中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

時間外労働削減の事例集

2012年05月18日 | 情報
時間外労働の削減は、MH問題を解決するうえで、重要な対策になっています。
具体的な好事例を、厚労省のパンフレットより、紹介します。

ケース1.港湾運送業など、従業員数430名
○残業の事前申請と実施状況の管理
・始業時と終業前に行うミーティングの際に、管理職が残業予定者の業務内容と退社予定時間を確認し、
急ぎの業務以外は翌日に行うよう指導したり、他の社員へ仕事を割り振ったりするなどの調整を、必要に応じて行う。
・残業の実績は、毎月2回、15日と25日に各部の管理職が集計をして、管理部門に報告する。
残業が多い部門は、その都度、なぜ残業が多いのかという理由も報告し、
適切に業務を進め、みだりに残業を行わないよう管理している。
○顧客を巻き込んだ業務効率化・改善
・自社のコストが増加すれば、顧客が当社に支払う費用にも影響する。当社は、自社のコスト削減や
業務効率化が図れるとともに、顧客にとってもコスト削減に繋がるような提案を顧客に打診している。
・例えば、顧客とやり取りする書類については、業務効率化を図るため、自社で使用する
様式と顧客で使用する様式を統一してもらえるよう依頼し、内容の整理や確認に要する時間を削減するなどしている。
・このような業務効率化、作業量の低減により、自社と顧客双方の業務効率化が進み、
双方の時間外労働の削減が図れるものと考えている。
○多能工化を進めて業務を平準化
・特定の人しかできない業務があると、その人に業務が集中し、長時間残業につながる原因になる。
そこで、当社では計画的に多能工化を進めており、業務の多い従業員がいる場合には、部門の
管理者が他の従業員に振り分けるようにしている。多能工化を進める取組として、各職場で必要とする
技術・能力、資格・免許を整理し、必要な教育や人材ローテーションを計画的に実施している。
その結果、特定の人に業務が集中することもなくなり、長時間労働の抑制につながっている。

ケース2.運送業、従業員数9名
○各自が毎週1日ノー残業デーを設定
・従業員によって業務内容、進捗状況はそれぞれ異なるため、一律に曜日を決めて実施するのではなく
各自がそれぞれ毎週1日、自分でノー残業デーを決定している。
・以前は「みんながいると帰りにくい」という雰囲気があったが、ノー残業デーを設定することで、
「今日はノー残業デーなので」と、周囲に気兼ねなく定時で帰りやすくなることを期待して、このような制度を導入した。
・ノー残業デーの実効性を高めるため、あらかじめ職場の全員が共通のファイルに各自のノー残業デーを
記入し、お互いに確認できる仕組みとすることによって、ノー残業デーの設定の重複を避けるなど
業務に支障が出ないような調整を各自で行えるようにした。
○業務効率向上の目標を設定
・業務効率の向上や労働時間の削減につながるよう、半年に一度、各自が今の業務上の
課題を抽出して、「どのようにしたらよくなるか」「何を変えたらもっと仕事が早く進められるか」
ということを考えて、業務効率向上の目標を設定している。
・目標設定に際しては、目標達成のための具体的な手段と、達成可否の判断基準などを記載した
計画書を作成している。最終的な到達点だけではなく、目標を達成すための手段などを記載することで、
より実効性のある計画となるよう配慮している。
・目標の進捗状況については、各自が1か月に1回レポートを作成し、上司に提出している。
レポートの形式は部門によって異なるが、例えば営業部門では、「営業活動報告書」に記入し、上司の確認を受けている。
・月1会の進捗管理はとても大変だが、管理しなければ業務上の課題が放置されてしまい、先には
進まない。一方で、進捗を管理すれば計画が進み、今後の業務効率が向上し、労働時間の削減にも
繋がると考えて、時間を作って活動をしている。

ケース3.食料品製造業、
○残業の事前申請制度の導入と実施状況の管理
・従業員は、残業を行う場合に、毎日『時間外労働申請書」を管理職に提出する。管理職は、
残業内容を確認し、残業をしてでも実施する必要のある業務であるかどうかを判断して、
不要と判断すれば、翌日に回すよう指導している。
・この申請フォームには、「残業申請理由」「残業予定時間」「残業内容」などを記入する。管理職に
対しては、申請書があがってきた機会を捉えて、部下の業務の内容や進捗状況を把握し、
コミュニケ―ションを図るよう指示している。
・この制度により、不要な残業が削減されるだけでなく、どの部門で、どの理由により、どの程度の残業が
発生しているかといった、残業の実態を管理部門が的確に把握できるようになった。その結果、時間外
労働削減のために、どこから手を付けるべきか、優先順位付けができるようになり、ここから時間外労働の
削減の取組を進めることができた。
○工場長のトップダウンで業務改善の取組を推進
・当社では、「5S」の取組を進めている。「5S]とは、整理、整頓、清掃、清潔、しつけを意味しており、
作業場等の環境を改善し、業務を無理なく、無駄なく出来るようにしようという活動。
・「5S」を漠然と理解しているものの具体的に何をするかを把握している人は少ないため、
活動を推進する役割を担う、管理者への教育を実施して理解を深めてもらうなど、工場長の
トップダウンで「5S」を推進している。
・具体的には、職場においてある荷物、書類等を必要なものと不要なものに分別し、不要なものは破棄したり、
道具の置場を決めてそれを明示したり、通路部分や荷物を置く部分を白線を引いて明示して、
職場が散らかったりしないようにするなど、作業場等の改善を行っている。
・「5S」の活動の実効性を上げるため、「5S」を推進するプロジェクトチームのメンバーが、
1ケ月に1回、課、工程ごとの「5S」の実施状況をパトロールしている。パトロールでは、
全25項目、各項目4点満点の計100点で評価を行っている。
・パトロール中には次のような会話がよくある。「なぜここに○○があるのか」→「□□をやっているから」
→「なぜここで□□をやっているのか」→「昔からやっているから」という具合。昔から継続して
実施しているものは、その理由を考えずに実施しており、無駄なこと、非効率なことが少なくない。
「5S」の活動は、こういったものを整理し、効率化することに役立っている。

