中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

MH対策は、企業経営そのもの

2012年08月24日 | 情報
あるセミナーで聞いた話ですが、元三菱ケミカルホールディングス副社長で、
医療法人社団 こころとからだの元氣プラザ副理事長、故山田洋輔氏(本年6月逝去)は、
「MH対策は、企業経営そのもの」であると語っていらしたそうです。
詳細まではわからないのですが、ご主張には、まったく同感です。

中小企業の経営者が日夜考えていることは、売上高の拡大と企業収益の伸長です。
さらに、具体的にいえば、「企業の存続」です。
ですから、毎日が勝負、という中小企業の経営者には、当然にMH対策に思いが至らないのです。

ところが、MH対策は、まず、企業のリスクマネージメントを具体的に実行することになります。
いまや、労働契約法第5条の「安全配慮義務」は、企業活動におけるリスクマネージメントの最重要課題です。
因みに、労働契約法第5条には、「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、
身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。
(労働者の安全への配慮)」とあります。
「安全配慮義務」を履行しない場合、企業に多大な損失を与える可能性があります。
例えば、D事件(最高裁第2小 H12.3.24、労判779-13)では、
会社側は、16,800万円を支払って解決しています。
その他類似の裁判例はたくさんあって、会社側が敗訴すると、1億円前後の賠償命令が出されています。
また、MH問題で労災であると認められると、その後には、必ず民事損害賠償責任を問われることになります。
危機管理の要諦は、「シンキング ジ アンシンカブル」。考えられないことを考える、ことなのです。
人事労務の管理職、産業保健スタッフのみなさん、御社の経営層に対して、いつでも上申できる準備をしておいてください。

さらにメンタルヘルス対策の実施は、究極的には、企業活力を向上させることに繋がります。
すなわち、メンタルヘルス対策の実施は、従業員に安心感を与えることができ、
従業員のモラール向上に大きく寄与することになります。
従業員のモラールが向上すれば、職場環境の改善と、生産性の向上による組織運営の活性化が図られ、
企業活動の善循環が促進されます。
こうなれば、企業活力が向上し、企業経営の第一義である売上高の拡大と企業収益の伸長が期待できます。

「企業は人なり」。まさに、企業経営そのものではありませんか。

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入社3年「昇進いや」37%

2012年08月23日 | 情報
一般社団法人・日本経営協会(茂木友三郎会長)の調査で、就職3年前後の社員の37.4%が
「昇進したくない」と考えていていることがわかった。
いつまで働きたいかの質問には「転職できる実力がつくまで」が約3割でもっとも多く「定年まで」を上回る。
44.4%は学生に戻れるなら「もう一度就職活動する」と回答。就職前のイメージと現実の違いが転職希望を強め、
昇進意欲の低さにつながっているようだ。

日本経営協会が大学や大学院、専門学校を出て就職3年前後の社員700人を対象に今年6月に初めて調査した。
現在の会社でどこまで昇進したいのかとの問いには、25・4%が部長・課長職と答え、係長・リーダーが22.3%、
経営陣が12.7%で、4割弱は昇進したくないと回答した。会社の雰囲気や人間関係が
「学生時代に抱いたイメージより悪い」と答えた人のほうが昇進したくない割合が高かった。
今の会社でいつまで働き続けたいかの質問には「転職できる実力がつくまで」が最多の29.3%。
「定年まで働き続けたい」は19%で、終身雇用をイメージするのは2割弱にとどまっている。

日本生産性本部が今春入社した新入社員を対象に実施した調査では「今の会社に一生勤めたい」が
6割を超えて過去最高だった。
「入社3年を経た若者と新入社員の間には職場への思いに大きな変化が起きている可能性がある」(日本経営協会)という。

原資料
一般社団法人日本経営協会HP http://www.noma.or.jp/release/news_120727.html

当調査結果についての感想です。

・「学生に戻れるなら、もう一度就職活動する~」
もう一度就職活動して、再就職しても、3年後には、また同じ感想を持つでしょう。
企業や社会に対する想像や期待が、いかに的外れなのかに思いが至らないと、人生を棒に振る可能性があります。
むしろ自分に与えられた試練だと思い、試練に打ち勝つくらいの気概がないといけません。

・「4割弱は昇進したくない~」
「上昇志向がない」だけならば、問題を感じませんが、「昇進したくない」という考えには、賛成できません。
「責任を取る立場はいや、責任を取りたくない」ということでしょうが、日本の将来に不安を覚えます。

・「学生時代に抱いたイメージより悪い」
実社会は、そんなものです。何度も申し上げますが、「暴力的で不条理」な社会で
人生を全うしなければならない、自分自身と向き合わなければなりません。
現代の多くの若者に共通な、「他罰的思考」をあらためない限り、難しいことかもしれません。
企業や組織は、こうした現実を正しく受け入れ、将来を担う人材育成に取り組まなければなりません。
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ペットの効用

2012年08月22日 | 情報
うつ病を克服するには、家族の支援を欠かすことができません。
その家族には、当然にペットの存在も含まれます。
なお、拙著『中小企業の「うつ病」対策』においても、その必要性・重要性を提起しています。
因みに、その効用を説いている類書は、今の処目にしていません。


