規程や復職に備えての情報提供が
必須になります。
しかし、突然に病状が悪化して、何の連絡もなく休業してしまう場合もあることなのでしょう。
このような場合には、しばらく無理をしないで様子を見ることも必要です。
それとも、休業・休職しているが、主治医の要請で一切接触しない、できないということでしょうか?
即ち、「症状が重く面談できない」という情報は、いつ、どのようなルートで
入手されたのでしょうか?状況によって、対応要領は異なってきます。

一般的には、メール・電話等の通信手段で安否確認を試みてください。
それでも、連絡が取れない場合には、直接に自宅訪問をして安否や現状を確認してください。
なお、主治医や家族に連絡するのは、個人情報保護の観点から、取りあえず控えてください。
その後、どうしても連絡が取れない場合には、家族に連絡することも必要になるでしょう。
主治医の診断書があれば、主治医に相談してみることもできます。
企業には、従業員に対する安全配慮義務がありますので、場合によっては、一歩踏み込む対応も
必要になります。この際には、事後に備えて経緯の記録を周到に行ってください。

 

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休職復職Q&A①

2022年01月19日 | 情報

本日より、恒例(問題ですが)の、休職復職に関するQ&Aを掲載します。
参考にしてください。

Q;営業企画部門の管理職です。
以前「死にたい」と何度も言う社員がおりました。
通常、どのように対応すべきでしょうか?

A;就労中であろうが、就労外であろうが、「死にたい」と発言することは、尋常ではありません。
冗談だろうと聞き流してはいけないというのが、精神科専門医のアドバイスです。
ですから、当該者の発言を聞いた上司・管理職は、
産業医や健康管理スタッフに事実を伝えてください。
決して自分で判断をしないようにしてください。
最悪の場合、本当に自死する可能性も否定できませんので。

例:うつ病の場合
うつ病(大うつ病性障害)の診断基準(DSM-5;精神疾患の診断・統計のマニュアル 
アメリカ精神医学会)、以下のA~Cをすべて満たす必要がある。

A: 以下の症状のうち5つ (またはそれ以上) が同一の2週間に存在し
病前の機能からの変化を起している; これらの症状のうち少なくとも1つは、
1 抑うつ気分または 2 興味または喜びの喪失である。

1. その人自身の明言 (例えば、悲しみまたは、空虚感を感じる) か、他者の観察 (例えば、
涙を流しているように見える) によって示される、ほとんど1日中、ほとんど毎日の抑うつ気分。

2. ほとんど1日中、ほとんど毎日の、すべて、またはほとんどすべての活動における興味、
喜びの著しい減退 (その人の言明、または観察によって示される)。

3. 食事療法中ではない著しい体重減少、あるいは体重増加 (例えば、1ヶ月に5%以上の
体重変化)、またはほとんど毎日の、食欲の減退または増加。

4. ほとんど毎日の不眠または睡眠過多。

5. ほとんど毎日の精神運動性の焦燥または制止 (ただ単に落ち着きがないとか、
のろくなったという主観的感覚ではなく、他者によって観察可能なもの)。

6. ほとんど毎日の易疲労性、または気力の減退。

7. 無価値観、または過剰あるいは不適切な罪責感 (妄想的であることもある) がほとんど
毎日存在(単に自分をとがめる気持ちや、病気になったことに対する罪の意識ではない)。

8. 思考力や集中力の減退、または決断困難がほとんど毎日存在 (その人自身の言明、
あるいは他者による観察による)。

9. 死についての反復思考 (死の恐怖だけではない)、特別な計画はない反復的な自殺念慮、
自殺企図、または自殺するためのはっきりとした計画。

B: 症状は臨床的に著しい苦痛または社会的・職業的・他の重要な領域における機能の障害を
引き起こしている。

C: エピソードが物質や他の医学的状態による精神的な影響が原因とされない。

 

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