中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

政策目標と現実との乖離

2012年05月24日 | 情報
労働時間等の設定の改善に関する特別措置法に基づく指針である
「労働時間等設定改善指針(「労働時間等見直しガイドライン」(平成22年12月9日一部改正)の別表に
定められた「数値目標」が改訂されています。
その中で、「メンタルヘルスケアに関する措置を受けられる職場の割合」は、
2020年に100%(現状:直近の値 33.6%)を目指すとされました。

さらに、政府の第11次労働災害防止計画(平成20年度~24年度)には、重点対策として、
「メンタルヘルスについて、過重労働による健康障害防止対策を講じた上で、
労働者一人ひとりの気づきを促すための教育、研修等の実施、事業場内外の相談体制の整備、
職場復帰対策等を推進することにより、メンタルヘルスケアに取り組んでいる事業場の割合を
50%以上とすること。」と明記されています。

一方、(独)労働政策研究・研修機構が、「職場におけるメンタルヘルス対策に関する調査」
(平成24年3月30日)を発表しました。これによると、

まず、「メンタルヘルスで休職・退職した人がいたのに、
1/3の事業所が対策に取り組んでいない」という結果でした。
具体的には、過去1年間にメンタルヘルスで1カ月以上の休職または退職した労働者がいた事業所について、
メンタルヘルスの取り組み状況をみると、「取り組んでいる」事業所が6割強(64.0%)と
過半数を占める一方、休職・退職者がいるにもかかわらず「取り組んでいない」事業所が
1/3と少なくないのが目立ちます。

また、「約9割の事業所がメンタルヘルスと企業パフォーマンスの関係を認識」という結果でした。
具体的には、メンタルヘルスの問題と、生産性の低下や重大事故など、
企業のマイナスのパフォーマンスとの関係をどう考えるかについては、「関係がある」(42.1%)、
「密接に関係がある」(22.8%)、「どちらかと言えば関係がある」(21.3%)を合わせて、
約9割(86.2%)の事業所が、関係ありと認識しており、「どちらともいえない」は9.6%で、
無関係(「あまり関係がない」「まったく関係がない」「関係がない」の合計)だと考えているのは3.4%と少数でした。

この政策目標と現実との乖離に、行政の手腕が問われることになりますが、
企業、事業所において、人事労務、あるいは従業員の健康管理を担当するみなさんは、
行政の第一線である労基署の指導・勧告を待つまでもなく、対策を推進しなければなりません。

MH対策には、拙著『中小企業の「うつ病」対策』を参考にしてください。
中小企業向けの「うつ病」対策、AtoZを解説しています。



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