毎日新聞 中部朝刊 2012年08月11日 

 女の気持ち:私の使命 愛知県半田市・匿名希望(主婦・46歳)
ある雑誌で著名人数人が「人生で一番幸せだった日」を語るという特集を見た時、
私は一瞬の迷いもなく「2005年6月4日」と心の中で答えていました。
 うつ病を患い、その中途でさらに複雑なそううつ病であると診断され、通院すること10年。
2度の自殺未遂もあり、家族には苦労をかけてきました。
 そんなさなか、夫が犬を飼おうと提案。気が進みませんでしたが、当時の家庭環境を思うと、
夫にも安らぎが必要なのだという申し訳ない気持ちも手伝って、同意しました。
そして、夫の望む甲斐(かい)犬を求めて、山梨へと向かい、犬舎で対面したのは生後3週間の子犬たち。
片手で持てるほど小さく、真っ黒で丸々とした姿は子熊そっくり。
 その中の雌一頭を抱いた瞬間、かつてない感覚に襲われました。
心の奥底にあった氷の塊が溶けていくようで、手のひらから全身にじんわりと広がっていくぬくもりに、思わず泣きそうになったのです。
それが05年6月4日の出来事です。
 あれから7年余り。犬の紗良(さら)を迎えた我が家は、すっかり変わりました。万事がうまく運んだわけではありません。
私はそううつの波に苦しみ、繰り返し自殺願望にとらわれましたが、その度にそっと寄り添って来る紗良の不安げな目を見て、
物言えぬ家族にまで心痛を負わせている罪の重さに気付き、何とか踏みとどまらねばと自戒するのです。
あの6月4日を忘れないこと、それが私の使命です。

注目される散歩の効果 一緒にいきいき健康ライフ 朝日新聞 2012年7月24日

 ペットとして根強い人気の犬は、日本で推計1193万6千頭が飼われています(ペットフード協会)。
どんなことに気を付けると、人生のパートナーとして、より健康に一緒に過ごすことができるのでしょうか?
 健康増進の効果が高いのではないかと、研究が進められている一つが「犬の散歩」。
1人で歩くよりもリラックスできるそうだ。酪農学園大学(北海道)などの研究グループが、
健康なお年寄りの男女13人(平均年齢67.5歳)に3日間、犬を連れて30分の散歩をしてもらい、
リラックスした状態を示す副交感神経の活性値などを測定した。1人で歩くより数値は倍近く上昇し、日を追うごとに増加した。
犬の散歩は、リラックスもできる一石二鳥の運動だ。
 では、どのような散歩が効果的なのか。麻布大学の太田光明教授は「10分間で1千歩のペースで歩くと
運動効果が上がるという米国の報告がある。犬の集中力は45分ほどなのでそれ以内の時間で、朝夕に2回ほどがベスト」と話す。
 「だらだら散歩」よりも「運動する」と意識することが大事。裏技は、犬の「おやつ」を携帯すること。
犬に集中力がなくなり、寄り道など気が散漫な散歩になると運動効果が下がる。犬の気が散っている時は、
進行方向におやつを置いて集中力を戻してあげよう。
 ただ、どんな犬でもうまくいくわけではない。飼い主に忠実に従う「良好」な関係のあることが前提。
そのためには食事や散歩前に犬と目を合わせ、「座れ」といった指示に従うように飼い初めから毎日訓練することを太田教授は勧める。
 「良好な関係」があれば犬とふれあうことによって、飼い主の側に「オキシトシン」というホルモンが出ることも注目されている。
これは、陣痛促進や母乳の分泌を促すホルモンで、母子など親しい関係の人が接する際に分泌される。
 30分間、犬とふれあった後の飼い主の尿中のオキシトシン濃度を測定したところ、
ふれあい前より55人中13人でより活発に分泌されていた。この13人は、
事前アンケートで犬との関係を「良好」と評価された人たちだった。太田教授は「アイコンタクトなどで、
人が犬をいとおしく思うことでホルモンが分泌され、ストレスの軽減や癒やしなどにつながる」と分析する。
 ただ、一緒に楽しく過ごせる時間はそう長くない。犬の平均寿命は13年程度。失う悲しみにも向き合わなければならない。
 帝京科学大学の横山章光准教授は「ペットに過度に依存すると、亡くした際にペットロス状態に陥り、
罪悪感や抑うつ状態を強く起こすことがある」と話す。ペットロスを研究する臨床心理士の中川真美さんは
「普段から犬とは一定の距離感を保ち、他に信頼できる人など日常の支えを作っておいて欲しい」という。(森本未紀)
◆インフォメーション
 犬が与えてくれる癒やしなどの健康効果については欧米で研究が進んでおり、
病院への通院回数の減少や血圧の低下といった効果が報告されている。日本でも、精神病やうつ病の人への効果などが期待されている。
ペットフード協会のホームページ(http://www.petfood.or.jp/)には、犬の飼育の効果やノウハウなどが紹介されている。
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うつ病治療 初の指針