ケース4.食品製造業、従業員数90名
○残業の事前申請制度の導入と実施状況の管理
・従業員は、残業を行う場合、日々「自己申告表」により事前申請を行い、管理職に提出している。
残業を行った後は残業の実績を同表に記入しており、管理職が、従業員一人ひとりの時間外労働を
把握している。
・さらに管理職は、日々の生産計画とこの申告表に基づき、生産量、売上とコストの観点から、
時間外労働が適正かどうかを確認している。
従業員の労働時間の集計結果は、管理部門経由で、管理職が毎月社長に報告している。この報告を基に、
時間外労働が多い部門に対して、社長・管理部門から是正勧告を行い、対応策の報告を求めるなど、
トップダウンで時間外労働削減に取り組んでいる。
・さらに、従業員の時間外労働が付き80時間に達する場合には、管理職が会社に伺い書を提出する
必要がある。この伺い書が年3回以上提出された場合には、管理部門から管理職に対し、改善措置を
取るように指示が出る。そのため、管理職は部下の労働時間をしっかりと管理している。
○評価と報奨制度との連動
・管理職の人事考課の項目には、部下の時間外労働が組み入れられており、管理職の評価のみならず、
報奨(年2回の賞与と翌年度の給与)にも影響する仕組みとなっている。このため、管理職は、
従業員一人ひとりの時間外労働を把握するだけでなく、時間外労働の削減の取組を進めていく必要がある。

ケース5.宿泊業
○業務の平準化に向けた業務ローテーション
・当ホテルでは、特定の従業員に業務が集中することで長時間労働が発生しないようにするため、各従業員が
様々な業務に携われるよう、適宜担当業務をローテーションしている。
・業務ローテーションを行った結果、現状の自分の担当業務以外でも、経験したことのある業務であれば
他の業務のサポートができるようになり、結果的に業務量の平準化につながっている。
○残業の事前申請制度
・時間外労働の事前申請制度を設けている。決まった書式で提出するので、管理者が管理しやすく、
従業員側も、基本的には申請しなければ時間外労働はできないという意識が芽生えた。ホテルのフロントでは
お客様のチェックインが集中した時などに急な残業が発生しているため、現状では事務職員を中心に
時間管理意識の向上につながっている。


ケース6.飲食業、従業員数90名
○パート・アルバイトの能力を向上させる仕組み
・ファミリーレストランは労働集約型の業界であるため、時間外労働を削減するためには、マンパワーが
必要。正社員の人数が限られている中では、店長業務のように正社員しかできない業務を絞り込むこむと
ともに、パート・アルバイトの方に可能な限り広い業務を担っていただけるよう、
能力の向上に取り組むことが一人ひとりの業務を平準化し、時間外労働を削減する鍵となる。
・当店では、パート・アルバイトの方の能力向上意欲を高める仕組みを取り入れている。具体的には、
こうした方々に担っていただく作業をリストアップし、作業ごとの習熟度をチェックリストにして、
作業ができるようになれば、教育する立場の者がチェックすることにしている。
・さらに、このリストを皆が見える場所に提示することで、各自ができる作業、その習熟度がわかるようにしている。
・習熟度のチェックは1週間ごとに行い、各自の課題を確認して、次に習得すべきことを明確にすることで、
教える人も教わる人も仕事がしやすい環境を作り出している。また、習熟度は時給に直結する形と
なっていることも、能力向上意欲を高めている。
○パート・アルバイトからの業務改善の提案
・パート・アルバイトの方から、業務改善のための提案を受け付けている。正社員が呼びかけている
わけではなく、教育を通して従業員の意識が高まり、より効率的に、より負担を少なく作業する方法を
パート・アルバイト自らが考えて、提案してくれる場面がある。
・例えば、店舗の在庫管理においては、資材の置き方を工夫して、一目で在庫数がわかるようにしている。
資材の置き方などについては、会社としての基本的なルールはあるが、店舗固有の事情によって、
個別に対応すべき点があり、これについては店舗ごとに工夫して対応している。
・パート・アルバイトの方から改善提案を受けた場合には、提案のあった店舗で実践し、
有効であると確認できたら正社員が本部に報告する仕組みになっている。最終的に、会社全体で採用されて
業務マニュアルに組み入れらる場合もある。
・このような業務改善を行うことで、作業がスムーズに進められるようになったり、ミスを減らすことができ、
結果として探し物や片づけ、作業のやり直しなどの余計な手間を削減し、労働時間削減につながっている。


以上、時間外労働削減の好事例集(厚労省受託事業、中小企業における長時間労働見直し支援事業
検討委員会)より取組内容のみ転載しました。
なお、当パンフレットは、厚労省HPよりダウンロードできません。
お近くの労基署等で入手してください。







































































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