2012年08月21日 | 情報
日本うつ病学会が、うつ病治療の指針を発表しました。

朝日新聞7月27日朝刊より転載

うつ病治療 初の指針 安易な薬使用 自制促す

うつ病を適切に診断して治療につなげようと、日本うつ病学会は26日、医師向けの治療指針をまとめた。
うつ病の治療指針は初めてで、学会として勧める診断、治療法を示した。患者数が70万人と増え続ける中で、
治療法の目安を示すことで、問題になっている誤診や安易な薬物療法をなくすことをめざす。

「新型」は対象外に

うつ病は、社会的に広く知られるようになった影響や、長引く不況などで患者数が急増。
厚生労働省は、2008年に70万人を突破、約10年で3倍に増えたと推計している。
国内では、うつ病を含めた気分障害の薬物治療に限った指針(03年改訂)しかなく、うつ病の診断から
治療に役立ち、最新データを踏まえた指針が必要との声が出ていた。
指針では、軽症の場合、抗うつ剤を使った治療の有効性について、科学的根拠が不十分として
「安易な薬物療法は厳に慎まなければならない」と明記した。中等症・重症では、1種類の抗うつ薬を
十分な量と期間で使うことを基本として、合理的な理由なく、複数の抗うつ剤を使うべきではないとした。
治療薬ごとの特徴も説明した。
うつ病か診断する際に、患者に聞くべき情報の目安も示した。そううつ病や不安障害、発達障害などを
誤診しないよう、受診時の症状や睡眠の状態だけでなく、病気になる前の性格の傾向、職場や学校での状態を、
本人だけでなく家族らにも確認することが望ましいとした。学歴、職歴、婚姻歴の確認も有効とした。
また、最近、注目を集めている若者特有の「新型(現代型)うつ病」については、今回の指針の対象外とした。
出社はできないが、旅行や飲み会などの余暇活動は楽しめるという症状だが、指針は「マスコミ用語であり、
精神医学的に深く考察されたものではない」「医学的知見の明確な裏打ちはない」と記述。何らかのケアが
必要な場合もあるが、現時点で明確な分類、定義はできず、科学的に根拠のある治療法はないと判断した。

原文に当たりたい場合は、以下を参照してください。
http://www.secretariat.ne.jp/jsmd/0726.pdf

なお、個人的な感想ですが、「新型」は対象外にしましたが、
「科学的に根拠のある治療法はない」としたら、患者、家族、一般の精神科医、
並びに雇っている企業は、どのようにしたらよいのか困りますよね。
以下原文より引用
「専門家の間では、若年者の軽症抑うつ状態の研究が盛んに行われている。
この一側面を切り取った『現代型(新型)うつ』は、マスコミ用語であり、精神医学的に深く考察されたものではなく、
治療のエビデンス(筆者注:証拠、根拠、証明、検証結果。たとえば医学においては、
その治療法が選択されることの科学的根拠、臨床的な裏づけをいう。)もないので、取り上げていない。」
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いい産業医と契約するには

2012年08月20日 | 情報
前項(9日記載分)で、『どうしても現在の産業医には「満足できない」ということであれば、
勇気をもって契約解除することを検討してください。』としました。
しかし、産業医の先生は、そうは簡単に見つからない、という事実もあります。
それでは、産業医の先生をどのようにして見つければよいのか?

まず、運営に医師会が協力している、各地の地域産業保健センターへ問い合わせると
産業医を紹介してもらえます。

http://kokoro.mhlw.go.jp/images/pdf/110502-1.pdf
http://www.rofuku.go.jp/sangyouhoken/tabid/333/Default.aspx

次に、信頼できる企業・組織からの紹介です。
企業・組織は、日常的に懇意にしている企業・組織があることでしょう。
そこの経営者あるいは人事労務担当に紹介を依頼します。
紹介は信用問題、ですので、最も確実な方法と考えます。
欠点は、「借りを作る」ことですが、これはむしろ利点にするくらいの心がけが必要でしょう。

それから、定期健康診断をお願いしている医療機関に頼む、または、
紹介を依頼することもできます。これも医療機関にとっては、
信用問題ですし、顧客拡大に繋がる事案ですので、おろそかにはできません。
欠点として、従業員の健康問題については、できるだけ多くの視点でチェックすることが大切ですから、
定期検診と産業医が同じということは、Wチェックする機会を自ら捨てることになります。

また、経営者や経営層が日常的にお世話になっている医療機関の先生、例えば生活習慣病や感冒などの治療で
お世話になっている地元の内科医(かかりつけ医)に、依頼することも考えられます。
もちろん、産業医としての有資格者でなければなりません。
欠点としては、従業員の健康情報が経営者や経営層に筒抜けになるのではという疑念を抱かせることです。

さらに、産業医を紹介する民間機関がたくさんあります。
優良な産業医を紹介してくれますが、紹介料等の費用がかかりますので慎重に検討してください。
最後に、東京都と隣接3県に限定ですが、条件付きながら無料で産業医を紹介してもらえる民間機関があります。

http://www.wellnet-jp.comを参照してください。
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